第2375話 亜紀と柳のお留守番
タカさんたちが盛岡の石神家本家へ出発した。
ロボも付いて行ったので、今回は私と柳さんは留守番だ。
皇紀はまたパムッカレ。
こういう時に「アドヴェロス」などで何かあるといけないので、二人とも予定は入れていない。
柳さんと鍛錬をするくらいだが、真面目な柳さんが、庭の雑草を取りたいと言って来た。
「夏場になって結構生えてるの」
「じゃあ、やりましょうか!」
よく草むしりはやる。
タカさんが庭を大事にしているので、自然にみんなで気付いた時にやっている。
柳さんが鍛錬の休憩がてら、一番やる。
柳さんは植物が大好きで、タカさんが育てている草花を大事にしている。
もちろん他のみんなもやるし、タカさんも時々やっている。
私が家事全般、特に掃除の全体統括をしているので、定期的に号令を掛けて全員で取り掛かる。
でも、最近は柳さん主導でやることが多い。
柳さんは草むしりのエキスパートになっていた。
草むしりは無心になる。
除草剤はダメだ。
ちゃんとした植栽にも影響が出るし、表面的に枯れてもまたすぐに出て来る。
やっぱり地面の下の根っこから引き抜かないとダメなのだ。
「タンポポだ! 柳さん、タンポポも抜いていいですよね!」
「うん、地面の養分をどんどん食べちゃうから。みんな抜いてね」
「はーい」
タンポポは厄介な雑草だ。
地中の根は太く長い。
しかも地上部分は地面からすぐに葉が拡がり、普通の抜き方をすると地上部分だけ駆除することになる。
そうするとすぐにまた根から生えて来るのだ。
「覚悟しろよー!」
私はタンポポの周囲の地面を少し削り、地中の太い根を掴んだ。
タンポポの根は真直ぐに伸びていることが多い。
「エイ!」
指で掴んで引き抜いた。
「ギャハハハハハハハ!」
「どうしたの?」
抜いた根を柳さんに見せた。
「アハハハハハハハハ!」
根が途中で二本に分かれ、それがまるでポーズを取っているように交差していた。
「ウッフン」という感じだ。
結構タンポポが生えていた。
うちの庭は栄養価が高いのか。
柳さんもタンポポを抜いた。
「ワァー!」
「どうしました?」
柳さんの抜いたタンポポを見た。
「ギャハハハハハハハ!」
「もう!」
それも二本の足のように分かれ、付け根にちっちゃいオチンチンが付いていた。
「やりましたね!」
「亜紀ちゃん、やめて!」
タンポポが結構ある。
どんどん抜いて行った。
「あ、こいつ根を拡げてやがる」
たまにそういう奴がいる。
普通はまっすぐなのだが。
慎重に掘り進んで抜いた。
「あんだ、こりゃ」
八本脚になっていた。
「タコ?」
双子の花壇の近くでは、ウンコ型のタンポポの根が育っていた。
結構な量になった。
「折角だからたんぽぽコーヒーでも作ってみようか?」
「いいですね!」
タンポポは別個に集めた。
もちろん他にもスミレやクローバー、ドクダミやスギナ、ハコベなども一杯ある。
雑草はコッコたちの餌として使える。
夢中でやっていたら、真夜たちが来た。
昼食を一緒にと呼んでいたのだ。
「草むしりですかー?」
「うん、ごめんね! 夢中になってて時間に気付かなかった!」
「いいですよ!」
真夜と真昼を中へ入れて、リヴィングへ案内した。
私と柳さんは一度シャワーを浴びて着替えた。
「大変ですね」
「うちって庭が広いからね」
「アハハハハハハハ」
元の家も広いけど、いくつも他の家をくっつけちゃったからなー。
四人で鴨南蛮のつけ蕎麦を作った。
他にも各種天ぷらを揚げる。
梅田精肉店さんが、野生の鴨肉をくれた。
タカさんが私たちで食べるように言ってくれた。
優しいぃぃぃー!
鴨のコンフィも作った。
私が注意しながらネギに焼き目を付け、真夜が出し汁を、真昼が天ぷらを作る。
柳さんはさっきのタンポポでたんぽぽコーヒーを作ろうとしていた。
オチンチンたんぽぽを見せると、真夜と真昼が爆笑していた。
四人で昼食を食べる。
「おいしぃー!」
蕎麦が幾らでも食べられる。
出し汁は一杯作ったので、鴨やネギを食べながら追加して、またどんどん食べた。
真昼の天ぷらも美味しい。
海老、マイタケ、ナス、シシトウ、タマネギやゴボウとニンジンのかき揚げ等々。
食後に柳さんが作ったたんぽぽコーヒーをみんなで飲んだ。
「あ、美味しい!」
真夜と真昼が気に入ったようだ。
「ほんとにコーヒーみたいですね!」
「うん、私も久し振りに飲んだ」
「前にも作ったことが?」
「うちの田舎でね。お母さんが作ってくれたの」
「へぇー!」
本当にコーヒーの味がする。
少し違うが、これも素朴でいい感じだ。
「良かったら、草むしりを手伝いましょうか?」
「真夜、ほんとに!」
「ええ、どうせ暇ですし。こんなに美味しい物をご馳走になりましたし」
「ありがとー!」
午前中もずっとやっていたが、やっぱり広い庭なのでまだ残っている。
一度やり始めると、折角なので全部綺麗にしたくなっていた。
暑いので着替えのジャージを貸した。
柳さんの。
私のは胸のサイズが合わない……
真昼にも……
午後からも四人で草むしりをした。
四人掛かりなので、どんどん進んだ。
ありがたい。
私は午前中に集めた雑草をコッコたちの所へ運んだ。
「こんにちはー」
「こんにちはー」
どっさりと雑草を出すと、コッコたちが喜んでくれた。
「午後もまた持って来るね」
「こんにちはー」
家に帰りながら、真夜たちの優しさに顔が自然に綻んだ。
この暑い中を手伝ってくれるなんて!
本当に優しい二人だ!
そしてタカさんたちのことを思った。
タカさんは石神家本家に行くといつも大変な目に遭う。
「今回は無事で済みますようにー」
タカさんの顔が浮かんだ。
「ん?」
タカさんの顔が焦っていた。
「なんだ?」
タカさんの顔が怒っていた。
「!」
急いで家に帰った。
三人が呆然と庭に立っていた。
「ど、どうした!」
柳さんが真夜の近くの地面を指差していた。
なんか、水晶のように尖ったものが地面に見えた。
「……」
「亜紀ちゃん、これ……」
「……」
「亜紀さん、ゴメンナサイ……」
「……」
みんなで掘ってみた。
四角錘を二つ合わせた菱形のなんかが出て来た。
高さ4メートルの……
水晶のような物質だが、絶対違う。
見る角度によっていろんな色に輝いて見える。
それに、中心になんか剣みたいなものが入ってる。
写真を撮って、麗星さんに送った。
1時間して、電話が来た。
「り、り、」
「なんですか?」
「り、《リア・ファル(Lia Fail 運命の石)と思われます!」
「!」
「大変なものでございます! 石神様は?」
「今、出掛けてて明後日に帰ります」
「す、すぐにお知らせを!」
「待って下さい!」
必死でお願いして、タカさんが戻ってから私が話すことにした。
「今は石神家本家ですので、心が動揺すると命に関わるかと!」
「さようでございますか。何かありましたらご協力いたしますので」
「ありがとうございます!」
みんなが私を見てた。
「リア・ファルなんだって」
「亜紀ちゃん、何それ?」
私も分からないので、ネットで検索した。
伝説のトゥアハ・デ・ダナーン神族がもたらした秘宝なんだって。
た、たいへんだぁー。
どうすんの、これ?
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