第6話 別れ6p

 早く何か言えよ、と思う俺。

 俺の念が通じたのか占い師が口を開く。

「今後、何かショックな出来事がある、との暗示が出ています。何かが壊れてしまう様な、そんな暗示があります」

「え」

 え、と言って開いた口を閉じる事も忘れ、俺は占い師の顔を見返した。

「恐れる事はありません。何かが壊れた後に、また再生の時が始まりますから」

「はぁ……」

 うーん、恋の予感も発展の時も、ぴんと来ない。

 しかし、ショックな事なら俺の日常生活に溢れている。

 家を出れば財布を忘れるし、寝坊して単位ぎりぎりの大学の講義が受けられなかったり。

 これ以上何があるというのか……。

 気が付けば季夜が心配そうに俺の顔を見ている。

 まぁ、そんなに気にする事も無いか、と俺は自分に言い聞かせ、季夜に向かって、にかっと笑った。

 季夜の心配そうな顔が笑顔に変わる。

 俺は占い師の方に顔を戻した。

「分かりました。ありがとうございます」

「後は何かありますか?」

「……いや、特には……」

 俺は首を横に振る。

 逆に、他にまだ何かあるのか、と聞きたい。

 占い師が頷く。

「では、次の方……えーっと、多田野季夜さん」

「はい」

 季夜は占い師に軽くお辞儀をする。

 さて、季夜の番だ。

 占い師は手に季夜のプロフィール用紙を持ち眺めた。

 その時、占い師の目が微かに曇るのを俺は見逃がさなかった。

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