想造召環騎士リア

@tuzihime

第壱話『失って気づくもの』

もう何年も前の話だ。突如として地球に降りたった人間を捕食する生命体【コロンゾン】。その脅威は人間兵器ではまるで歯が立たず、人類はただその生命体に屈することしか出来ずにいた…青く美しかった地球は黒く染まり、地上はコロンゾンによってほとんど占領され、人類は滅びのときを待つしか無かった…

しかし、コロンゾンの死骸が偶然みつかり、研究がすすみ、ついに体の一部を純粋な心を持つ子供…少女たちの脳に移植し融合させることで、コロンゾンに対抗する力を持つ少女たちが誕生した…人は彼女たちを魔法少女【想造召環騎士】と呼んだ。彼女たちは神との融合により姿を変え、コロンゾンと互角…それ以上まで闘うことが出来るようになった!人類は希望をもった!これなら勝てる!誰もが再びあの青かった地球をとりもどせる、そう確信していた…

…だが、そんな彼女達でさえ大型のコロンゾンにはかなわなかった……。戦闘経験の無い…ましてや少女たちが闘うのだ…いつしか少女たちは戦場からいなくなり…続けるものは死んで行った…そしてたった一人、生き残った召環騎士ががいた。彼女の名は…


「うっ……うぐぅっ……やめ……ろ。」


ベットと必要最低限のものしか置かれていない部屋で汗をかき苦痛の声を上げる少女…シーツが破れそうな勢いで握りしめ…息がどんどん荒くなっていく…少女は過去の夢を見ていた…過去の記憶が全て蘇り、悪夢となって自分の心を蝕んでいく…

これ以上……これ以上……っ!


「はっ!」


そして少女は目を覚ました。呼吸も荒くなっていて汗を拭おうとそでを引っ張るとそでまで汗をかいていてベタベタしていた…少女は深く溜息をつきシャワーを浴びる…水がしなやかな身体をなぞるように落ちていく…しかしその肌には大小様々な傷が残っている…痛みはしない…だがこの傷を見る度に昔のことを思い出しまた息が荒くなる…


「またあの夢を……」


二度と見たくない夢……しかし毎日のように見るこの夢…これは忘れてはならない…いや、忘れたくても忘れさせてくれはしない…この夢は私の罪…なのだから…


ーー


「おはよう!」


「おはよう!」


今日も挨拶が飛び交う校舎…天気は雲ひとつない晴れ、夏と言うにはまだ早い少し涼しいくらいの季節だ…。

私たちが今住んでいるのは私たちが昔住んでいた地上からかなり下の地下だ…地上はコロンゾンがうじゃうじゃ居て空気も悪い…私たちは地下で過ごすことを余儀なくされいた…しかしここはまるで地上のように太陽がちゃんとあつくて街並みも前のままだ。地下に住んでいるとはまるで思えない…そして後ろから何かが近づいてくるような音がした。


「おっはよう!リアちゃん!」


「あぁ、おはよう。」


この子は漣 涼寧(さざなみ すずね)ここに転校してから初めてできた友達だ…といっても、私が友達になりたいと言ったのではなく、漣の方が一方的に私に寄ってきたからそういうことになっているだけ…なのだがな。すると漣は話を始めた


「きのうね、テレビ見てたらさ!なんと私の好きな俳優さんが出ててさ!録画すんのなんで忘れてたんだって後悔しちゃってさぁ〜!」


「そうか…。」


「それでね、お母さんにその事言ったら録画してあるよーって!さすがお母さんだよねー!」


「それは良かった…。」


私は人と話すのが苦手で適当にうけながすからいつしか誰からも話しかけられなくなった。別に誰かといたいとか話がしたいというわけではなかったので特に気にはならなかったが…最近誰かといるのも悪くないと思えてしまう…こいつのせいだろうか?


「ん?なぁに?」


「…いや、なんでもない。」


私前を見て歩くと横からすごい視線を感じたのでぱっと横を見ると漣さんはニヤニヤしながら私のことをじっと見ていた


「…なんだ?」


「なんかうれしそうだね!いい事あったの!?」


「え?」


「だって少し口がにこってなってるから。」


嘘っ!普段は表情が完全に消している私がっ!そう思って自分の顔をペタペタと触っていると漣さんに爆笑されてしまった…


「あはははっ!いいじゃん顔がにやけてたくらいで!ほら!スマイルスマイル!」


そう言って私の頬を優しくつねった…そういえば昔誰かに同じようなことをされたな…っとその人物を思い出そうとした途端、過去のことをふと考えてしまい昔の記憶がフラッシュバックする!


「や、やめろっ!!」


私は思わず強く振り払ってしまった…漣さんは少し痛そうに手をさすっていた…はっ!と気がついた時にはすでに遅かった…私は何を…最低だ!


「す、すまない!私っ…」


「ううん…私こそごめんね…急に触られたから嫌だったんだよね!」


「いや…その…」


そんなことを話していると予鈴のチャイムがなり足早に漣さんはその場を去ってしまった…後でちゃんと謝っておかないと…


ーー

あのあと、謝ることが出来ずに放課後をむかえてしまった…さすがにやりすぎた…謝らないといけない。そう思って漣さんがいる隣のクラスに向かおうとすると…


「きゃああああ!!」


「!?」


女性の悲鳴が聞こえた…声の方角は漣さんのクラスだった!何事かとクラスに行きドアを開けた!すると血だらけの漣の姿があった…そして漣を抱き寄せて名前を呼び続けるクラスメイトの姿があった…私は過去に同じような経験をした…またあの夢とおなじ…


「漣…うそ…」


立ち止まってる暇はない!そう自分に言い聞かせて外を見ると2階のガラスに張り付いた蜘蛛のような怪物がいた…コロンゾンだ!どうしてこんなところに!?コロンゾンは基本地上にいて地下には出ないと聞いていたのに!!


「待てっ!!」


追おうとするがとにかく手当が先だ!そう思って漣を抱き寄せて走った!そして保健室まで運び、ベットに寝かせる…誰もいないことを確認する…そして首に着いたペンダントの宝玉を回す…すると紫の輝きと共にリアは魔法少女へと変身する…そしてすぐさま回復魔法をかける…想像以上に傷が深い…正直治るかどうか…


「…だ…れ?」


「話すな!」


魔法少女になると髪型と服装が変わるので気づくことは無いだろう…そう思っていると漣さんは私の目をじっと見つめてニコッと笑った


「リアちゃん…だ。」


「!?」


どうして!?声も少し違うしさっきも言ったように服装や髪も違う…なのにどうしてわかったんだ!?そんなことを考えていると漣さんは手を伸ばし私の頬に手を当てた


「さっきの…追わな…うっ!!」


「話すなと言っているだろう!!」


「ダメでしょ…追わなきゃ…」


「ダメだっ!!もう誰も死なさない!そう決めたんだ!」


そうだ、あの日誓った!もうこれ以上誰も死なせはしない!たとえ自分が死んだとしても!だからこそお前は死なせない!死なせる訳にはいかないんだ!


「私はもう助からな…うぐっ!!リアちゃんなら…倒せる…でしょ…」


「言うな…何も言うな!!」


「私の事なんかほって…」


「黙れ!!」


ダメだっ…血が止まらない…傷も塞がれない…心臓の音も弱くなってきてる…それにさっきから涙で前がはっきり見えない…


「わ…たしを…助けるために…たくさんの人が…死ぬのは嫌なの…それに…私一人か…大勢の人かって…選ぶまでもない…でしょ?だから…ね?」


「違うっ!そんなもの天秤にかけてたまるかっ!!私はみんなを守るために…この力を手に入れた!誰一人死なせない…死なせ…ないからァァ…」


「リアちゃん!!」


「!?」


漣さんは叫ん出しまった勢いで口から血反吐が出してしまったがそれを気にも止めず私の手を掴んだ


「リアちゃん…リアちゃんの手は…みんなを守るため…にあるんでしょ?だから…私の分まで…大切な人を守ってあげて…お願い…」


「…わかった。」


これ以上彼女の想いを無駄にしてはいけない…私は回復魔法をやめて彼女をゆっくり寝かせた。


「ありがと…ねぇ、リアちゃん…最後に聞いてくれる?」


「…なんだ?」


深呼吸して気を落ち着かせ彼女が小声で話せるよう耳を少しちかづけた。ありがとう…漣さんはそう言って話を始めた


「お母さんに…私…けほっけほっ!私を…うんでくれてありがと…って…お父さんには…ごはっ!」


「漣さん!!」


お腹がえぐられてるのに無理して話しているから!やっぱりダメだと思って手を出すがその前に漣さんは手を出し私を止めた…そして深呼吸をして言葉を続けた


「お父さんには…タバコの吸いすぎ…は…ダメだよって…あと私の夢を…応援するって…言ってくれてありがとうって…」


「あぁ…伝えておこう…」


「それとね…弟…には…私が死んでも…私はいつでも…そばにいるよって…」


「あぁ…伝えておく…」


「それとね…リアちゃん…がほっげほっ!」


「もういい!…もういいからぁ…」


私は抱きしめた…これ以上無理をしなくていいからっ!もう話さなくていい!だから…だからっ!もう涙が止まらない…泣き顔を見せまいと少し強めにしかし彼女が苦しくないように慎重に抱きしめた…


「リアちゃん…私の話…いつも聞いてくれて…ありがと…」


「私は…お前の話を真剣に聞いちゃいなかったんだぞ?私は…」


「それでも…嬉しかった…いつも私のそばにいてくれて…ありがと…」


「しぬな!漣…涼寧!!」


「やった…やっと…名前で呼んでくれたね…私の…夢…叶っちゃった…リアちゃん…私の大好きなこの街を…守ってね…」


ありがとう…そう言って彼女の手はだらんと下へ落ちて呼吸の音も聞こえなくなった…手が冷たくなり、昔の感覚を思い出す…そして彼女の中に悲しみと怒りが込み上げ…ただ彼女の名前を呼び続けた


「涼寧…?涼寧!涼寧ぇぇえええええ!!」


ーー

私は先程の蜘蛛の所へ…コロンゾンの気配は能力で気配が分かる…そして見つけた…まだ被害者は出ていないようだ…


「あぁぁぁぁぁぁ!」


蜘蛛は私に気づき糸をたばね、塊を飛ばしてくる…しかしまるでどこにくるか分かっているかのようにリアは避けつづけ距離をつめていく…そして槍を生み出し急所を見極めて一突きをいれる…蜘蛛は爆発とともに消え去ったそして小さな個体に分裂してしまった…


「……。」


そしてリアは蜘蛛の顔を見つけた…そして槍で刺しては抜き刺しては抜きを何度も繰り返していく…


「何死んでんのよ…まだ苦しみ足りないわ…殺す!殺す!殺してやる!死ね!しね!!死ねぇ!しね!しね!しね!お前らがいるから!お前らみたいな奴がいたから!!なんで!なんでなんだよ!!」


「リア!!」


後ろから自分の腕を掴む少女…振り払おうとしても振り払えない…魔法少女は肉体も強化されているので普通の女性に止められるはずがない…こいつ…魔法少女か!


「離せっ!まだだ!まだ私の怒りはおさまらない!!」


「もうそいつは死んでる!あとはウチらで回収する…これ以上刺し続けたら臭気で街がめちゃくちゃになるで!」


『リアちゃん…私の大好きなこの街を…守ってね…』


「くっ…」


リアは手を止めて変身を解いた…どうしてこんな時に彼女の言葉を思い出してしまうんだ…雨が降り注ぎ彼女にこびりついた返り血をおとしていく…そして彼女の泣き叫ぶ声だけが響き渡った。


ーー

翌日、ニュースでは学校にコロンゾンが出たという情報はながれず漣のことに関しては全く触れられずに終わっていた…世間は何事も無かったかのようにすぎていく…クラスメイトもまるで何も無かったかのように日々を過ごしていた…私はその空気が嫌になって学校を休むようになった…そして、前に1度だけ言ったのを思い出して漣さんの家に向かった


「あら?どなたかしら?」


「あの…漣…いや、涼寧の友達です。」


「涼寧?そんな子いたかしら?」


「は?」


何を言っているんだこの人は…家を間違えた?いや、そんなはずはない!確かにこの家だしこの人は間違いなく涼寧の親だ!


「ちょっと失礼する!!」


「あっ!ちょっとあなた!!」


母親の言葉も聞かず中に入って涼寧の部屋のドアを開けた!するとそこはものが置かれていた…まるで元からそこにあったかのように…


「どういうことだ…」


「もしかして、前に住んでた人のお友達かしら?ふふっ、これも何かの縁だし、少しお茶していく?」


『ここ、私の部屋なんだ!ちょっとちらかってるけど気にしないでね!えへへっ!』


『は、はぁ…』


私は覚えている…確かにちらかっていたが女の子らしい可愛い部屋だった…そして確かにこの部屋には彼女がいた…間違い…ないんだ…


「いえ…突然いろいろと申し訳ありませんでした…」


「どうしたの?大丈夫?」


「はい…」


帰る途中、リビングに置いてある家族が写った写真を見た…涼寧が写っていた部分だけ切り取られたかのように誰もいなかった…


「その写真いいでしょ〜!イギリスに行って家族みんなで撮ったのよー!」


「そうですか…。」


『わたし、イギリスにいったんだ!まぁ、イギリスって言っても地上の綺麗だった時のイギリスじゃないんだけどね!』


『ふふっ、海外旅行が好きだったんだな。』


『うん!いつか2人で1緒に色んなところ行こうね!』


『気が向いたらな。』


『何よそれー!やくそく!!』


『はいはい、やくそくな。』


家族みんな…ということは完全に彼女のことは忘れてしまっているのだろう…今までこんなことは無かった…私の周りには同じ魔法少女しかいなかったから記憶があると勝手に思っていたのか?…それとも裏で何かが…それならあの時ニュースで取り上げられなかったのも納得がいく。調べる必要があるか…


「今日はすみませんでした…」


「いいのよ!良かったらまた遊びに来て」


「は、はい…。」


漣家を後にし再び蜘蛛と遭遇した場所へ向かった…何も無い…もしかしたら夢だったのかもしれない…いや、ならこの記憶はなんなんだ…何か確証が欲しい…


「これって!?」


見つけたのは血痕…人のでは無い…人にしては血の色が濃すぎる…返信した時に使用した宝玉を取り出し吸収した…この血がもし人の血なら吸収しないはず…つまりこの血はあの蜘蛛の…


「…だれだ?隠れてないで出て来い…」


「よく分かりましたね。」


後ろを振り向くと少女がいた…年齢は私と同じくらい?そして首元に私と同じ宝玉を持っている…つまり私と同じ魔法少女…


「…この間の魔法少女か?」


「えぇそうですよ。」


「なぜ私の名前を知っていた?」


「うちのもんにあんたを知らんもんはおらんよ。一緒に来てもらおか?」


「…断る、といったら?」


「無理にでも連れてくよ?」


そういうと車が前後に止まり封鎖された…宝玉を構えると前後の4人が銃を向けた…ここにいる人たちを倒そうと思えば一瞬で倒せる…しかし私の力は人を守るためにある…


「わかった…ついていこう。」


「そうしてくれると助かるよ…手荒な真似はするなって上司にも言われてるし」


「……。」


「私はアーサー・エドワード・ウェイスティアよ!みんなからはティアって呼ばれてるわ。」


「…アレイスター・クロウリアだ。」


「それでリアなのね…よろしく。」

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