ミステリー小説の死体が誰の悲しみも誘わないように。
るぶん
第1話
ぱんっ。ぱんっ。
乾いた音が二回。少し間が空いて、
ぱんっ。
もう一度。空気が震える。
「……鈍ったか」
その小さな呟きは、大気に静かに溶け込んでいくように消えた。その声には驚愕も落胆も、冷めた諦念すらもなかった。ただその手の上にある血と事実とを、客観的に眺めているだけだった。ミステリー小説の死体が誰の悲しみも誘わないように。
この血は僕のものなのだろうか。彼のものなのだろうか。どちらでもあるような気がしたし、どちらでもないような気もした。決めてしまわないほうが、あるいはいいのかもしれない。
二つの血と一つの死骸は、水の底へ沈んでいく。
冬は終わった。次は春が来る。
ミステリー小説の死体が誰の悲しみも誘わないように。 るぶん @rubun
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます