第180話 再会。そして……
ガシィッン! ……ビュッ!
誰かが剣撃を防御する音。それに遅れて風を切る音がする。
(音を置き去りするレイアの攻撃……それさえ防御するのか!)
この魔星将、やはり強い。そしてやっぱり……
(レイアにそっくりだ……)
レイアの攻撃は防御されたが、その時に魔星将のフードは飛ばされ、彼女の顔があらわになった……
「良くものこのこ顔を見せられたものね、レイナ!」
やはりこの魔星将はレイアの……
「随分腕を上げたわね。まあ、だからどうということもないけど」
「レイナぁ!」
レイアの顔は見たこともないほどの怒りに見ている。が、反対に魔星将──レイナの顔に表情はない。
「貴方に関わってる時間はないの。でも、そうね……どうしてもというなら魔都まで来なさい。そうね……五日だけ待ってあげるわ」
フッ……
その瞬間、魔星将レイナの姿は現れた時と同じように消え去った。残されたのは物言わぬレイアと……
「うっ……我々は一体……」
「体が……開放されてる?」
龍人族の人達……気がついたみたいだな。でも……
(なんて声をかけたらいいんだ……)
敵(かたき)がいるとは聞いていた。だが、まさか敵(かたき)が姉妹で魔星将だったなんて……俺はただただレイアの背中を見ていることしか出来なかった。
*
龍人族の人達はかなり弱っていたが、リィナの治療に加え、俺の〔アイテムボックス+〕の中にあったアイテムで一命を取り止めた。
「何から何まで世話になるな……」
「いえ、こちらこそです」
本来なら近くの拠点へ移動したいところだが、今の龍人族の体力ではそれは出来ない。そのため、〔アイテムボックス+〕から出した生活物資でとりあえず生活の基盤をととのえ、移動出来る体力を回復させることになったのだ。
「それでレイアはやはり……」
「はい、一人で行ってしまいました」
あの後、ふと目を話した隙にレイアは姿を消してしまった。十中八九、あの魔星将が待つという魔都へ向かうのだろう。
「行くのか」
「はい」
レイアをこのまま放ってはおけない。
「……すまないな、本来なら同行すべきなのだが」
龍人族達はまだ解放されたばかり。体力もそうだが、状況も良く分かっていない。クロードさんというリーダがいなくてはままならないだろう。
「いえ、こちらこそ後始末を全てお願いしてしまって申し訳ないです」
これは本当に言葉通りだ。ユベルを倒したとはいえ……いや、倒した後だからやらなきゃいけないことはいっぱいある。それに……
(ここの聖獣様やメルヴィルさん、獣人のみんなやジーナさんにもお礼を言わなきゃいけないのに……)
だが、今レイアを追いかけないと一生後悔する。とにかく最優先なのはレイアだ。
「大丈夫だ、それは任せてくれ。レイアのことは私も心配だ」
「ありがとうございます」
ほんと、クロードさんにはお世話になりっぱなしだな。
「ところでフェイ兄、魔都への行き方は分かってるの?」
ゔっ……流石リィナ。鋭いところをつくな……
「魔都……魔族都市は魔族が隠れ住む街。行き方は魔族しか知らないって聞いたけど……」
俺達の中じゃ魔族の血を引くレイアしか知る可能性がないな……まあ、そのレイアがいなくなってるんだが。
「済まないが、私も知らない。いくつか情報はあるが、行き方はな……」
博識なクロードさんでも知らないのか……
“申し訳ありません。私も”
“妾は知らんぞ! 当たり前じゃがな!”
ミアが申し訳無さそうに、そしてネアは(何故か)自慢気にそうつけ加えてた。ううむ、どうしたものか……
「心配するな! 儂がいるじゃろ!」
「!!!」
突然肩を叩かれ、一瞬心臓が飛び出すくらいに驚く。が、これは……
(全く気配を感じなかったに……)
いつも通りだが……まるで魔星将のようだ!
「師匠……毎度勘弁してください」
特に激戦を終えた後とかタイミングが悪すぎる。
「済まないな。本当は助太刀する予定じゃったんたが、予定外の事態が起こっての」
予想外……? いや、今はそれよりも!
「師匠、レイアが!」
「分かっとる。だが、話は歩きながらしよう。儂も話したいことがあるしの。魔都までは儂が案内する」
そう言うと、師匠は歩き始めた。これはついて来いということだ。
「じゃあ、クロードさん。落ち着いたら必ず戻りますので」
「ああ。びっくりさせられるように頑張って復興を進めておくよ」
頭を下げるリィナにクロードさんがそんな軽口を叩く。クロードさんなりの気遣いだろう。本当に出来た人だな……
「助けて頂きありがとうございました!」
「貴方がたは龍族の救世主です!」
起き上がれる龍人族の人達が口にする感謝を背に受けながら俺達は師匠の背を追う。後ろ髪を引かれることは多々あるけど、今は……
(先走るなよ、レイア!)
とにかくレイアに追いつかなきゃ! 今はまずそれを考えなきゃな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます