ある男のお仕事

暗黒騎士ハイダークネス

第1話



振り上げて、振り落とす




振り上げて、振り落とす





振り上げて、振り落とす







振り上げて、振り落とす






















 何度も、何度も、何度も、この作業は続けられた。


 また今日も処刑台に罪人はやってくる。

 

 ある人は盗みをした。


 ある人は詐欺をした。


 ある人は殺人をした。


 処刑人はただ無機質に。


 淡々と作業をする。


 モノに何も思わないように。


『助けてくれ!俺はやってない!!』

『うぅぅ、かあちゃん』

『◇◇、〇〇・・・ごめん』


 何かを口にしていたモノたちは処刑台に運ばれ、固定される。


 懺悔の言葉も、後悔の念も、処刑人には届きはしない。


 何もわからない・・・何も聞こえない。


 同情してしまったら


 かわいそうだと思ってしまったら


 疑ってしまったら・・・


 だから、ただ処刑人はこう思う。


『たったひと振りで綺麗に落とせますように』


 


 


振り上げて、振り落とす




















 ある時、こんな仕事をしている処刑人にも妻ができた。


 処刑人の血筋を残すためだけに上から宛がわれた妻。


 当然のように彼の妻は処刑人のことを嫌い、子を作ること以外には彼に関わってこなかった。


 妻は関わってほしくないと、口にはしてはいないが、行動の端々から伝わってくる。


 翌年に、また新しい家族ができた。


 小さな手で処刑人の手を懸命につかんで、にっこりと笑いかけてくれる。


 小さくて、脆くて、弱い。


 穢れなんて知らない無垢な瞳が彼を見る。


「・・・△△」


 優しい声音で名前を呼んで、赤ん坊を寝かしつける。




 この日から、処刑人は作業のようにやっていた仕事に、少しだけ家族のためという気持ちが入った。


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