追放したら評判が下がるからという理由で迷宮の最下層へと突き飛ばされるが、そこでたまたま見つけたアイテムでクラスチェンジ!一気にパワーアップして全てを掴む。あ、非道な元仲間は全てを失い没落したそうです。

@akabanerobin2021

封印都市 リーマス

第1話 追放。そして……

【黄昏の迷宮15F 中層】


 トンッ!


 押された勢いは決して強くなかった。だから、発せられた音はごく僅か。だが、不意に押された僕はその力に抗えず、姿勢を崩し……


「っ!」


 更に運が悪いことにここは最下層に繋がる長い縦穴にかけられた細い橋の上。ラッキーだったのは片手を端にかけられたところくらいか。  


「ちっ、下手くそ」


 僕の所属するパーティ、『白銀の翼』のリーダーであるアバロンがそう吐き捨てた。


「た、助けてくれ!」


 だが、僕と視線を合わせようとする仲間はいない。『白銀の翼』での僕の役割は荷物持ちや雑用全般。何故かレベルが上がっても全然戦闘スキルを覚えなかった僕はパーティの中でそんな立ち位置にならざるを得なかったのだ。


(確かに戦闘の役には立ってないけど、僕の〔アイテムボックス〕のおかげで旅は楽になってるはずだし……)


 僕は〔アイテムボックス〕で食料や旅の道中で得られたドロップを保管するだけでなく、野営の支度や斥候など必要不可欠な役割も担っている。流石に見捨てられるようなことはないだろうけど……


「おい、事故に見せかけられるようにって言っただろ?」


「す、すまん」


 そう謝ったのは弓使いのアーチ。そう言えば、僕の後ろにいたのはアーチだったな。


「まあまあ。別に計画には支障ないでしょ」


 二人をとりなしたのは細剣使いの女剣士、エスメラルダだ。高名な剣士の末裔らしく、プライドが高いのが玉に瑕だ。


 ん? 計画……?


「何故だ? 確か使えないって言う理由でパーティメンバーを追放したら信用を無くす。だから、事故死させるんだろ?」


 重戦士のバルザスはパーティの壁。だが、脳筋で──って、おいおい、まさか


「……バルザス、つまりこういうことだ」


 アバロンがこめかみに指を当てながら、足を上げる。そして、そのまま……


「痛っ!」


 アバロンの足は何とか橋にしがみついている僕の手の上に落とされた!


 こ、こいつらマジで……


「この世はクラスが全て。なのに、お前のクラスはアイテム士とかいうクソクラスだ。今までは幼なじみのよしみで我慢してやっていたが、もう限界だ!」


 クラスが全てというアバロンの言葉は正しい。クラスによってステータス補正や上昇率、得られるスキルが決まるからだ。冒険者にしろ、一般市民にしろ、クラスが人生を決めると言っても過言ではない。だが……


「だからって殺す気か! 追放でも何でもすれば済む話だろ」


 手が痺れてきた……声も震える


「役に立たないなんて理由でパーティから仲間を追放すれば、俺達の信用はガタ落ちだ。分かるだろ?」


 分かるか! と叫んでやりたいが、残念ながらその余裕はない。手から指から急速に力が失わられて……


「さっさと落ちろ、バーカ!」


 アバロンの蹴りが頭に命中し、僕はダンジョンの最下層に繋がる穴へと落ちていく。


“明日は封印祭だから一緒にお祭りに行こうね”


 そう言って今朝家から送り出してくれた妹のリィナの笑顔が一瞬脳裏に浮かんだ。





【黄昏の迷宮58F 最下層】



「あたたた……」


 落下した痛みで体が動かない。いや、死んでないことを感謝すべきか


(高所から飛び降りたときのダメージを軽減するスキル、❲アクロバット❳がこんな形で役に立つなんて)


 いや、本当にラッキーならそもそもこんな目にはあってないか。


 大体〔アクロバット〕だって、アバロンから面白半分に突き飛ばされた時、たまたま無事に着地出来た時に覚えたスキルなのだ。


(とりあえずステータスを確認しておくか)



◆◆◆


 フェイ <アイテム士>

 Lv  21

 Hp 213/242

 Mp 147/147

 Str  136 

 Dex  69

 Int  28

 Mnd  70

 Vit  117

 Agi  48

 luk  115


 スキル 

 〔アイテム効果強化〕

 〔アイテム使用高速化〕

 〔アイテムボックス〕

 〔鑑定〕 

〔アクロバット〕


◆◆◆



 やっぱりHPはかなり減ってるな。僕は〔アイテムボックス〕からポーションを取り出そうとしたところではたと気づいた。


(あ……ない)


 いつもは僕が荷物持ちなのだが、何故か今日はアバロンが皆で分担して持つと言い出したのだ。なので今僕が持っているのは僅かな私物のみ。


(ドロップ品さえ持たされなかった。思えばその時点で怪しかったな)


 今更といえば今更ではあるが。


「くっそ―! 馬鹿にしやがって!」


 密かに復讐を誓うものの、当座の目的はまず地上へ戻ることだ。


(まずは安全を確保しないとな)


 まずは状況を確認し……うん、魔物の気配は今のところないな


(何か周りにないかな)


 周りを見回すと……あっ、宝箱!


(罠は……ないな。よしっ)


 中に入っていたのは……何だ? 魔除けの首飾りか?なにかの骨と黄・赤・緑の糸で編まれた糸で出来ている。


「こんな最下層で見つかるんだ。レアアイテムに違いない」


 いや、そうでなくては困る。僕は〔鑑定〕を発動させた。



◆◆◆


 託宣の聖印

  使うとランダムでクラスチェンジに必要な称号を 

 得ることが出来る。


◆◆◆



 なんと! 流石最下層! 今まで見たことがないようなレアアイテムじゃないか!


(クラスチェンジ出来るアイテムがあると聞いたことがあるが、それがこれか!)


 人により生まれつきクラスは決まっているが、まれに特定の条件を満たしてクラスが変わることがある。これをクラスチェンジという。


(戦闘向きのクラス、戦闘向きのクラス……)


 戦闘向きのクラスになれれば、もしかしたら最下層(ここ)からの脱出だって出来るかもしれない。僕は心の中で何度も祈りながら、託宣の聖印を使った。


 ピロピロリーン!


 アイテムを使用した時に出るいつもの効果音がなり、ウインドウが開く。そこには……

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