第二章 第三話 騒ぎの中心で何を知るか⑤
このちっぽけなそれでも広く皆が生きているこの大地の中にて活動をするものは当然ながら存在する。
というか生きているというならそこから活動をしていかなければいけないのではというのはそれこそ当然のことではあるだろう。
なんてことで頭を巡らせながらもこの大地へと飛来してきた巨大なロボットに対しての解析等を続けていたエンパイス。
彼はこの集落の中でも博識と鍛冶技術、機械工学といったものでこの地位を手に入れていた学者と呼んで構わないであろうものだった。
そんな彼と、彼と共に肩を並べて同じ戦場で戦っていけるようなもの達が集まってきてなおそれでもこの奇怪なロボットの全容どころか端っこ、表面すら読ませようとはしてくれない。まるでなにか言語が違うのではないかとも感じられる。そうであるとするならば何かのきっかけでトントンとこの仕事が進んでいくのではないかとも期待をしてしまうのは贅沢であろうか。
「にしてもどうしてこんな大きなものがこの集落に落ちてきたのか。こうまでしても分からないのは気持ち悪い」
「何かにつけて理由をつけたがる君の悪い癖が出てきたね。あのね、いつもいっているでしょう。こういうのはねただの偶然か運命かそれとも必然なのかというやつなのよ。悲しいけどねこれは考えるだけ時間が過ぎていくだけだから」
なんていう風に幼馴染に言われてしまえば仕方のないことだ。眺めてないで手を動かすことにしておこう。
「ただそれでも諦めたくはないものだ。自分はこうして足搔いていることにさえ理由が欲しくなる。それはニンゲンなんて呼べるか怪しいくらいの人種である我々の中でも異端なことではあるのだろう」
「それはそうよ。そうでなくては生き残るなんてのはできっこない。エンパイスも知っている事でしょう。種の存続というのは常に異端の存在がわらわら湧いてこそ不完全のモノでの完成と呼ぶことを」
「知ってるというかそれはアイリンの掲げている持論というかなんというかそういうものだろ。いくら自分もそれを支持してるからって何度も言われてしまえば嫌いになってしまうだろうて」
現在手元にある物では手が届きそうになさそうなので他の工具を取りにいくことにしていったのはアイリンと呼ばれた薄緑の肌をした少女だ。
この集落にはこの工房には他にも多くのとはいかないもののそれなりの数を揃えてきているのだ。何をだって、それはだねえ。
「ただの作業用のモノではあるため小さくはなってしまうがそれでもこうして並んでいれば壮観であるのは不思議ではあるのかな」
時々流れ着いてくるようなものがあるのは別に今回に限った話でもない。過去に何度かやってきておりその度に同様のことをしていたりする。どうせ衝突等ですぐには使えなくなっていることがほとんどである。そのために勝手にリバースエンジニアリングをして勝手に修復までやったところで文句を言われても理解と感謝を示してくれて脱兎の如く気づかぬ間に飛び立っていってしまうのがほとんどだ。
………………………………うそですごめんなさいこんなところにくるような人物だなんて数えるほどしかありませんでした。そしてそのたびにここの端が戦場になってしまっての繰り返しになりそうなもので。だから誰もが怯えている中でもこうして心許無い備えを持っている。
などということをやっていてもこの工房での学者の集まりでいえば年若い存在かもしれないエンパイスだ。とはいっても年なんてほんとに永く生きるようなものと比べてしまえば情けないことになるが。
エンパイスは工具箱を拾う動作をしたがその際にひびが入り一部が崩れ去ってしまった。バラバラとその場に散らばってしまいそれを周囲を見渡しながらも拾い集めていく。
そこで一本のナットを拾い上げる影があった。
「あぁ、まさかこんなものがまだついていたなんて。不思議ではあるけれど考えれば感慨深いものが浮かんできますね」
桃色の髪の少女が音もなく突如出現していた。いったいどこからともなく出てきたのか分からないのは気味が悪いというかなんというか。
いったいどうしてこの場所で出てきたのかなんてのは。
「もしかしてこの機体の持ち主ですか。ごめんなさいね、あなたが引きずり出された際には視線を向けていることはなかったりしていたからね」
「そうですか。それで
なんて言われてもどうしようもないくらいにはなっている。白と桃色の機体を落ちてきたと思えばこうして分解しようにも何故かそのほとんどが外れる事無くいたのだったが。
そうはいってもコックピットを開けれるくらいには技術を持ち合わせてはいた。だからこそこの女がここに立っているわけであって。
「というか、どうしてここまでやってきたのか。彼女が連れて行ったはずだったと聞いたのだが。こうして自分の機体を観にきたというなら安心してくれ。ちゃあぁんと装甲とかの修理はぼちぼちではあるが進んでやっていますから」
などといっても実際そこまで壊れていなかったりするのではとここにいる誰もが考えてしまっていたりした。この機体には破壊などは簡単にはいかないものと思えてならない。兵器と呼べるのかオカルト染みたどころかオカルト真っ盛りのといって差し支えないものと思える。
「わかった。そう、わかりました。それであればもう動かして構いませんよね。じゃあ早速ですが………………」
突如として天井がゆっくりと開いていくのが確認できていた。それに気づいた誰もが声を上げて騒ぎ立てていた。
「おい⁉どうしてこんな」
「誰が動かしたのだこれはしょっ引いて来い⁉」
「知るかそんなもん⁉迷惑どころじゃないぞいったい何が目的で」
天井が完全に開ききる前に彼らにとって未知ともいえる機体が動き出してきていたか。
ワイヤー伸ばしてきてすぐさま巻き取っていた。これで動くことができることが確認できた。
「さて、これで十二分にとはいかないがそれでも八分くらいではどうにかやれそうではあるか」
シグライのつぶやきが聞こえてきて訝しげに振り向いてきた。だがそこで放たれたワイヤーの先に輝きを見つけることが出来た。
「な、なんだこれは。どうしてとかどこからっ」
それからすぐさま光がこちらに落ちてきていた。それこそいったいどこからなんてのは考えても仕方のないことではあるかもしれない。
事実としてあるのはこの光がこちらに飛来しているという事実か。
小惑星の奥にて存在するこの工房は大きく深く掘られた場所にある。地下の秘密基地なんていうのはロマンになって面白く惹かれるものではあるがそれで実用性があるかといわれてしまえば難しいことではある。
んで白桃色のといってしまえばまた別の意味になってしまうのだろうか。そのロボットの頭上へと光の弾丸と呼べるものが衝突しようとしていた。
その衝突の直前にて鮮やかに躱して見せていた。ただクルリと回ってその場から離れたのみであるためにあまり見栄えのいいものかといわれてしまえば複雑ではあるのかも知れない。
砂ぼこりが起こってきたところから床が削れてしまってどころか穴が開いてしまったと考えられる。いったいどこからの飛来物かなんてのはわからないが勢いが凄まじいのはよくわかった。
風が巻き起こり砂ぼこりを天井の上へと飛ばしていった。一体どうしてこの⁉ッ。
「なぁ、面白そうなとこにたどり着いたもんだなあ。あぁじゃあ楽しませてくれよそうでなければ生きている理由も価値も意義もない。クタバレよ、そうでなくても生き残れるのであれば満足するもんだからな」
そこから現れてきたのは猛禽類とも呼んで差し支えないような翼と羽毛を纏った怪人であった。これはつまりどこから現れたかはともかくニンゲンと呼んでいいのではないのでは………………。とも考えても仕方のないことかもしれない。
羽毛で纏われた剣を振り回してきてくる。すると周囲に存在する人々を一方向に切断していった。その傷から羽毛に溶けていっていた。その事態に着いていけずに恐怖に震えていてブクブクと泡を吹くものもいた。
そしてその傷を負った者のほとんどは羽毛にと完全に消え去ってしまっていた。これに対して無傷で済んでいたもの、羽毛へと溶けることもなかったものそして途中で症状が治まったもの最後に気合によって押し沈めていって完全にキエテしまいようになっていたものから一目では無傷と呼んでしまうほどの見た目になっていたものがいた。
そして無傷で済んだ者の一人というのはシグライその人ではある。そして後はかなり悲惨なモノになっているのでこの光景を創り出した存在が立ち上がっている。
「弱いなあ。どうしてこうまで情けないのしか………………………………」
剣を後ろに放り投げてきて拳をシグライへと突き付けてこられた。
「こうでもしなと情けないことにはならないから」
こうはいったものの一気に後方へと飛ばされてしまった。固められた壁にぶつかりあってしまう。血反吐を吐いてそれでも武器を取り出してそれを支えに立ち上がろうとする。
「いきなりで悪いけれどこちらとすればこちらとすれば勝つのが大好きな人種ではあるからね。ただただ戦いたいだけの人生だったなんていって終わるのは自分の身では許せないものでしてね」
後ろを向いて剣を見つけてわざわざ歩いていって拾い上げることをした怪人。
「そうか、じゃあここでなくてもいいじゃないですか。どうしてここにやってくることに………………」
「そんなものはわかり切った話だろうて。そこに転がっているのが面白そうでそれで今なら簡単に倒せるのではないかというくらいに衰弱しているからというのが。まぁ弱っているのから破壊してまわるっていうのはどこの誰だってやるような常識であるのは確かだろう」
これまた随分と品のないことではあるな。気持ち悪いというかなんというか。
だけれども彼が何を求めているのかなんていうのを理解してそれに共感してできる限りのことをしていきたいなんて………………。それは冗談でもなくなにも理解をしていない者の言葉になりそうなのでやめておこうか。
「興味ないね。君がどこの誰であろうと
「どの口がいっているのか。そんなことができますというならここら一帯にいた者達を庇うくらいわけないものじゃなかったか。あぁもしかして他人の生死にはあまり関わらないようにしてます的な。それはそれはもうそれこそその言動こそが庇えぬモノになってしまうじゃないか」
この鳥野郎はとことんまでに他人をあざ笑うのをおこなうらしい。どうしてなんてのを聞いても仕方のないことかもしれない。
鳥野郎は剣を持って首を狙い定めて斬りかかる。シグライはそれを自前の武器によって防いでいた。
「どうして
「だからそこにあるへんてこな鉄の塊がッってどうせつまんない物だったか。別にいいが。欲しいのは勝利だけだ。闘って得られるものなどたかが知れている。勝利してことだろう。だからそこをどけよ」
一体何のことをいっているのかと思えばあぁ簡単なことか。すぐそばに
「なぁんだこんなものが欲しいならいくらでもくれてやるよ。ホラよっと」
軽く持ち上げてしまいこの白と桃色の巨大な人型の兵器を鳥野郎へと投げつけていった。
「………………こうじゃないんだけどなぁ‼」
剣を軽く一振り一閃を見せると美しくも汚れも見えているロボットが切り裂かれていき向こう側の景色が見えてきていた。
「へッ!こんなつまんない小細工を弄すような」
だがそれこそ未熟者の思い違いであったか。斬れたかに思えたその兵器であったがまさかその場所から突如として消え去ることになる。いったいどこに行ったのかと見渡してみるがいくらやっても見つかってくれなかった。
「ど、どこに行きやがった。まさかあんなでかいものが消え去るなんて悪い冗談でもなければ」
「戦闘中に相手から目を離すななんてのはよく言われることではあるけれどまさかそれを理解する立場になるなんてね。こうしてずっと見ていても気づかぬことになっていたかも知れないなんて考えるのが面白いんだけど」
ほんとこれがもし自分のやってしまったことであればなんて考えてしまえば笑えることなんて一切ない。
シグライの背に存在しているのは先ほどまでここにあったロボットと同じ色をした大砲であった。あれだけの大きさのものであるためにまさかこの背にあるもので全てだなんていうのは冗談にしか聞こえないかもしれない。
だからそうなるならば冗談以外の何物でもないことをここに留意されたし。
「雑魚ではあったがこうして行動を許さずに犠牲を出させたこともあり油断のできない存在であったのは確かだ。今度はまたとかいうのはいうつもりはない。灰すら残さずにキエロ」
二本の砲塔の先からエネルギーが膨らんでいっていた。鳥野郎の全身を泡のような結界へとこれは牢獄と呼んでも何も問題ないものであろうか包まれていくこれは浮かび上がり地に足がつかなくなっていた。
中から食い破られるかと必死に足搔いていたがいくらやってもびくともしない様子だった。
拳を突き上げて力強く握りしめる。結界内が一瞬にして熱で覆われていく。ここでもう完全に肉体などは残っていないだろうと予想される。
そして気だるげにその拳を開いていた。放り投げるかに結界がとかれていた。屍も残らぬために床へと転がっていくことすらなくその存在を知っていた者にしかこの光景なんていうのは理解して貰えないであろう。
その結果としてはつまり失ったものしかこの戦闘で得たものなど碌にない。使えるものなどどこにあるのやら。
開いた天井から落ちてくるのは先ほどの怪人が持っていた剣と背から生えてきていた翼であろうか。
それを見て思わず笑みが浮かんでしまった自分に対して自己嫌悪を隠せずにいる。
犠牲という意味であるのならばもうこの切り離された大地ですら安心できる楽園のディストピアなんていう冗談すらいえぬ世界に成り果ててしまったらしい。
そのことがこの鳥野郎の他にも多くにモノが襲い掛かってきているこの事実と共に理解してしまう。
エンパイスはこの大地からの脱出が必要と想定する。そのためにいくつも存在しているボートを起動していっていた。
すぐさまこの工房を出て外の光景を拝んでいくこととしたシグライ。それでできることならお節介になるかもだが手助けをと。
だが彼女がその眼に映したのはこの世の地獄か世紀末かそれとも戦国の世かという悲惨な光景であった。
このまともな人種であれば生きていくことすら出来ない過酷な大地に広がるこの様相にはもう言葉も出てこない。
家屋が焼け、なけなしの井戸や池も涸れ果ててしまい人肉すらひしゃげるか焦げて動けずにいるかのどれかという状態だ。
こんなものはまともじゃあない。クソッタレな現実に引き起こした相手の姿が見えない。君が悪いまたこんな………………………………。今なんて言ったかおい。
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
彼女は狂ったように笑い続けることしかなかった。一通りそれが済んだところでその場に倒れこんでしまうこととなる。
小惑星の破片であった場所なのに今の今までにそんな気配も見せていなかったというのに大粒の雪が降ってきていた。この何もないはずの壊されていくだけの景色に白銀のモノが彩られていく。
非常に残念であろう。こんな大雪など何の慰めにもならず地獄の要素を増やしただけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます