【KAC20221】お題「二刀流」 二刀流の試合
テリヤキサンド
二刀流の試合
ここはある鍛冶場
一人の侍が二振りの刀を注文し、今日、完成した。
「注文の品はこれだ。」
「おお、これが。」
刀鍛冶は自身の技術を集めて、つくった作品を披露する。
「まず、持ち手は手を傷つけないために、手を守る部分を新たに輪のようなつくりにして、安全を重視。」
「次に刀身は同じ長さにつくり、先端はするどく尖らせた。」
「そして、持ち手近くの刀身には肉抜きで穴を両方とも開けている。」
「最後に二つの刀身を鞘にいれやすいように、肉抜き部分に金具をつけて、二振りの刀を固定した。」
「うん!満足な出来栄えだ!」
刀鍛冶は久々にいい仕事をしたと晴れやかな顔をしている。
そして、依頼した侍はというじっとして声も出さない。
「うん、どうした?そんなに感動したのか?」
「いや、そうじゃなくてだな。これは・・・。」
「ハサミじゃねえかあああああああああああああ!」
突然、大声を上げてつっこむ侍に刀鍛冶は思わず耳を塞ぐ。
「それが何かあるのか?」
「俺が依頼したのは二本の刀!なんで、ハサミになっているんだ!」
「いや、刀はこの御時勢、いかんだろ。刀なんて持ってたら、しょっ引かれるぞ?」
「この後の試合どうしたらいいんだよ!」
「そんなのは知らんよ、というかな刀作るのやめて、包丁やハサミをつくることに決まってかなり経つのにそんなこともわからんのか?」
「うっ!」
「俺はハサミ作るのが恥ずかしくて依頼で二本の刀を依頼したと思ってたよ。まあ、作ったものはしょうがない。これでも刀として使えるだろうし、少し撒けてやるよ。」
「・・・わかった。」
金も全額つぎ込まないといけないと思っていた侍は値切りの言葉にうなづきハサミを受け取った。
そして、試合当日。
外から見えないように布でハサミを巻き、相手と対峙する。
相手も全体を布で隠した二本の刀らしきものをもって覚悟したような表情をしている。
相手の覚悟に報いるため、俺は布に手をかけ、そのまま、前に突き出す。
相手も布をとり、前に突き出す。
相手の獲物は柄が長く、刀身は短い槍が二本。その刀身に金具がつけられ、固定されている。
高枝切バサミだった。
「「・・・・・。」」
「とりあえず、試合やめるか。」
「そうだな。」
その後、二人の侍は武家の庭師として争うことになる。
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