四季のメモリー

天海創達

第1説 春

雨の声、瞳の声、雨の匂い、涙の匂い。

濡れるのは頬だけ、君はもうドアの外だ。

いつも強がってばっかり、

ドアから嗚咽が聞こえている。

でも自分も足から崩れて動けない。

これだから自分はと言わんばかりの後悔と

自分への苛立ちが嗚咽となって込み上げる。

もう誰も失いたくないとあれほど願ったじゃないかと、誰かから言われた気がした。

そうだ。もう誰も失いたくないんだ。

後悔はしたくない。という気持ちを杖に足を踏み出す。ドアを開ける。でもそこには君はいない、嗚咽が聞こえていたはずなのに。

目の前には雨に濡れた桜の花弁がある。

慌てて周りを見渡した。

だがそこには誰もいなかった。

もう少しで春の嵐が来るらしい。

だが

  僕の春は

   もうとっくに永遠の雪が降っている。

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