四季のメモリー
天海創達
第1説 春
雨の声、瞳の声、雨の匂い、涙の匂い。
濡れるのは頬だけ、君はもうドアの外だ。
いつも強がってばっかり、
ドアから嗚咽が聞こえている。
でも自分も足から崩れて動けない。
これだから自分はと言わんばかりの後悔と
自分への苛立ちが嗚咽となって込み上げる。
もう誰も失いたくないとあれほど願ったじゃないかと、誰かから言われた気がした。
そうだ。もう誰も失いたくないんだ。
後悔はしたくない。という気持ちを杖に足を踏み出す。ドアを開ける。でもそこには君はいない、嗚咽が聞こえていたはずなのに。
目の前には雨に濡れた桜の花弁がある。
慌てて周りを見渡した。
だがそこには誰もいなかった。
もう少しで春の嵐が来るらしい。
だが
僕の春は
もうとっくに永遠の雪が降っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます