第27話 師匠の頼み
腕の立つ刀鍛冶といえば、俺は知るのは一人しかいない。リィナの世話はジーナさんにお願いして、俺は師匠のところへ向かった。
「早かったわね。こっちから乗り込んでやろうと思ってたのに」
師匠の家につくといつも通りレイアが出迎えてくれた。
「もういいよ」
俺がそう言うと、光と共にミアが姿を現した。人間の姿だと目立って仕方がないので移動中は剣の姿になって貰っていたのだ。
「わっ! あんたは……」
「フェイ様にミアと名付けて頂きました。宜しくお願いします、レイア様」
ミアは慌てるレイアに構うことなく、礼儀正しくお辞儀をした。
(まあ、ほとんど面識のない人間が急に現れたらビックリするよな)
レイアの言動はあまり礼儀正しいとは言えないが、正直彼女の気持ちは分かる。
「ほぉぉ! 聖剣じゃないか!」
「わっ!」
これはすぐ側に師匠の姿が現れたことに驚いたレイアの声だ。ちなみに俺はもう慣れている。
「これは相当高位な聖剣じゃな。大分消耗しているようじゃが」
師匠はミアをマジマジと覗き込んだり、服の端を触ったりと興味津々だ。
(……って、触っちゃ駄目だろ!)
俺が慌ててミアと師匠の間に入ると、ミアも師匠も不思議そうな顔をした。
「フェイ様、どうされたのですか?」
「どうって……師匠! いくら何でもやりすぎですよ、はたから見たらただの変態です!」
「フェイ、お前は何を言っとるんだ?」
「こっちの台詞ですよ、師匠!」
いくら師匠でも年端もいかない女の子を至近距離でまじまじ見つめたり、服を触ったりしたら駄目だって分かるでしょ!
「ああ、お前には聖剣が女の子に見えるんだな。ワシは魔眼持ちだがら、この剣の真の姿が見えるのじゃよ」
真の姿?
「流石フェイ様です。これほどの腕を持つ刀鍛冶とお知り合いだとは」
え、問題ないの? 分かってないのは俺だけ?
「師匠、いや、お爺ちゃん! いいわけ無いでしょ!」
「お、おう。すまん」
レイアに凄まれ、流石の師匠も少しバツが悪そうだ。弟子とはいえ、やはり孫には弱いのか。
「で、儂に何のようだ? 破損しているようには思えんが……」
「聖石を頂きたいのです」
「なるほど……じゃあ、フェイの聖剣になると?」
ミアが俺の聖剣に?
「それは……フェイ様のお心次第ですが……」
そう言うと、ミアは急に目を伏せた。一体どうしたんだろう。
「この聖剣はな、お前と共に居たいと思っておる。じゃが、今かなり衰弱しておるから、力を取り戻すためには色々とお前に面倒なことをさせてしまう。それを引け目に思っているのじゃ」
胸が締め付けられるような話だった。衰弱したのだって別にミアのせいではないだろうに。
「ついでに言っておくと、この間強くなるために状態異常対策をしたいと言っておったが、お前はlukが高いから元々状態異常には強い方じゃ。お前はパラディンなんじゃから強くなるためには聖剣を持った方が良いじゃろう」
そうなのか。
(まあ、それはこの際関係ないけど……)
俺は跪(ひざまず)き、ミアと目線を合わせた。
「俺と共に戦ってくれないか」
ミアの瞳から涙が一筋流れる。あわわ、何かヤバいことを言っちゃったかな?
「私の命が尽きるまでお供します。偉大なパラディンよ」
そう言うと、ミアは俺の手を取って口づけをした。え、どうしたの?
◆◆◆
聖剣フェリドゥーン=ミア=エルヴァスティを手に入れました
◆◆◆
あ、さっきのは儀式みたいなものなのか。未だにミアの唇の感触が手に残っていてドキドキするけど。
「で、聖石じゃが、残念ながら手持ちがない。採れる場所がないか探して見るからちょっと時間をくれ」
「分かりました。ありがとうございます」
「で、後はダンジョンコアについてだな」
おお、師匠本当に調べてくれたんだ!
「ダンジョンコアからはLvや経験値、もしくはダンジョンそのものに関わる装備品やアイテムを作れる。具体的にはLvの上限を上げるポーションや得られる経験値を増やす装飾品じゃな」
「なっ……」
ダンジョンコアからはそんなデタラメな物が作れてしまうのか!?
「しかし、作り方は分からん。預けておいてくれれば調べてみるが?」
「お願いします、師匠」
「代わりと言っては何だが、一つ頼みがあるんだが?」
え? 師匠の頼み……
正直師匠の頼みを聞いてろくな目にあったことがないんだよな……
「そんな顔をするな、フェイよ。ワシが今まで無茶な頼みをしたことがあったか?」
マジで……自覚ないんですか、師匠!
「別に大したことじゃない。レイアとパーティを組んでやって欲しいのじゃ」
え!? レイアとパーティを組むだって?
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