こちら聖ML学園ZERO

回転饅頭

1 冠城side

――また、吞みに行きましょうよ。音楽の話とか、しません?

 珍しい奴から誘いがあったと思った。そんな話をした翌日、そいつは俺の楽器店にやって来た。


「久しぶりです」

「こないだコンテストで会ったばっかじゃないか」


 芸能人とかでもないのに目深にキャップを被り、サングラスをかけている。ギターのコーナーに入っては手にもせずに首を縦に振っている。


「どうした?ハリー。いきなり」

「いや、ちょっと思い出話でもしたくてね。あ、そういやこのギター……」


 ハリーはうちで飾っているグレッチのホワイトファルコンを指差して言った。


「これ、八剣やつるぎセンパイが弾いてたやつだ」

「八剣かぁ、あいつ何してんのかなぁ」

「会いに行ったんですよ。こないだ。加須田かすたセンパイにもね」

憲誠けんせいにも?」

「えぇ。久々にバンドやってほしいですねって言ってきましたよ」


 人一倍プライドの高い憲誠が【お、いいね!】なんて言う訳はないよな。


「あの頃は【FLY】の独壇場だったんですよねぇ」

「あぁ、懐かしいねぇ……」

「冠城センパイ、まだドラム叩いてます?」

「そりゃあ、楽器屋だもん」


 俺はドラムセットに座る。実はエクササイズという名目でよく叩いている。腕は落ちていないハズだ。俺は軽くドラムを叩いてみた。客がこっちに一斉に注目した。

 こっちを見ているハリーは、あの頃と変わらない顔をしている。俺の記憶はあの頃に引き戻される。

――あの伝説と呼ばれた事件に。

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