第4話  アキラ占い師と意気投合

 このゴリラのような巨体と風体を見ては銀行強盗を、もくろむヤカラも

『この銀行を襲うのは止めよう』てな事になるのは自然の原理だろう。

 尚、後にこの社長の相田剛志はアキラの良き相談相手になる男だった。

 再びアキラに春が来たのだ。なにせその巨体を活かした仕事に就けたのだ。

 やっと仕事に有りつけ張り切ったのだが、それにしてもアキラは警備の仕事は退屈だった。別に嫌な訳ではないが、銀行フロアの片隅で、ただ見張っているだけでは退屈そのものだ。できれば誰が銀行を襲撃してくれないかと思う時もある。

 銀行の人が聞いたら恐ろしい話である。アキラは今迄相手を怖いと思ったことがない。プロレスラーでもない限り、相手の方がアキラに向かって来ないからである。


 退屈を除けばアキラには最高の仕事だ。ただ立っているだけで給料を貰えるのだ。

 やがて、それから一ヶ月が過ぎた。勤務が終わって帰る途中の路上の隅に居たあ!  

 あのインチキ占い師が、いや正確はちゃんとした占い師であるのだが。

 アキラは茶目っ気を出して、その占い師の前にゴリラみたいな手を置いた。

 一瞬、驚いた占い師こと真田小次郎もニヤリとして言った。

 「お客さん……ゴリラの手相は占いませんがねぇ」久し振りの再会だった。

 真田は商売道具を、そそくさと畳み近くの居酒屋と足を運んだ。

 「山ちゃん久し振りじゃのう」

 もうすでに(山ちゃん&とっつぁん)の仲になっていたのだ。


 「とっつあん、景気がよさそうじゃないか!」                   

 「おうよ。この不景気な時はようワラでもすがる気分になるだろうからなぁ、特に多いのは中年のサラリーマンが占いにくるよ」

 「だろうな、俺みたいな若いのでも辛い時だったから特に中年ともなればなぁー」

 「山ちゃん今回は目が生きているじゃないか! 仕事にでもありつけたのかい」

 「じゃあ、前は死んでいたみたいじゃないか、まぁ確かに死んでいたかもなぁ。なんていうのかなぁ俺って図体がデカイのか、よく人が当ってくるんだよ。今回もそうだ強盗が勝手にぶつかってきてさぁ、挨拶ないから襟首つかまえたら何故か犯人逮捕の切っ掛けになって、でっ、今の仕事にありつけたって訳さ」

 「そうかい、そりゃあ良かったじゃないかい、でっ、どんな仕事なんだい」

 「それがね。ヒョンなことから警備会社に勤めているよ。銀行の警備だけど」

 それを聞いた真田は腹を抱えて笑った。

 「そっそうかい。ウッハッハッハ! ゴリラの警備じゃ誰も襲わないよ。」

 アキラもゴリラ扱いには慣れているから怒ることもないが、もっとも親しい人に限るのだ。繰り返すが、くれぐれも親しい人に限る。


つづく


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