二刀流を諦めたはなし

みない

第1話

 ゲームや漫画の世界で二刀流のキャラクターが活躍することから、自分でも二刀流の剣術を出来る様になりたい。と考えたことはないだろうか?

 二本の剣を自由自在に操る様に憧れるものだ。しかし、現実は厳しい。


「まあ、そうなるな」

 師匠は二振りの木刀に振り回されるように、ふらふらと立ち回る僕に対して呆れた目で見る。

「二刀流ってのを簡単に考えすぎなんだよ」

 僕の目の前に現れるとそのまま、木刀を軽く受け止める。

「いいか? 二刀流ってのは片手剣を二本操ることじゃない。状況に合わせて両手の剣を使い分けることだ」

 そう言って同じように師匠は軽々と二本の木刀を振るう。舞うように木刀を振る様は二刀流の剣技をわかっている剣士が、二刀流の立ち回りかたを見せるように舞う。

 それと同じように木刀を振っていたのに、ここまで差がつく。

「二刀流を極めるのは普通の技術じゃない。一刀流と二刀流の絶対的な違いは再現性だ。同じように立ち、同じように木刀を振っても、バランスを崩すのは重心の動かしかたの違いだ」

 そう言うと、大仰に木刀と身体を動かす。

「二刀流を使いこなせるのは、一握りの剣士だけだ。ついでにいえば、仮に二刀流を覚えても二刀流を実戦レベルの剣術として使いこなせるようになるとなれば、さらに低くなる」

 実用性のない剣術を覚える暇があるなら、一刀流をまともに使いこなせる剣士の方が強い。そう言いたいのだ。

「一刀流の剣術が多いのは、再現性が高いからだ。同じように剣を持って、同じように振れば、同じようなことができる。だが、二刀流の流派には師と同じように振ってもその動きを再現できない」

 剣道の試合でルール上問題ないのにもかかわらず、二刀流を使う剣道の選手がいない理由であり結論でもある。

「だから、まずは一刀流を使いこなせるようになれ。それが剣術を覚える上で一番強いのは一刀流だ」

 師匠は木刀をもってどこかに行ってしまった。


 師匠は剣士としての実力もあるが、それ以上に機関の長としての仕事もある。その合間をぬって剣術を見てくれているのだから、二刀流の技を手ほどきできるほどの時間もなかった。だから僕は、




 二刀流を実用性はなくとも、一流派の型として使えるようになった。

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二刀流を諦めたはなし みない @minaisan

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