第44話  美代ちゃんとドライブ☺

 旅に出て何か変わったか考えても収穫は何ひとつなかったように思える。

 無駄な時間と浪費に終ったのか? ただあの時お袋に疑われ絶望し旅に出た。

 あのまま我慢してマンションに閉じこもっていたら気が触れたかも知れない。

 アキラは仕方がなかったと思っているが、まだ後の事ではあるがアキラには大きな転機を迎える切っ掛けになっていたのである。そして今日もまた予定のない朝を迎えた。


  今日は何曜日かさえ分からない日々を送っている。その時、アキラの携帯から着信のメロディが流れた。なんと先日逢ったばかりの美代ちゃんからだ。

 アキラの目が輝いた。

 「はっはい山城です」

 「先日はご馳走様でした。今度の土曜日か日曜日お時間ありますか」

 「もっ勿論です。時間はタップリとあります」

 その声を聞いた美代は苦笑気味にクスッし笑った。

 「もし宜しかったら何処か、お出かけしませんか」

 アキラは天にも登る思いだった。憧れの美代ちゃんから誘って来たのだ。そう云えば誘うのはいつも浅田美代の方だった。アキラから誘ったのはフェリーに乗って帰る時だけ。いや誘いたいのは山々だったが、アキラには余りにも高嶺の花と思い込んでいたのだ。たからアキラは女心には疎いのであろう。アキラいい加減に美代ちゃんの心に気付けよ。


 「えっ本当ですか? 僕みたいな男でいいんですか」

 「何を仰います。山城さんと一緒だから楽しいじゃありませんか」

 「ありがとう御座います。こんな嬉しい誘いはありません」

  大袈裟なアキラの言葉にまた美代はクスッと苦笑する。

 「良かったです。では土曜日はいかがでしょうか」

 「分かりました。それで何処か行きたい所はありますか」

 「そうですねぇ、いつもお食事してお別れしているので海が見たいです」

 「海となると千葉か湘南、鎌倉、遠い所で鹿島灘ですかね」

 「そうですね。鎌倉ではいかがでしょう」

 「鎌倉いいですね。では鎌倉にしましょう。待ち合わせ場所は何処にしますか」

 「私、世田谷ですが山城さんは何処にお住まいですか。方向が違うと遠回りさせると申し訳ないですし」

 「僕は赤羽です。鎌倉に行くには通り道ですから浅田さんの、お近くまで行きますよ」

 「ありがとう御座います。では東急世田谷線の世田谷駅前に十時で宜しいですか」

 美代ちゃんから突然の誘いでアキラは天にも登るような気分だった。翌日、世田谷駅にアキラは真っ白な車体の愛車トヨタ ランドクルーザーで出掛けた。デートに使う車としては似合わないが仕方がない。どちらかと云うと悪路や山道を走る時はその力を発揮するもので女性を乗せるには向かない。これは長距離旅行を想定して買ったもので、車高が高いので見通しは良い。そういう点では普通の乗用車より眺めがいい。

 この車は二十四ボルトから家庭用に百ボルトの電気に返還し、携帯電話の充電や小物の電気用品が使える。当時の価格は四百万から六百三十万円まであり勿論アキラは最高級車を使用している。


つづく

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