第55話 豹炎悪魔(フラウロス)の影

【リーマス冒険者ギルド】



 その日の深夜、第四封印が破壊された。それにより俺は自分が見た夢がただの夢ではなく、封印からのメッセージではないかと思うようになった。


「だとすれば、今すぐ封印に入ってあいつを止めなきゃ!」


 当番を終えた次の日の昼、俺が見た夢のことを話すと、レイアは即そう言って来たのだが……


「いやだから、二人じゃ厳しいんだって」


 冷静に考えば考えるほど、あの声が言っていたことは正しい。


(封印の中は基本隠れる場所がないからな……)


 つまり、中にいる下級悪魔(レッサーデーモン)は全て倒さなくてはならなくなるということだ。しかも、今度は第一封印、第二部封印、第三封印、第四封印と進んで行かなくてはならないのだ。


「最低一人は後衛にいてサポートして貰わないと」

「けど、アテがないんでしょ」


 うっ……痛いところをつくな


「ないものは仕方ないじゃない。もしかしたら、レベルアップで覚えるかもしれないし。とにかく時間がないんだから」


 レベルアップで覚えるかもっていうのは場当たり的過ぎるな……


(でも時間がないのは確かだ)


 しかも、あの声が第四封印が破壊されたことで豹炎悪魔(フラウロス)の力の一部が復活すると言っていたのが気にかかる。


(封印の補修はミアにやってもらったから下級悪魔(レッサーデーモン)はリーマスに出て来てないけど……多分それ以外に何かがあるってことだよな)


 やはり二人では手が足りない気がするな……


「ジーナさんに相談してみよう」

「呼びましたか、フェイさん」


 わっ! ジーナさん!


「実は……」


 俺が事情を説明すると、ジーナさんは難しい顔をした。


「下級悪魔(レッサーデーモン)相手だと最低でもB級じゃないと厳しいけど、フェイの本当の実力を知っている人がいないしね……」


 そうだよな。E級の俺がA〜B級の冒険者に声をかけるってどう考えてもおかしいよな。


(アリステッド男爵の仲間っていうのも駄目だろうな)


 ジーナさん曰く、ハリボテの存在なのだ。一緒にいる時間が長ければすぐに正体がバレてしまうだろう。


(何を知られてもいい相手か……)


 そんな相手は家族くらいだろう。だが……


「とりあえず昼食にしましょ。お腹空いたわ」

「そうだな」


 俺が同意すると、ジーナさんが何かを思いついたように手を叩いた。


「せっかくだからリィナも誘って外で食べましょう」


 いいアイデアだけど、リィナの都合はどうかな?


「リィナもこっちに向かうって言ってるわ」


 え? 今どうやって連絡取り合ったの?


「良かった。いつもご馳走になってるし、今日は奢ろうかな」


 だが、レイアは何の疑問も持たなかったらしく、ジーナさんには何も聞かずに話を続けている。何で?





【赤煉瓦亭】



 道中、まるで俺達の居場所を把握していたようにリィナが合流し、全員でいつもの【赤煉瓦亭】へたどり着いた。


「ちょっと混んでるね」


 店に並ぶ列をみてリィナが少し驚いた声を出した。


(珍しいな……)


 人気はあるが、回転が早い店なので昼時でもあまり待たされないことが多いんだが……


「最近、封印がらみでリーマスに訪れる人が増えてるからじゃないかな?」


「え、そうなの?」


「フェイやレイアさんみたいに警戒体制のローテーションに入っている冒険者は気づきにくいかも知れないけど、封印の補修や封印内へ入るための準備をするために国中から人や物が集まってるの」


 万が一豹炎悪魔(フラウロス)が復活すれば、サンマーア王国としてもダメージが大きい……いや、最悪国が滅びる可能性さえある。そのため、国を上げた対策が取られているらしい。


「何だか怖いけど……みんなが力を合わせてるなら何とかなるのかな……」


「そうだよ、リィナ。大丈夫」


 不安げな声を出したリィナの手をジーナさんが握る。リィナを安心させるためにも早く解決しないとな。


「とりあえず並びましょ」


 レイアが最後尾に並ぼうとしたその時、突然空気が歪み、穴のようなものが現れた。


(何だ?)


 次に穴の縁に手がかかる。手と言ったが、それは明らかに人のものではない。だが、魔物というよりそれは……


(悪魔(デーモン)! しかも、下級悪魔(レッサーデーモン)じゃない!!!)


 俺はレイアに目配せを送ると共に〔超鑑定〕を発動した。



◆◆◆


 豹炎悪魔(フラウロス)の影

 Lv???


◆◆◆



 豹炎悪魔(フラウロス)? もしかしてコイツが第三封印が破られたことで出てくるっていう豹炎悪魔(フラウロス)の力の一部か!?

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