第37話 ねえキミ、ボクと契約して◌●に成らないかい ?

【ウッシーside】


 もう、あれから何年経ったのかしら ?

 にゃん太郎親分もオコゲも虹の橋を渡ってしまった。

 賑やかだったガンモとコロッケも家から出てこれないくらいに歳を取ってしまったわ。

 そして息子のコバンに先に虹の橋に置いていかれてからは、すっかり私も元気が失くなり部屋に籠るようになり……


「コバンでも にゃん太郎親分でも良いから、そろそろ迎えに来てくれないかしら ? 」


 そんな愚痴が独りでに出たところで、見かけ無い黒猫が網戸から覗いていることに気がついた。


「 黒猫 ? まさか、オコゲ……では無いようだけど、誰なの ? 」


 そう、私が問いかけると、


「ヤッホー はじめまして、ウッシー 。

 ボクは隣町の本屋の看板猫のサファイアだよ、よろしくね !」


 ボクと言っているけど、女の子よね。

 それよりも、


「隣町のサファイアが私に何の用なのかしら ?」


 そう私が切り出すと、


「 ねえキミ、ボクと契約して猫又ねこまたに成らないかい ?

 猫又に成ると凄く長生き出来るだけでなく、不思議な力も使えるように成るから、絶対にお得だよ ! 」


「嫌よ、お断り、絶対No !

 インキ◌ベーターの罠に引っ掛かる程、小娘じゃ無いのよ、私は ! 」


 そう言って断ると、


「酷いなぁ~、ボクをあんな詐欺師と一緒にして欲しく無いんだけどなぁ~ 」


 いかにも心外だと抗議してくるサファイアには、テレビで見たインキュベー●ー程に邪悪には見えないわね。


「まあ、無理は言わないんだけどね。

 中には自力で猫又に成る娘も居るから誘って見ただけだから気にしないでね。

 それならだと、お猫様に伝えておくからね。

 にゃん太郎親分とオコゲと云う子も転生希望だったから、いつか逢えるかも知れないね、キミ達なら 」


「ねえ、お猫様って何 ?

 転生って、また皆に逢えるの ?

 いったい貴女は何者なの ? 」


 既に好奇心なんて忘れていたのに、気がついたら沢山の質問をしていたわ。


「お猫様と云うのは、月読さまの御使いで猫の神様みたいな存在だよ。

 転生も約束は出来ないけど、キミ達は『縁』の繋がりが強いから、きっとまた逢えると思うよ。

 ボクは、猫又の上位種の猫魈ねこしょうだよ。

 この辺りのまとめ役だと思ってくれて良いよ 」


 あら、急に眠く成ってき……た…わ


「どうやら、虹の橋から迎えが来たようだね、ウッシー。

 



 もー!もー!もー! 迎えに来るのが遅いわよ、にゃん太郎親分 ! オコゲ !


 二匹は笑っているわ。

 また、皆でバカをやりながら過ごせるのね。














 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔


 ミャァ ミャァ ミャァ


 あら、私は虹の橋を渡って皆に逢ったハズ……

 遅刻してきた、コロッケとガンモに文句を言ったいたことまでは覚えているんだけど……


「おじさん、おじさん、ウッシーの曾孫ひまごが生まれたんだけど、あの娘にそっくりなウシ柄なのよ。

 良かったら名付け親に成ってくれますか ?

 あの娘もと云うステキな名前を気にいってみたいだから、お願いします 」


 お姉ちゃんの声だわ。

 すると、サファイアの言う通りに転生したのかしら、わたし。


「任されました。

 う~ん、そうだなぁ~ 」


 こっ この声は、オッチャン !

 まっ まさか、またなの !


「よし、ウッシーの曾孫だから なんて、どうかな ? 」


 ぎゃぁー ! 絶対に拒否してよ、お姉ちゃん !


「プッ、クッ クッ クッ、ウッシーもこの娘も きっと喜ぶわ。

 ありがとう、おじさん 」


 ガ~~~ン !


ミャァミャァミャァミャァミャァもー!もー!もー!転生してからもオッチャンに変な名前をつけられるなんて最悪だわ




 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔



 桜🌸が咲く公園で花見をしていたオッチャンと常連客に交じり私達猫達も御相伴に預かりながら、をにゃん太郎親分やオコゲ達に話していたわ。


 笑い話のハズなのに、何故か皆は笑わないで真剣に聞いてくれていた。

 お調子者のコロッケやガンモでさえも……


 にゃん太郎親分が話ずらそうに、


「実はな、俺やオコゲも似たようなを見たんだよ。

 あれは本当に夢だったのだろうか ? 」


 皆で考えていると、


 チリ~ン ♪


 ベルの音がした方を見ると、オコゲとは違う赤い首輪をした黒猫が私達を観察しているようだった。


 私達が見ていること気が付くと、ゆっくりと公園とは別の方に歩いて行ってしまった。

 2を揺らしながら、



 ── また、逢えるのを楽しみにしているよ、皆 ──

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