第2378話 千鶴・御坂 石神家へ Ⅷ
虎白さんたちが、いろいろな意味で驚いていた。
「おい、あのネコってなんだよ!」
「あー」
「いきなり40メートルに巨大化したぞ!」
「肉体じゃなかった! 電光で覆われてたぞ!」
「口から何を吐いたんだよ!」
俺が説明に困っていると、怒貪虎さんが来た。
「ケロケロ」
「えぇ! なんですか、それは!」
「ケロケロ」
「そんな! そんな存在が!」
「ケロケロ」
「いえ、ああ、分かりました! とんでもない存在なんですね!」
「ケロケロ」
なんて?
でも、怒貪虎さんの説明で剣士たちは分かってくれたようだ。
どう分かったのかは知らん。
「ケロケロ!」
『はい!』
怒貪虎さんの号令(?)で、剣士たちが怒貪虎さんを囲んで並んだ。
「ケロケロ」
「ああ、「花岡」の「小雷」ですか」
「ケロケロ」
「え、それでこれを……」
なんかやってる。
ハーがみんなに魔法陣の図形を見せている。
ルーも一緒にやってる。
あいつらも会話が分かってんだよなー。
一通り説明が終わったようなので、俺が剣士たちに言った。
「さっき怒貪虎さんがやったように、でかい威力で撃つと異次元の怪物が出てきます。それは俺たちではなかなか相手に出来ません! だから魔法陣を使った場合は、十分に制御が必要です!」
「このネコ連れてきゃいいんじゃねぇの?」
「それはうちのロボです!」
「なんだよ、ケチ」
「……」
こういう人たちだ。
まず、一番注意しなければならないのは、出力の調整だ。
俺はルーとハーを呼んで、魔法陣の一部書き換えを指示した。
「ここの「RAD(ラド)」を「ANSUR(アンスール)」に変える。そうすると威力は半減する」
「「エッ!」」
「この部分が出力調整になってるんだ」
「タカさん! どうしてそんなことが分かったの!」
「いろいろ試したからなぁ」
「「!」」
元々は双子が適当にカッコイイ感じに作った魔法陣だった。
でも、実際に凄まじい現象を起こしているのだから、必ず何らかの意味が通っていると俺は考えた。
だからそれを検証していったのだ。
「それから、ここの……」
俺は幾つか改変し、双子に魔法陣を書き直させた。
「タカさん、一体いつの間に……」
「スゴイよ、どうやって……」
双子が驚いていた。
双子は「煉獄」は使えないので、「花岡」の《槍雷》で試させた。
以前は時空の裂け目を生じた。
《槍雷》
直径700メートルの巨大なエネルギーの柱が飛んで行く。
「あ! 大丈夫だよ!」
「今全力で撃ったけど、時空は割れないね!」
「バカ! 全力でやるな!」
「「ワハハハハハハハハ!」」
まったくこいつらは……
すぐに全員に教えようとするが、大勢いるので困った。
ルーとハーが手書きで作っていく。
複雑な図形なので一枚を仕上げるのも大変だ。
「コピー機があればなー」
「ああ、怒貪虎さんの家にあるぞ?」
「「「エェー!」」」
なんで?
虎白さんが怒貪虎さんにコピー機を使わせて欲しいと頼みに行った。
「ケロケロ」
双子が怒貪虎さんと一緒に山を降りた。
「……」
15分で戻り、100枚もコピーして来た。
双子が全員に配り、まずは「花岡」の《小雷》の使い方を講義して行く。
しかし剣士の中には《小雷》が使えない人間もいる。
ルーがそういう人間を集めて、《小雷》を教えて行った。
虎蘭と虎水も、《小雷》を知らなかった。
「花岡」の技はまだ未熟で、ルーとハーが懸命に教えていくが、なかなか習得出来ない。
一旦休憩になった。
若い剣士たちが冷えた麦茶を配って行く。
俺ももらい、ロボの傍に座ると、双子や虎蘭たちも集まって来た。
「あー、なかなか上手く出来ないなー」
虎蘭が悔しそうに言う。
「しょうがねぇだろう。「花岡」は一朝一夕には習得出来ねぇよ」
「でも、早く私たちも覚えたいです」
「焦るなよ」
「でもー」
俺は笑って虎蘭の頭を撫でた。
ロボが起き上がって、虎蘭の肩に前足を置いた。
「ロボちゃーん。どうにかならないかなー」
「にゃ」
「ねえ、私も!」
「にゃ」
虎水が近付いて来て、後ろからロボの頭を撫でた。
しゃきん
ロボが長い爪を出した。
ぷす、ぷす
「!」
ロボが爪を虎蘭と虎水の頭に刺した。
「「にゃほふー」」
二人が気絶した。
「おい!」
「「タカさん!」」
やっちまったぁー!
突然虎蘭たちが倒れたことに気付いた剣士たちが駆け寄って来た。
「おい、何があった!」
「大丈夫です! すぐに気が付きますから!」
「高虎!」
「おい、どうした?」
虎白さんまで来た。
俺は仕方なく、ロボが脳を改変したことを伝えた。
「なんだって!」
「おい、大丈夫なのかよ!」
「ええ、俺もやられましたし、他に何人も同じことを。絶対に身体に悪いことはありません」
「マジか……」
休憩が終わり、みんなが鍛錬に戻っても、虎蘭と虎水の意識は戻らなかった。
しかし、30分もすると、二人が目を覚ます。
「おい、大丈夫か?」
「え、ええ。一体何が……」
「虎水も平気か?」
「はい。なんか身体が軽いような……」
ふー。
ロボはスースー寝てた。
双子を呼んで、虎蘭たちに魔法陣を描かせた。
「あ! 出来るよ」
「なんか分かった!」
よかったね。
虎白さんが驚いている。
「高虎! 他にも《小雷》が上手く出来ねぇ奴らがいる」
「はい」
「そいつらも頼む」
「はぁ」
俺はロボに近づいて行った。
虎白さんが剣士たちを集めてこっちへ来る。
「ロボ、こいつらにも《小雷》が出来るようにしてくれないか?」
「……」
ロボが見てた。
寝た。
「ダメですね」
「おい、どうにかなんねぇのか!」
「無理です。ロボが気に入った人間しかやりませんから」
「そうなのかよ……」
虎白さんは残念がったが、それ以上は何も言わなかった。
多分、ロボのことが分かっているからだろう。
人間がどうにか出来る存在じゃないと。
スヤスヤ眠るロボは可愛かった。
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