第100話 一撃の結末
(公認勇者イーサン視点)
サク……
なっ……聖剣エクステリアの先っぽが刺さるが、それ以上は全く剣が動かない。
(スキルか!……いや、こいつ、固有能力を持っているな!)
でなければ、俺の攻撃を受けてほぼ無傷だなんて有り得ない。
「イーサン、どうしたんだ!?」
仲間が声をかけてくる。が、正直今はそれどころじゃない!
「こいつ、ただの大王烏賊(クラーケン)じゃない! 特別な能力を持ってるぞ!」
「特別な能力……?」
俺の言葉に首を傾げるのも無理はないか。凡人には俺の第六感が理解できなくても仕方がない。
(こいつの固有能力をまず見極めないと……)
硬質化か何かダメージを減らす固有能力だろうが……
「ヤバい、狙われてるぞ!」
大王烏賊(クラーケン)の足は俺達の船に襲いかかろうとしている! 確かにあれを食らえばやばいな。
「避けろ! 早く!」
「は! いや、そんなこと言われても」
分からんないのか! あんなの食らったら船は最悪真っ二つだ。避けるしかないだろ!
(俺の聖剣エクステリアの攻撃を阻む固有能力……その正体さえ分かればダメージを与えられるのに! )
ザクザクザクッ!
突如、大王烏賊(クラーケン)の足に数本の杭が突き刺さる。チィィ、アリステッド男爵か! 余計なことを!
「アリステッド男爵の一番艦か? 助かった!」
馬鹿言うな! 横槍を入れてきた相手だそ!
(……待てよ、何であいつらの攻撃は通るんだ?)
おかしい……ん、まさか!
(こいつ、俺の攻撃だけ防いでいるのか!)
俺のやばい攻撃だけは防ぎ、致命傷にならない攻撃は受ける……なんて奴だ!
(かなりの知能……やばい)
俺だから気づけたこの事実……早く伝えないと!
「イーサン、バリスタだ! 早くしろ」
さっきのバリスタ攻撃を見て、真似しようというのか? しかし、奴は高い知能を持つ魔物……同じ手が二度目も通じるわけ──
「撃てっ!」
仲間の指示で放たれたバリスタは鋭い音と共に弧を描き……
ザクザクザク!
(五番艦から放たれたバリスタも大王烏賊(クラーケン)に突き刺さる。ということは……)
正解を得た俺の体に雷が走った!
(俺だけがマークされてる……そう言うことか!)
やはり高い知能を持つ魔物だ。いや、第六感と言うべきかもしれないが……
「どうした、イーサン! 早くバリスタを!」
仲間がそう急かすが、それどころじゃない。奴が俺の聖剣を怖がる理由、それは俺の聖剣による一撃が命を脅かす危険があるからだ。
(だったらすべきことは……)
※
(アリステッド男爵<フェイ>視点)
「第二射急げ!」
かけ声と共に急いでモリを装填する。バリスタは威力は高いが、再装填に少し時間がかかるのがネックだな。
(まあ、オレは楽に出来るけど……)
かなり力が要るとは言ってもオレのStrなら余裕なのだ。
「やっぱり早いわね」
そう言うとエーデルローズことレイアも既に準備を終えている。流石だな……
(五番艦と交互にバリスマを撃って気をそらしながら戦う……何とかなるか?)
本当は五隻でこれをする予定だったので心もとないが……
「発射準備!」
リィナが指示を出す。ちなみに、指揮を出す役割は全会一致でリィナに決まった。オレの名も上がったが、オレのパラメーターならバリスタで攻撃した方がいいと辞退した。
(まあ、リィナもパラメーターだけを考えたらバリスタを十分以上に扱えるけどな……)
だがまあ、視野の広さや機転、スキルによる掩護を考えると、指揮役が最適だろう。
「撃──」
ザッパーンッ!
リィナが指示を出そうとしたその瞬間、海中からもう一本の足が現れた!
「フ──アリステッド男爵、投げて!」
だてに兄妹はやってない。短い言葉だが、俺にはリィナの意図が伝わった!
ブンッ!
俺は近くにあったバリスタで撃ち出す用のモリを新たに現れた足へと投げつける! 咄嗟だったのでかなりの力がこもってしまったらしく、モリは弓矢をはるかに超えた速度で飛び……
ドォッゴォォォ!
轟音を立てて刺さったモリは何と大王烏賊(クラーケン)の足に大穴を開けてしまった!
「¢€$№!」
海から聞こえてきた奇声は大王烏賊(クラーケン)の悲鳴か!?
「第二射、撃て!」
間髪入れずにリィナの指示で最初に現れた足にもバリスタが刺さる。
「¢€$№!!」
さっきよりも悲鳴が大きいな!
(マスター! 下から来ます!)
下!? クソッ! 船を狙う気か!
ガツン!
何かがぶつかったような轟音……やられたか!?
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