第296話 「紅六花」出撃
俺たちは別荘から戻り、子どもたちは日常の生活に入る。
俺には、もう一つやることがあった。
夕飯後、亜紀ちゃんと話した。
「じゃあ、明日は一泊していないからな」
「はい」
「家のことは頼むぞ」
「はい。タカさんもお気を付けて」
早朝、俺はドゥカティに跨り、六花のマンションに行った。
六花はマンション前で既に待っていた。
「じゃあ、宜しく頼むぞ」
「はい。タケたちには連絡してます」
「うん」
俺たちは六花の故郷へ行く。
今日の9時には到着するはずだ。
そのまま、みんなで群馬に行く。
長距離のドライブだが、六花の意気は高まっている。
「総長!」
タケが俺たちに駆け寄ってきた。
「おう! みんな集まってるようだな!」
「はい! 総長たちのお越しをお待ちしてました!」
タケの食堂の広い駐車場に、多くのバイクや車が集まっている。
現「紅六花」のメンバーだった。
総勢、約50名。
メンバーはもっといるが、今日は中心的な連中が集まった。
みんな純白の特攻服を着ている。
「紅六花」のチームスーツだ。
全員の前に、六花が立った。
「みんな! よく集まってくれた! 今日はあたしの大事な方と一緒に行くぞ!」
『オォーーーーゥ!』
大きな怒号が響いた。
みんな、事情は分かっている。
俺に銃弾を浴びせ、響子と六花を殺そうとした死王へのケジメだ。
死王は既に日本にはいない。
だから、裏で糸を引いていた花岡斬へケジメを取らせる。
最初は俺一人で行くつもりだった。
しかし、六花がそれを止めた。
「あたしを、「紅六花」を使ってください」
俺は六花に、今後の禍根を断つという話をしたことを後悔した。
詳しい事情を知っている六花に、安心してもらうために話した。
「お前はともかく、「紅六花」まではまずいだろう」
「いいえ。あの仲間たちは、きっと石神先生の役に立ちます」
「危険なことになるかもしれん。死人が出てもおかしくねぇんだ」
「分かってます。宇留間とは比べ物にならないバケモノですよね」
地下の惨状は、俺が六花に真実を話していた。
俺は丹沢の山の一部を買った。
そこで子どもたちと一緒に、「花岡」の技を研究した。
同時に、必要はないかもしれないが、サバイバルと戦闘訓練も交えた。
子どもたちは驚異的なスピードでそれを吸収する。
そして、ついに花岡を超えるものを双子が生み出した。
すべては、いつか来るであろう死王への対策だった。
六花は途中から参加してもらい、訓練をした。
まだ子どもたちのようには行かなかったが、才能は認められた。
「あたしは今後、「タイガー・レディ」を名乗る! あたしの大事な方のことは「虎」と呼べ!」
「おい、聞いてないぞ」
六花は無視して俺に熱烈なキスをする。
大歓声が沸いた。
出発前に、タケの食堂でみんなで腹ごしらえをする。
俺はタケと小鉄にチャーハンの作り方を教えた。
「いいか、ポイントはラードだ」
「え、そんなものなんですか?」
「見てろよ!」
俺はラードを水を入れた中華鍋に入れる。
「そのままじゃねぇんだ。こうやって熱したラードが溶けていく。その上澄みを掬うのな」
「なるほど!」
「贅沢なやり方だけど、こうすることで上質なラードが分離できる。やってみろよ」
そのラードを使ってチャーハンを作る。
「あ、ほんとだ!」
「美味い! この味だ!」
タケと小鉄がじゃんじゃんチャーハンを作り、みんなに振る舞う。
「「虎」の旦那が秘伝を教えてくれたんだ!」」
『オォーーーーゥ!』
また大歓声が沸く。
腹ごしらえは終わった。
俺たちはマシンに火を入れ、斬の屋敷へ向かった。
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