白い世界

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白い世界

〈ザクッ ザクッ〉雪を踏みつける音だけが響いている。目の前には真っ白に広がる雪景色。目を開けていられないほど眩しく、思わず目を細めた。


「(心の声)ん?ここって…」普段通り電車に乗って職場に向かっていたはず。なのになんで雪??あっ、そっか。電車で居眠りしちゃったのか。って事はこれは夢か!確かに目の前に雪景色が広がっていても、全く寒さも冷たさも、ましてや痛みすら感じない。夢だから感じないのか、と納得してしまった。


夢だと分かれば楽しまなくちゃ損だよなと思い、両手両足を思いっきり開いて体ごと雪に倒れこんだり、大きい雪だるまや かまくらを作ってみたりと思う存分雪を堪能していた。


俺の住む地域でも冬には雪は降るのだが、次の日には跡形も無くなってしまうほどで、小さい頃から【雪ではしゃぐ事】が夢だった。実際の雪じゃなくても、こうして夢の中で小さい頃からの夢を叶える事が出来た。とっても嬉しかった。涙が出る位嬉しかった。


「(心の声)このまま、夢が覚めなきゃいいのに…」

そんな事を考えていると、空から雪が舞い降りてきた。その雪を受け止めようと両手のひらを広げると、右の手のひらに雪が触れた。その瞬間、右の手のひらに突き刺さるような激痛が走った。


すると、さっきまで静かだった白い世界から一変、赤い雪が吹き荒れ、またたく間に赤い世界へと変貌を遂げた。


そんな中、激しい風の音しか聞こえないはずなのに、うっすらと機械的な音が一定のリズムで聞こえてきた。


〈心電図の音・ピッ ピッ ピッ ピッ…〉

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