　まるで漫画のような、家が隣同士の男女の幼馴染…兼許嫁。

　真面目な彼女が進路希望調査票の件で教師に呼び出された。俺のお嫁さんと書いたらしい。耳を真っ赤にした彼女は、自分が稼ぐからその身一つで婿に来いと言い出した。

　なので、俺は進路希望を会社員から公務員に変更した。

　ヤダ俺が稼いで娶る。

＊＊＊

　俺と彼女の関係は、幼馴染兼許嫁。

　俺たちだけではなく、祖父たちも幼馴染。父たちも幼馴染。兄たちも幼馴染。そして、家は隣同士。

　三世代に渡っている幼馴染の連鎖の中で、初めて生まれた男女の幼馴染が俺たち。母親同士がノリで許嫁にしよう！と言ったその日から、俺たちは将来を誓った許嫁。

　まるで漫画のような関係である。

　それから幾数年。

　幼い頃は、大きくなったら結婚する！好き！と大声で言えたけれど、中学生になった現在は、思春期の気恥ずかしさもあってかちょっとぎこちない。

　彼女を名前で呼ぶのが照れ臭い。同級生たちに茶化されるのが嫌で一緒に登下校しなくなった。

　そもそも、許嫁であって付き合っている恋人同士ではない。

　昔からの関係で当たり前で、今更交際しよう！恋人になろう！と、言えず仕舞いで現在に至る。

　こういうの、甲斐性なしというのだろうか。

「呼び出されたって聞いたけど」

「うん、呼び出されたよ」

　真面目な彼女が担任教師に呼び出された。一体どうしたのかと、心配になって声をかければ先日提出した希望進路調査票のことだったらしい。

「希望進路調査票に、「貴方のお嫁さん」って書いたの」

「はぁ？！」

「許嫁の話、割りと本気だから。だからね。私……将来のために稼げる職に就くから、その身一つで婿に来て」

　彼女は耳を真っ赤にしてそう言った。

　なので、俺は担任教師から希望進路調査票を返却してもらって、将来就きたい職業を「会社員」から「公務員」に書き直した。安定した収入を得られる職を、彼女の親族に結婚を賛成してもらえるしっかりとした進路を……杞憂か？

　母親たちなら快く認めてくれると思うけど、念には念を入れる。

「婿に行くのはヤダ」

「え？！」

「俺が稼いでお前を娶る」

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