並ぶ角には福来たる
雨上がりの空
第1話 出会い
出会いは『最低』だった。
向こうもきっとそう思ったに違いない。
ちょうど一週間前のことだ。
二駅先で京都物産展をやってる事を知り、土曜日の8時頃家を出た。
朝早いのに電車内がいつもより混んでいた。
多分みんな物産展に行くんだろう。主婦層が多かった。
9時半頃にデパートに着いた。今日は9時からオープンしており、外も中も人で溢れていた。
人混みをかき分け、目当ての店に行く。
すでに行列が出来ていて、取りあえず最後尾に並んだがかなり時間がかかりそう。
「良かったらどうぞ!」
「ありがとうございます。」
試食をもらい、パクっと食べる。
(おいしー。これは絶対買いたい。)
少しずつ前に進んでいく。自分の前には10人くらい並んでる。近付いてくるたびに胸が高鳴ってくる。
「これ3個ください。」
「ありがとうございます!」
「お客様、大変申し訳ございません。商品が全て売り切れてしまいました。」
「え?」
よくドラマで見る、自分の前で商品売り切れになるやつ?!それを体験しちゃってる?!
「1つも残ってないんですか?」
「はい。申し訳ございません。」
前の人が商品を受け取ってるのをよく見ると、千枚漬けを3個も買っている。
思わず口に出してしまった。
「すみません。それ、1つ譲って頂けますか?」
「え?いや、それは出来ません。」
「1つだけでいいんです。」
「だから出来ないって言ってますよね?」
「3個も買いすぎじゃないですか?」
「何でそんな事言われないといけないんですか?ちゃんと並んで買ったんですよ。」
そう言って、男性は人混みをかき分けどこかへ消えてしまった。
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