エピローグ
病院から出た私達は、棲み家へ向かい飛んで居た。
ミハイルは唾を飛ばしながら、私を責めている。
「しっかし、お前のお陰で偉い目に合ったぞ」
どうやら、あの若い研修医に散々な目に合ったらしい。
「今から、重度熱傷の緊急オペを始める……」
若き研修医―赤月慶吾が重々しく、言った。
『オペだとぉ~一体何をするつもりだ? 』
ミハイルはドキドキ(心臓動いて無いが)したが、既に手の尽し様が無いのは火を見るより明らか。
若き研修医―赤月慶吾はせめて、格好だけでも付けようと、てきと―にいぢくり回した。
(もう、我慢出来ん! この若僧に天誅を下すっ!)
「まあ、そう云う訳だ……」
何が、まあ、そういう訳なんだか分からないが、取り合えず若き研修医に復讐は果たしたらしい。
あっと云う間に棲み家に着き、キッチンで血液をワイングラスに満たし、味わって居ると雪彦が見て嫌~な顔をして言う。
「レッド、血液をワイングラスで飲むのは、止めて下さいって、何時も云ってるじゃ無いですか!」
本当にもう!とブツブツ言いながら夜食の支度を始めた。
「う~ん美味い!生き血には劣るが、此も結構イケるじゃ無いか!」
血液バッグ三袋を飲むと、ミハイルは私の良く知ってる、風貌に戻った。
金髪碧眼の四十代の男、髪は肩までの、直毛で鼻筋が通った、中々の色男に。
さっきの復讐で溜飲を下げた私は、素直に「おめでとう」と祝福し、サッサと帰れと言った。
が!あろう事か、私達の棲み家に住まわせろと言って来たでは無いか――!
「駄目だ! お前は今までの棲み家に帰るんだ! 」
「そう言わずに、俺様一人位、こんな広い家なんだから、構わないだろう?」
皆に同意を求めるが、誰も反対すらしないし、かんなに至っては「良いじゃない。それに、結構あたしの好みなのよね〜」
などと、云うからミハイルは喜び。
「俺様の部屋は?――」と、すっかり住む気だ。
私の云う事など、誰も聞いて無い状態に……なった。
「分かった……ここに、居ても良い」
結局、このドタバタ劇で被害を受けたのは私だけだった。
美咲様には暗示を与え、心の中で侘びながら帰って貰った。
私の悩みは尽きない――コイツらと居る限り。
2006.4.4
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