1章 昨日の出来事

第1話 新しい扉を開いた幼馴染のイケメン

話は昨日に遡る。


「行ってきま~す。」私は学校に行くため、今日も普通に家を出た。


しばらく歩いていると、「お~い!侑名~。」


私を呼ぶ声がする。拓真だ。

正直、登校途中で声を掛けないで欲しい。だって拓真と歩いているだけで学校中の大半の女子から敵意の目を向けられるのだ。


お金持ち&イケメンの幼馴染というポジションを所持している私はかなりの女性から嫌われているのだ。

毎日、この女は嫌い!っていう敵意が体に刺さるのだ。

しかも、拓真は私の事も好きだから、口説いてくる。毎日、陰湿ないじめを受けるし、拓真には関わりたくなかった。


しかし、今日は少し違っていた。

「なあ、侑名。」


「ごめん、話し掛けないで欲しい。」


「そんなこと言わないでくれよ。」


「拓真と歩いているだけで私はひどい目に遭うの!」


「相談があるんだよ~。お前、相性占い得意だろう。」


「だ・か・ら!話し掛けないで!」

わたしは拓真から逃げるように走り去った。そうすれば、いつもなら他の女子を口説くはずだから……。


教室に入ると、

「ほんと、災難だね、あんた。」親友の恵麻が話し掛けてきた。


「恵麻。心配してくれていつもありがとう。」


「一見、恋愛の最高のポジションに見える侑名だけど、妬みの対象でいじめられてるんだよね。」


「侑名はいいやつなのに……。」


北山 恵麻(きたやま えま)は私の親友で数少ない理解者。いじめられる私の事をいつも助けてくれる正義感が強くて美人でカッコいい親友。

多くの女子から慕われている。

少し困った事は恵麻の好意のベクトルは私に向いている事だ。

彼女はそういうタイプの人間なのだ。


「侑名……。今日も可愛い。」私をいやらしい目で見てくるのだ。

それでも、いつもいじめられる私にとってはなくてはならない親友なのだ。


「侑名…好き。」耳元で囁いてくる。


「うん。」私はいつも返答に困っている。


しかし、今日は朝からいつもと違った。


「侑名!」拓真が今日はやけにしつこい。


「拓真さ~。」恵麻が間に入ってくる。


「あんた!いっつも侑名が迷惑しているの分かってんの!」


いつもなら……。敵意を向けている恵麻にも口説くはずだ。

「すまない。北山。侑名と話がしたいんだ。」……あれ?


「拓真?あんたいつもと違うよ。いつもだったら私にすら口説いてくるのに。」


「北山。頼む!侑名と話をさせてくれ。」拓真は真剣に頼み込んでいる。


「分かったわよ。侑名。大丈夫?」恵麻が心配そうに聞いてくる。


「大丈夫、ありがとう恵麻。今日の拓真は真剣に悩みがあるみたいだから。」


「なにかあったらいつでも言ってね。」そう言うと恵麻は離れていった。


「どうしたの?拓真、変だよ。」


「侑名。あの。高橋いるじゃん。高橋って俺の事どう思っているのかな。」


「高橋?そんな女子いたっけ、別の学年の子なの?」


「いや。違う。高橋 直哉の事だよ。」ん?男の子?


「高橋ってカッコいいじゃん。俺、高橋の事が好きなんだよ。」


(えっと……。どういうことなんだろ。)

よく見たら、拓真の好意の相手は本当に高橋くんの方に向いていた。


「なあ、俺と高橋の相性を占ってくれよ。」


「う~ん。拓真~。本当に大丈夫?」私はかなり心配になってきた。


「俺はいつも通りだが?」

(いや。いつも通りじゃないから聞いてんの!)


「高橋の事で朝から頭がいっぱいなんだ!」

(あ~あ。頭を強くぶつけたんだな、きっと。)


「なあ、侑名どうなんだよ?教えてくれよ~。」


確かに高橋くんは拓真と同じくらいカッコいいと思う。だけどイケメン✖イケメンは成立しないと思う。

少し興味が湧いたので高橋くんの好きな人を見てみた。

すると、高橋くんは……今川くん?高橋くんもそっちの人なの?


今川 光星(いまがわ こうせい)くんは、イケメンというより女の子っぽい美少年だ。女子高校生に間違われるくらいの…。

その今川くんは………。拓真ぁ!


(あ~あ、イケメン✖イケメン✖美少年の三角関係が成立しちゃったよ。)


これ、どうしよう。出来れば知りたくなかったよ。こんな近くにBLやGLの世界が流行っていることを……。

もう、めんどくさいから、当事者同士で話し合ってもらおう。


「拓真。落ち着いて聞いてね。高橋くんは今川くんが好きなんだよ。」


「その、今川くんは拓真の事が好きみたい。分かった?」


「………そんな!高橋。お前はあんな女みたいなやつが好きなのか。」

相当ショックを受けている。

(昨日までのあなたは女ばかり好きだったよね。)


「そう言う事だから、あとは当事者で勝手にやって……。」


「侑名!」逃げようとした私の手を拓真が掴んだ。


「幼馴染の恋の応援してくれよ!たのむ!」

(え~やだ!BLの三角関係なんかに巻き込まれたくない。)


「自分でなんとかしなよ!男でしょ!」


「たのむよ~。高橋に話をしてくれよ~。」

(絶対やだ!コイツ女々しいし、めんどくさいよ~。)


「聞いてくれないなら、四六時中お前のそばを離れないからな!」

(イケメンに言われたらキュンとするセリフを言っちゃったよ。)


「それは困るかな~。」(また女子たちにいじめられる。)


「………じゃあ。高橋くんに聞くだけだよ。」(折れたよ、わたしは。)


「マジか。助かるわ~。持つべきは幼馴染だな。頼んだぞ!」

 そう言うと拓真は去っていった。

(マジか!はこっちだよ!拓真~。)


 とりあえず、高橋くんの話を聞いてみるか。

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