第393話 足音
俺も静子さんの後で風呂をいただいた。
俺はハーに、「人生ゲーム」を持って来るように言った。
「なんだ、これは?」
俺は院長と静子さんに説明する。
「なんだか面白そうじゃないか。やってみるか」
静子さんは見ているとおっしゃったが、無理に参加させる。
「あー! 文学ちゃんスゴイじゃん!」
院長の調子がいい。
静子さんも楽しんでいる。
俺は出目が悪く、破産しそうだった。
「お前は何をやってもダメだな」
院長が大真面目に言う。
「いい大人が子どもの遊びで本気になっちゃって」
「何おぉー!」
静子さんが大笑いしている。
「あー、楽しかった」
静子さんが笑顔で言ってくれた。
院長も満足げだ。
俺は双子を寝かせ、座敷でお二人に礼を言った。
「今日はお騒がせしました。お陰で子どもたちも楽しそうでした」
「いや、俺たちも楽しかったよ。ありがとう」
静子さんがお茶を煎れてくれる。
「あと、どれだけこうやって笑えるのかな」
院長が言った。
「何言ってんですか。あと百年は生きますよ」
「お前なぁ、一応医者なんだから、もうちょっと現実的な数字を言えよ」
「言ったら怒るくせに」
俺は頭をはたかれた。
静子さんが笑う。
「石神、お前のお陰で俺の人生は楽しかったよ」
「死ぬのは病院を辞めてからにしてくださいね。葬儀とかめんどくさい」
またはたかれた。
「お前はいつもチンピラだなぁ。少しは真面目に話したいぞ」
「すみませんね」
俺は茶を啜り、静子さんのお茶は最高ですと言った。
「お前が結婚でもすればなぁ。俺たちも少しは安心できるんだが」
「お袋みたいなこと言わないで下さいよ。俺はちゃんと人生を楽しんでますって」
「そうじゃない。お前はいつも、どこか寂しそうだからな」
「?」
「自分では分からないんだろうよ。お前は自分のことを考えない男だからな」
「何言ってんですか」
「お前はいつも俺をからかって喜んでいるが、俺に怒られたいんだろう?」
「それはないです」
院長は笑った。
「まったく、子どものような甘え方だよ、お前は」
静子さんも微笑んでいる。
俺は静子さんに、院長がセグウェイで響子を追いかけて、ロリコンの変態だと噂されたことを話した。
「「脱がしちゃうゾー、ゲヘヘ!」って言いながら追いかけてたんですからね」
「あ、あれはお前がそう言えって言ったんだろう!」
「それはないですよ! 俺は響子に脱がされちゃうから逃げろって言っただけで。院長がノリノリではしゃいでたんじゃないですか!」
静子さんが大笑いした。
「どうせまたお前が噂を広めたんだろう」
「当たり前じゃないですか!」
「お、お前ぇ!」
静子さんが笑いながら、もうやめてくださいと言った。
「心臓がおかしくなりそうですよ」
院長と俺が笑った。
バレンタインデーの話もする。
院長は俺の頭を殴りながら、やめろと言った。
「そういえば、今年は一杯いただいて来ましたよね」
「あれは全部俺のです」
「そうだったのねぇ」
「だから今年のには「勘違いしないでください」とか書いてなかったでしょ?」
「そういえば!」
「石神! それ以上はやめろ!」
静子さんはまた大笑いした。
部屋に行くと、双子が起きていた。
「なんだ、寝てなかったのか」
「うん。文学ちゃん、楽しそうだった?」
「ああ、見たことないくらいに笑ってたぞ。お前たちのお陰だ」
「「うん!」」
「あと百年生きてくれと言っといた」
「じゃあ、ガンバロー、ハー!」
「そうだよね、ルー!」
「?」
良くは分からないが、二人が院長を大好きなのは分かった。
「じゃあ、寝るか!」
「「はーい!」」
二人が両脇で俺の腕に捕まるので、寝返りができねぇ、と振りほどく。
俺は二人を上から抱き寄せ、お尻をなでなでしてやる。
クスクスと笑っていた。
「お前らのお尻はカワイイよなぁ」
「タカさん、エッチ」
「そんなこと、とっくに知ってるだろう!」
「「アハハハ」」
「まあ、聖ほどじゃねぇけどな」
「あいつぅ、次はバキバキにしてやる!」
「まともな身体でアメリカに帰れると思うなよ!」
聖にやられ、ルーの顔はパンパンに腫れ上がり、ハーは額が鬼の角のように腫れた。
まあ、夕方には戻った。
「あいつは俺と喧嘩できるんだから、強いに決まってる」
「「うーーん」」
「何しろ、あいつには今回大分世話になった。次はやっつけても、ちょっと加減してくれ」
「「分かったぁー!」」
「じゃあ、寝ろ」
「「うん」」
俺はまた尻を撫でた。
「タカさーん、エッチすぎるよー」
俺は笑った。
「お前らがカワイすぎるのがいけないんだぁ!」
「「エヘヘヘ」」
廊下で、クスクスと笑いながら離れていく足音が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます