第23話 近場の森へ行こう
翌日の朝、朝食後の一服を家の外で嗜んでいたら、ギダユウさんがやって来た。
「おはよう、ヨシダさん、今ちょっといいかな? 」
「おはようございます、今日はこれから村の見回りですけど、どうしましたか? 」
ギダユウさんは肩に斧を担いでいる、木こりスタイルだ。ギダユウさんも俺が煙草を吸っているのを見て、自分も吸いたくなったのか、ポケットから煙草のケースを取り出し、煙草を一本口に咥えて火を付けながら話掛けて来た。
「この前、ビックボアが村に入って来て暴れた事があったよね」
「ビックボアというと、あの大猪ですか、あの時は大変でしたよ」
思い出すだけでも怖かった、もうあんな思いをするのは御免だ。
ギダユウさんも俺も煙草を吹かしながら話しを続ける。
「あの時はホント、ヨシダさんのお陰だったよ、それでね、村の周りの柵をぐるりと見回ったんだけど、やっぱり柵の一部が壊れていてね、直さな直さなと思っていたんだが、皆、畑に忙しくてね、ようやく俺とラッシャーの手が空いたんで柵を修繕しようと思ったのさ、あともう一人必要なんだよ、ヨシダさん、どうかな? 」
柵の修繕か、それくらいなら手伝えるな。
「ええ、いいですよ、お手伝い致します」
「ホンとかい、いやー助かるよ、材木を確保するのに村の近くの森まで行こうと思うんだけど、あそこはモンスターが時々這い出てくるから、見張りの為に3人は欲しくてね、ラッシャーはもう村の出入り口に居る筈だから、ヨシダさんも装備を整えて早速来て欲しいんだ」
なるほど、モンスターが出る森に赴く訳か。そりゃあ人数を多くした方がいいよな、一人じゃ危険だろうし、モンスターと戦うのは苦手なんだが、見張り程度なら俺でも出来ると思う。
「わかりました、装備を整えてきます」
俺はミランダさん家の中に入り、俺が使わせて貰っている部屋に行き、革の胸当てとベルト、ハンマーを装備し、部屋を出る。
ミランダさんに出掛ける事を伝えて、表へ出る。
「準備できました」
「それじゃあ早速行こうか」
村の中を歩いて、ラッシャーさんがいる村の入り口まで行き、ラッシャーさんと合流する。
「おはようございやす、お二人共」
「おう、おはよう」
「おはようございます、」
ギダユウさんもラッシャーさんも装備を身に着けている、これから向かう森はモンスターが出るかもしれない所なんだよな、ちょっと怖いが二人共強そうだ。こういうのには慣れている感じだな。
「それじゃあ早速出発しようか、場所は近くの森だ、気を引き締めて行こう」
「はい」
「へい」
俺達は森がある方へ向けて歩き出す、目的地に着くまで大体2,30分ぐらいらしい。
森に着く間、気になる事があるので、二人に聞いてみた。
「そう言えば、村長さんとこのパールさんの事なんですけど、」
「パールさんがどうかしやしたか? 」
「パールさんは魔法使いで、クラスはメイジと仰っていたのですが、
俺の問いにギダユウさんが答える。
「ああ、職業とクラスの違いね、それはね、ヨシダさん、まず職業ってのは・・・・・・」
話を聞いて掻い摘んで説明すると、この世界の住人はみな、15歳の成人になると女神教会で成人の儀をして貰うんだそうだ、そこで女神教のシスターから色んな職業の素質があると告げられるそうな。
例えば、戦士の素質がある、と告げられれば、その後、今度は転職の儀というのをやってもらって、そこで正式に戦士を名乗れるそうだ。だけど、戦士の素質があると告げられて、実際に戦士に転職するかどうかは本人の意思に委ねられているそうだ。
しかし、女神教のシスターさんからその素質があると告げられるという事は、ひいては女神様から認められた事という事で、多くの人はその告げられた素質の通りに転職する事が多いらしい。
「俺も成人の儀の時、剣を振っていたから、てっきり戦士か何かになるものとばかり思っていたんだがな、結果は平民だったよ、けど、平民だからって剣を握れない訳じゃない、戦士じゃなくても戦えるものさ」
「なるほど、成人の儀に転職の儀、ですか」
これは俺のゲーマーとしての勘だが、ジョブは戦いになる時にある程度有効に作用すると思われる、やはり戦士や武道家、騎士といった前衛職が戦闘において強い存在になる、と思うのだが。例えば女神様からの加護がある、とか。
「あとは、職業によってスキルなんかも習得できると思うんだが、これは俺にもわからないな、スキルなんて発現したためしも無いし」
「・・・そうですか」
「後はクラスだな、クラスってのは・・・・・・」
これも話を聞いて簡単に説明すると、クラスとは、その職業の階級、言ってみれば格みたいなものらしい。例えば職業が戦士なら、クラスはファイターになるらしい、ファイターは初級クラスで、順番にウォーリアーという中級クラス、バトルマスターという上級クラス、というような感じで格が上がるらしい。
「俺は平民だけど、クラスはファイターでね、クラスを与えられる事だけは転職の儀でやってもらえるのさ、だけど、中級クラスとかになる事をクラスアップって言うんだが、これは一生に一度あるかないかなんだよ、物凄く研鑽(けんさん)を積んで、女神様に認められて、初めてクラスアップできると言われているのさ」
「なるほど」
ふーむ、クラスにクラスアップか、パールさんは中級クラスのメイジと言っていたから、多分物凄く鍛錬をして、研鑽を積んだんだろうな。
俺にも女神教会に行って転職の儀をやってもらえたら、クラスチェンジできるのだろうか。
しばらく歩いていたら、いつの間にか森の入り口に到着していた。
「さあ、森に着いたぞ、早速手頃な木を探そう、・・・お、これなんかいいな、よし、この木を伐採しよう、」
ギダユウさんは一本の木に手を触れて、色々確かめてから斧を握りこんだ。
「ラッシャーとヨシダさんは辺りの警戒を頼む、俺はこの木を切り倒すから」
「へい、」
「わかりました」
ラッシャーさんが前方を見張り、俺はその後方を見張る、こうしていると木の物陰から突然モンスターが出てきそうでビクビクしてしまうが、静かな森なので物音一つを聞き分けられる感じだ。
コーン、コーン、とギダユウさんが木を斧で切り出した。材木は幾つぐらい必要になるのだろうか。
しばらく見張りをしていて、ギダユウさんが声を掛ける。
「木が倒れるぞー」
メキメキ、バキバキ、と木が折れる音がしだして、一本の木が倒れる。
ドシーンッ、と木が倒れて材木を一本確保する、枝を切り落とし、手際よく作業していく。
その間も見張りを続ける、いつモンスターが出てくるかわからないからな。緊張する。
木が沢山立っているので、視界はあまりいいとは言えないが、よく目を凝らして辺りを見張る、しばらくしてまたコーン、コーン、とギダユウさんが木を切り出した。
しばらくして、材木をいくつか確保している時だった、ラッシャーさんが鼻をスンスンと嗅ぎだした。
「・・・なんか、臭いやすねえ、ギダユウの兄貴、何か近づいて来やす、」
「なに、よし、ここまでにしとくか、二人共、辺りの警戒を」
なんだろうか、ラッシャーさんが何か、気付いたみたいだ。
辺りを警戒する、・・・特に変わった様子も無い。音も静かだ。
そう思った時だった、ガサッガサッ、と何やら物音がしてきた、足音みたいな感じだ。俺は音のした方へ目を向ける、そこには。
「ギダユウさん、ラッシャーさん、こっちから何か熊みたいな動物が近づいて来ます」
俺は声を潜め、二人の方を向いて声を掛ける、俺の小声に二人はこちらを向く。
「あ、あれは! 」
「モンスターじゃありやせんが、厄介なものが出てきやしたねえ」
そこには、頭が
「ありゃあ、オウルベアーだ、おかしいな、普段はもっと森の奥にいる筈なんだが、なんだってこんな人里に近い森に出てくるんだ? 」
そこで、ラッシャーさんが更に何か気付いた様子で俺達に伝える。
「血の臭いがしやす、恐らく手負いのオウルベアーですかねえ」
手負い? という事は、気が立っているかもしれないって訳か。危ない感じだな。
オウルベアーは鼻息荒く、フーフーと呼吸し、歩き方も足を吊っている感じの歩き方をしていた。目が血走っているし、危険な感じがする。どうする?
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