それは規範ではなく
シヨゥ
第1話
「人の規範になりなさい」
私塾に入ると講師からそんなことを言われた。
「あなた達の行うことが正しく、そしてあなたたちを目指すことが何よりも好ましい。そう思われるぐらいに秀でた人間になるよう努力しなさい」
教師はそう続けた。
「それは価値を僕らの基準で測る人間を侍らせるようになれ、ということでいいですか?」
その言葉に引っかかりを覚えた。そこで言葉を続けようと息を吸い込んだ講師の隙を見逃さず質問をぶつけてみた。
「発言するときは挙手を」
「分かりました。次からそうするようにします。それでどうなんでしょうか?」
「……言葉は悪いですがその通りです」
「なるほど。分かりました。つまり、僕らは人々を扇動する力を求められている。そういうことでよろしいでしょうか?」
その質問に講師は息を呑む。
「沈黙は肯定しているということでよろしいですね? なるほど。そのやり方を教える。つまり僕らはそれを実体験させられるんですね。あなたの価値観でものを測るよう矯正させられるという形で」
講師はここまで言っても何も否定してこない。図星なのだろう。
「親のすすめで入塾しましたが、そんなのは御免被りますわ」
立ち上がると視線が僕に集中する。
「自分の価値観を捨ててまで賢くなりたくないのでね」
そう言葉を残して教室を後にする。元から気乗りしなかっただけすごくスッキリした。しかし親になんと説明するか。それが問題である。
それは規範ではなく シヨゥ @Shiyoxu
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