第2369話 千鶴・鈴葉 石神家へ

 8月1日。

 御坂鈴葉を連れて、石神家本家へ行く日だった。

 みんな夏休みに入っていて、俺の都合に合わせてこの日になった。

 俺も同行し、一応2泊の予定でいる。

 朝の8時に御坂がうちへ来た。


 「おはようございます!」

 「……おはよう」


 なんだ、こいつ。


 「石神さん! おはようございます!」

 「おい」

 「はい!」

 「なんでお前がいんだよ」

 「はい、ご一緒します!」

 「バカヤロウ!」

 「あれ? もう石神家の方には許可を得てますよ?」

 「俺は聞いてねぇよ!」

 「言うと断られると思いまして」

 「頭いいな!」

 「はい!」


 どうしてマンロウ千鶴がいる!

 しかも、虎白さんの許可は得ているということか。

 それならば、確かめなければならん。

 

 「石神家に確認する!」

 「石神さんがご当主なんですよね?」

 「その通りだ!」


 電話を持つ俺を、二人がキラキラした目で見る。

 あの最強の石神家の当主の俺を尊敬している。


 「おう、当主の高虎だぁ!」

 「てめぇ! 何のつもりだぁ!」

 「す、すいません」


 やっぱりダメだった。

 二人が何事かと俺を見ていた。


 「あのですね、今日御坂をそちらへ連れて行こうと思ってますが、マンロウ千鶴まで一緒に行く許可を取ってるって」

 「ああ、俺が聞いてるよ」

 「俺、知らないんですけど!」

 「それがどうかしたのか?」

 「いいえ! 当主の高虎でした!」

 「さっさと来い!」

 「はい!」


 呆れた顔で俺を見ている二人に言った。


 「いいんだってさ」

 「「……」」


 双子が荷物を持って外に出てきた。

 石神家本家には必須の二人だ。


 「「鈴葉ちゃーん!」」

 「こんにちはー! 今日は宜しくね!」

 「「うん!」」


 「マンロウちゃんだぁー!」

 「マンロウちゃんもよろしくね!」

 「うん、よろしくね」

 「「やったぁー!」」


 双子は大喜びだ。

 まあ、俺も別に不満があるわけではない。

 ロボも出てきた。

 千鶴と御坂の匂いを嗅いだのか。

 

 「ロボちゃん、おはよう」


 ロボが千鶴の足に突進し、御坂の足にも額をぶつける。

 ロボはハマーの方へ行って俺を見た。


 「おい、お前も行きたいのかよ?」

 「にゃ」

 

 もうどうでもいい。

 玄関を開け、柳を呼んだ。


 「柳! ロボの荷物も揃えてくれ!」

 「はーい!」


 柳がすぐにロボの食事皿、トイレなどを持って来る。

 道中のロボの御飯もだ。

 急いで焼いたササミや肉、刺身などがタッパーに入っている。

 ハマーに全員の荷物を積み込んだ。

 土産はもう前日に積んでいる。

 助手席にルーが座り、後ろに千鶴と御坂とハー。

 三人の脚の上にロボが乗った。


 「行くぞ」

 「「「「はい!」」」」

 「にゃー!」


 出発した。








 朝食を摂っていない千鶴たちのために、最初のサービスエリアで食事をした。

 俺も食べていないので家で作って来た稲荷寿司を出す。

 三人で食べ、朝食を食べている双子は朝食後の軽い(いっぱい)食事を買って来て一緒に食べた。


 「美味しいですね!」

 「ありがとさん」


 千鶴と御坂が稲荷寿司を喜ぶ。

 双子も欲しがるので、二つずつやった。

 まあ、こいつらが喰いたがるのは分かっていたので多めに作っている。

 千鶴が増えても問題ない。

 

 「おい、御坂は向こうでいろいろやることもあるけどよ、千鶴は何すんだよ?」

 「私だって石神家の皆さんと一緒にやりますよ!」

 「何を?」

 「鍛錬ですよ!」


 なんだ?


 「お前、刀とか使えんの?」

 「まー、少しは」

 「なんだよ?」

 「でも、石神家の方が私の技を見たいって」

 「ふーん」


 まあ、百目鬼家の神術を見たいということだろうか。

 でも、石神家ではほとんど知っているはずなのだが。

 虎白さんは、相変わらず俺には何も話してくれない。


 「おい、お前らなんか聞いてるか?」


 夢中で焼肉丼などを掻っ込んでいる双子に聞いた。


 「マンロウちゃんのね、「滑空足」とか見たいらしいよ?」

 「あとね、「神聖瞳術」とかだって」

 「なんでお前らは聞いてんだよ!」

 「だって、マンロウちゃんを一緒に連れてっていいか聞いたの私たちだもん!」

 「なんだと!」


 どうやら千鶴に頼まれて双子が間に入ったらしい。


 「ちきしょう! 俺はいつだって蚊帳の外だ!」

 「タカさんにも話とけって言われたよ?」

 「聞いてねぇぞ!」

 「忘れちゃった」

 「ごめんなさい」

 「!」


 千鶴と御坂が笑っていた。







 車の中で、俺は二人に石神家での注意事項を話した。


 「とにかく逆らうな。問答無用でぶった斬る人たちだからな!」

 「そうなんですか?」

 「おい、暢気に構えるな! 俺なんて酷かったよな?」


 双子に説明させる。


 「「虎地獄」ってあってね。奥義を教えるために、タカさんの身体に真剣をズブズブ刺すの」

 「「Ω」と「オロチ」の粉末があってね。治癒能力を高めるんだ。タカさん、いつもシュワシュワになってたよね」


 千鶴と御坂はよく分からない。


 「肉とか骨とか神経の再生を驚異的に高めるものなんだ。内臓まで刺されても、少し休むと修復する」

 「そんなものがあるんですか!」

 「まあな。お前らは使わないと思うけどよ」

 「そうして下さい!」

 「でも、来ちゃったからなー」

 「「!」」


 少しは脅えろ。


 「タカさんがキレちゃってね」

 「山の上のお城を吹っ飛ばしちゃったの」

 「そしたらみんな怒っちゃってね」

 「流石に死ぬかと思ったよね」

 「大丈夫だったの?」

 「うーん、まあ、ギリかな」

 「ほんとはもう「虎地獄」は終わってたのにね」

 「アホだったね」


 「バカヤロウ!」


 双子が笑った。


 「その時、私たちがやられそうになったのね」

 「もちろん冗談だったんだけどね」

 「そうしたらタカさんがキレちゃって」

 「でもやられちゃったの」


 今度は千鶴たちが笑った。


 「石神さんはいい人なんですね」

 「そんなことはねぇ」





 

 酷いことにはならないとは思うけど。

 まあ、何かあったらこいつら二人を守ってやらねぇと。

 でも、あんまし自信がねぇんだよなー。

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