八時

「大丈夫かしら?」

「スーツの女…これどうすればいいんだ!」

「やだ…血が出てる…」

「おいおっさん、一回整理するぞ」

「あ、ああ、小僧」

「私は手当を!」

「いえ、もう手遅れみたいよ」

「そんな…人が本当に…」

「ここはそういう場所なの、説明に書いてあった通り、人が死ぬ」

「おっさん聞け、こいつは時計から鳩が出た後に少しして死んだ、これには何か理由がある」

「理由?どんなのか教えてもらいたいわ」

「お前らに教えたくねえな、そっちは自分たちで考えな」

「もう!なんかやな感じ!」

「仕方ないわね、全員敵だもの」

「じゃあ…え…どうしよう」

「死体は調べてていい、俺たちは別の部屋に行く」

「そう、分かったわ」




「なあ小僧、理由ってのはなんだぁ」

「おっさんはあの部屋で鳩が鳴いた後、誰が一番最初に喋ったか分かるか?」

「いや、覚えてねぇ」

「なんで覚えてないんだ、あのニット帽だろ」

「あぁ、そうだったなぁ」

「少し間が空いたのも何か不自然だ、だから俺は考えた、最初に喋ったやつが撃たれるんじゃないか?」

「ほほぅ」

「あと、これは優しさで教えてるんじゃない、おっさんも同じ部屋にいたから情報を聞きたいだけだ、おっさんは何か覚えてないのか」

「俺はあんまり、ちゃんとは覚えてない」

「チッ、使えないな」

「なんだとぉ!?あんまり人をなめんなよぉ?」

「怒るなおっさん、なんか思い出したら言ってくれ」

「おお、分かったよぉ」


「さっきあの男の人が鳩が鳴いた後って言ってたよね!」

「それがどうしたの」

「私たちの居た部屋、鳩は鳴らなかったの!」

「たしかに…聞こえなかったかも…」

「なら、鳩が鳴いた部屋で誰か一人死ぬのかもしれないわね」

「でも…それは違う…かも…」

「どうして?」

「生きるためのルールのはずなのに…ランダムだったらおかしい…」

「それもそうね、だとしたら他にも何かあるのかしら」

「さっきの男の人達と話してみたら何か分かるかも!」

「でも、みんな分かってると思うけど、敵なの、そう簡単に情報は教えてくれないのはさっきので分かったはずよ」

「じゃあ…私たちの情報と交換して貰えば…」

「その考えは頭良いわね、それでいきましょう」

「はい!」


「おっさん、なんか思い出したか」

「うーん、鳩が撃ったあとに口から煙が出てたぐらいだなぁ」

「それは俺も見た、他には」

「あんまりせかないでくれぇ、まだ心が落ち着いてないんだぁ」

「たかが一時間しか会ったことないやつが死んでそんなに冷静じゃなくなるのか」

「小僧は人が死んでも慌てないのか」

「ああ、別にそれを知った上で参加したからな」

「俺もそいつは分かってるんだぁ、でもいざ死ぬとなると焦っちまう」

「向いてないな」

「ふっ、ん?ドアが開いたぞぉ」




「ねえ、あなたたち、情報を交換しない?」

「スーツの人、それは嘘じゃないだろうな」

「ええ、本当よ」

「自信たっぷりだな、だがこっちからも条件を言う、そっちが先に言え、そしたら言おう」

「本当ね?」

「ああ」

「なんか…ピリピリしてる…」

「しょうがないよ!敵同士なんだから!」

「じゃあ、言うわね、さっきあなたは鳩が鳴いた後に撃たれたって言ってたわよね、でも私たちの部屋では鳩は鳴らなかったの」

「なるほどな、それで?」

「え、そ、それで?これで終わりよ」

「なんだそれだけか、そんなの俺の持ってる情報より弱すぎる」

「なんですって?」

「俺の持ってる情報は最後まで生きることに繋がりそうなんだ、でもその情報は知ったところで何かそれで有利になることはほぼ無い」

「そんなの分からないじゃない」

「他の部屋がその時どうなってたか知らないから意味が無いんだ、もしさっきあんたらが居た部屋だけ鳴らなかったとしたらどうする、その部屋だけセーフだったのか?逆に俺がいた部屋だけ鳴っていたらどうなんだ、その部屋を引かないようにする法則もセットで教えてくれるなら俺の情報もあげよう」

「なんなのよ、早く教えなさいよ」

「情報が弱かった、だから教えない」

「このぉ!」

「落ち着いて!もうこれは仕方ないことです!」

「騙された…でもしょうがない…」

「もう、さっきの部屋に戻りましょう、どうにかしてルールを突き止めるのよ」

「はい!」




「俺は何も言えなかったが、すげぇな小僧」

「騙される方が悪い」

「ありゃ相当怒ってたなぁ、俺は見てるだけで怖くて仕方なかったぞ」

「まあ、こんなの慣れたもん勝ちだ」

「それでよぉ、あっちの部屋は鳴らなかったらしいなぁ」

「多分だが、俺たちのいた部屋だけ鳴ったんだろう、何かの法則で」

「それはなんでだぁ?」

「一つの部屋だけ鳴らないってのは…いや待てよ」

「おぉ?」

「説明には一つの生のルールと言っていた、だから一つの部屋だけ鳴らないのはおかしくない、むしろ正しい」

「その部屋にいることが生のルールっていうことだなぁ?」

「そうだと思う、だがあの撃つまでの間はなんだったんだ」

「偶然だったんじゃねぇかぁ?」

「偶然だったならいいが、そんなあやふやなことあるか?」

「きっとこれを主催したやつも人間だからミスっちまったんだろうよぉ」

「一つの部屋が鳴らないパターンと、最初に喋ったやつが撃たれる、これを合わせると、一つの撃たれない部屋に居ることが生のルールで、他の部屋に入ってしまっていたらその中で一番最初に喋ったやつが死ぬ、って事になるな」

「もうそこまで分かるなんて頭良いんだなぁ」

「普通に考えてるだけだ」

「なんだ普通って、まあ色々教えてくれたのはこっちの情報のためなんだろぉ?俺も頑張るぜぇ」

「頑張れよおっさん」




「なんなのよあいつ」

「まあまあ…落ち着いて…」

「結局私たちは新しい情報を掴めずか…」

「三つパターンありますねこれ!」

「この部屋だけ鳴らないパターンと、ここと他のもう一部屋も含めた二つの部屋が鳴らないパターンと、一つの部屋だけ鳴るパターンね、だとしてもなのよ」

「もう分かってたんですね!」

「今時間はいくつ?」

「あと三十分で九時です!」

「分かったわ、あと半分ね、何か法則を確かめるために九時になる時に試して貰いたいことがあるの」

「な…なんですか…?」

「九時になる時、あの男たちとは別の部屋に三人で分かれて部屋に居ましょう」

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