第4話 文章は語る(後編)
なんだと……?
【作品A】軍事SF
“「なるほど。中尉はそういうけれど、その可能性は低いんじゃないのか。とりあえず、実戦配備してみたまえ。君に期待しているのは戦果だ。わかっているな?」。総帥は言った。アルベルトは納得できなかった。けれど、これ以上はまずいと思って言い返さなかった。心の中では、このわからずやの年寄りめと言ってやったけれど。”
これが、吹奏楽部の女子・
そして、
【作品B】オフィスラブ
“時計を見ると、もう8時だった。仕事をやめて、帰っていい時間だ。しかし、
これが、バスケ部の男子・
さらに、
【作品C】格闘技
“稲妻が降り注いだ。「くそ……負けるもんか……!」俺は立っていた。どんな時でも、絶対に諦めない。勝てる可能性が1%でもあるなら、俺はそれに賭ける男だ。そうやって俺は、今日までまっすぐに進んできた。だから俺は、あの技を出す時だと思った。「くらえ、これが親父のハイキックだ!」死んだ親父から教わったハイキックを、サウザーはガード。そして言った。「笑わせるな。これがお前の親父のハイキックだと?」くそ、駄目か……そう思ったとき。「お前のハイキックは、お前の親父の何倍も強力だぜ……」なんと、そう言ってサウザーがふらついた。実況が言う。「ついにサウザーが倒れるのか!?」”
これが、
なんだそれ……
俺の予想と、全然ちがうじゃないか!?
というか……保谷来季でない誰かって……誰だよ!?
どこから出てきた!?
「碇……ずいぶんと面白いことを言うじゃないか。お前は選択家庭科より、小説家になった方がいいんじゃないのか?」
「いや、僕は……小説を書くのは……」
「ほほう? だったら、どうしてこの小説の作者がわかるって言うんだ?」
「それは、わかります。文章から、見えるから」
どの順番がわかりやすいかな……と、碇は顎に手を当てて少し考える。
こいつ、普段は頼りない男子100%だけど、こういうときの顔は少しかっこいい。
しかしエプロンに三角巾のため、ドキッとさせるには至らないが。
「じゃあ、順番通り【作品A】からいきます。Aを書いたのは、女子です」
「女子……つまり一人しかいない千賀三奈だって言うのか。吹奏楽部でテナーサックス吹いてる女子が、これを? ガンダムの番外編みたいな話を?」
「たぶん。先生、この文、何か気づきませんか」
「気づく? 気づくたって……会話文としてはぎこちない感じがする、というぐらいだが」
俺がそう言うと、碇は「やっぱり」と笑顔になった。
「それです。ぎこちないんです。総帥もアルベルト中尉も男ですよね。なのに、会話の中で『が』『だが』が使われていない。それどころか、地の文でも『が』『だが』が使われてなくて。その代わり全部『けれど』『だけれど』が使われてる」
あっ……
そうだ……
話し言葉は書き言葉に先行する。
「確かにそうだ……この男臭い設定の小説は、男キャラのセリフも地の文も、女子の話し言葉で書かれている」
「そうです。だから女子で、千賀三奈さん……だと思います。書き慣れてないと、こういうことが起きるんですね」
「あ、ああ……確かに、そうだな」
小説だからスルーしてしまったが……数年に一度は、指導していることだった。
高校の推薦入試の、小論文対策で。
日本の国語教育は、とにかく「書き方」を学ばせる機会が少ない。
作文の授業はほとんど小学生で終わるため、真面目に生きてきた中学生も高校生も大人も、機会を設けたり自主的に学ばない限り、その作文能力は小学6年生並で止まるのが普通と言ってもいい。よく初心者の小説が「中学生の作文」などと言われたりするが、それは普通なのだ。中学入学後、作文を教えてもらう機会などほとんど無いのだから。
それは、優等生でも例外ではない。
公立高校の推薦入試は「自己アピール」のみならず「小論文」が大きな採点科目になる。どうせなら大学のレポートや卒論でも困らないようにと「です、ます調」よりも「だ、である調」が望ましいとして教えるが、すんなりと習得する男子に比べて、女子は一つ苦労がある。「が」「だが」「だ」「である」のどれも、女子は話し言葉として遠いからだ。
うっかりしていたな……
そして、一本取られた。
碇は俺が納得した様子を見せたのが嬉しかったのか、小説として初心者ならではのミスに触れられて嬉しいのか、ニヤニヤしている。
「次、いいですか……?」
「あ、ああ……」
「次は【作品B】です。これは、もっとわかりやすいです。作者はきっと、背の高い男子です」
「は……?」
「『小さいのに、男たちに負けないように頑張るところがかわいいと思う』……これを読んだとき、僕は舞奈先輩というキャラクターが150cmぐらいの女性なのかなと思いました。……先生は?」
「俺は、160cmぐらいかなと思った」
そっか……やっぱりそれぐらいずれるんだ……と碇はうなずいている。
確かに、10cmも認識がずれている……
「でも、その次……『女子の中では背が高くてかっこいい系に見せようとしている先輩だけど』と出てくるんです。これ、
「確かにそうだな。書いてる間に設定がブレてしまったんだろう」
「その可能性もあるけど……僕は、そうは思わないです。これ、もしかしたら作者の中では成立しているんじゃないかなって」
「作者の中で……成立している……?」
「はい。舞奈先輩は女子の中では背が高い方。165cmぐらい? それ以上かも。 で、それでも作者にとっては『小さいのに頑張っている』と見えている……つまり、作者は180cmぐらいの高身長で、普段から女子をそう見ているんじゃないかなって」
「あっ……それで、男子バスケ部センターの……原田伶桜か!」
「はい。この文章、すごく特徴的だと思いました。だって僕……女子を小さいなんて思ったこと、一度もないし……」
俺は目の前の少年を見る。
碇の身長は、160cm台の前半。男子の中では小柄な方だ。
たしか今の中3女子の平均身長は、157cmぐらいだったはず。
つまり、碇と女子の目線の高さはほぼ変わらない。
碇にとって、女子とは「背の低い人たち」ではないのだ。
だが、バスケ部センターの原田伶桜は……
碇が推測した通り、180cm近い巨漢だ。
あいつにとって女子とは、常に下からぴょこぴょこ見上げるように話しかけてくる者たち……例えそれが、女子の中で高身長な方であっても……「小さくてかわいい人たち」なのだ。そういう普段のものの見方が、小説内に漏れ出ている。
「なるほどな……社会人が舞台の小説で『小さいのに、男に負けないように頑張っている』なんてのは確かに特徴的な表現だ。というか、かなり失礼なものの見方だな。やんわりと考え直すように指摘しておこう」
「はい。それが、作者にとってもいいと思います」
「よくわかったな……」
「僕にとっては……女子って、かわいいというよりも、怖いから……」
「お、おう……?」
「いや、男子と同じっていう意味で、です。怖い、じゃないかな……普通に緊張する相手……シビアなライバルというか……とにかく、役割的に僕の椅子を奪える人たち、です。そんな、女子を前にして『小さいのに頑張っててかわいい』なんて余裕を感じたこと、なかったから……やっぱり背が高い人は、そんな風に思ってるんだなぁって……面白かったです」
「みんながみんな、そうじゃないだろうけどな。バスケは特に身長が強さに還元される世界だ。原田はバスケの世界に長くいるから、何でもそんな風に見る癖がついたのかもしれない」
「はい、その可能性は高いと思います」
……とはいえ。
朽木は昔、他の中学で男子テニス部の顧問をしていたときのことを思い出していた。
他校への練習試合の帰り「どうしてみんな、あんなに性格が悪いんだろう」と腹を立てていた生徒がいたのだ。どういうことかと聞いてみると、他校への行き帰り、生徒たちは自転車で移動したのだが「みんなが立ち漕ぎをした」と言う。
それの何が問題なんだと聞くと「立ちこぎをすると足の長さがもろにわかる。自分は足が短いことがコンプレックスだ。立ちこぎをするのは足の長さを自慢したいやつらだけだ。堂々と立ちこぎをするやつらは、厚顔無恥にもほどがある」という超理論をぶつけられた。
後日他の生徒を個別に呼び出して「彼へのあてつけとして、立ちこぎをしたのか?」と聞くと、何のことだ、まったくそんな意図はない、見晴らしのいい道路だったからスピードを出そうと立ちこぎしただけだ……と当たり前のことを言う。朽木も、同意せざるを得なかった。自転車の立ちこぎは長い足を見せるため……という彼の解釈の方が、独特すぎると思ったからだ。誰も、そんなつもりで自転車を立ちこぎしない。
この時、朽木は思い知った。世界は、一人一人によってちがう意味で見えていると。
「じゃあ……最後の格闘技のやつを説明してくれ。誰だ。保谷来季じゃない誰かって。なんでそんなのが急に出てくる。なぜわかる」
「それは……ちょっとアンフェアだけど……いいですか?」
「いいも何も、本格ミステリじゃない。学校現場なんだ。必ずしもすべての
「あ、そっか」
あ、そっか……じゃないだろ。
お前は、本の世界に生きすぎている。
現実はそこまで、美しくないんだ。
「【作品C】を誰が書いたのかは、わかりません。男子だとは思います。でも僕は、保谷くんが【作品C】を書いてないのはわかるんです」
「どうしてだ」
「いや……保谷くん、阿久津くんと仲いいから。僕の前の席で、よく話してるんです。今書いてる小説について」
「……は?」
理科実験部の部長、保谷来季。
あいつと
いや、たしかにそうか。
阿久津は運動部系のグループには所属していない。
あいつはオタクっぽい「悪ふざけ」系のグループに所属している。
マッドサイエンティストとか好きだもんな、あいつ……
『完全洗脳マニュアル』とか『世界は3秒前にできた』とか、発表のたびに引用したがるし。今日だって、栄養ドリンクを混ぜて実験していたらしいし。
あれで「まっすぐな人間が好き」な
「それで、阿久津くんと保谷くんの会話が、たまに聞こえて……保谷くんは『異世界に転生して魔王になった俺が、各国の勇者たちにモテすぎて困る』っていう小説を、選択国語で書いてるって……」
「お、おう……ある意味大人しいというかマーケティング的に進んでいるというか……今のネット小説の流行、ど直球だな……」
「え……いや、けっこう昔……2年ぐらい前の流行ですけど」
「あのな、お前も
「ええええぇ……」
心底おぞましい事実を突きつけられたような声を発するな。
正直に言うと、5年前でも最近だ。
「大昔ですよ……」
「うるさい、しつこい」
「そんな叙述トリックがあったら嫌だなぁ……登場人物全員がおじさんで……みんな『最近の事件』について話してるんだけど、実は全部5年以上前の出来事とか」
「うーん……『とりあえず意外だったらいい』みたいな方向に進んでる、
「えぇ……ちょっと、そういうのは……先生、読みたいですか?」
「読みたくない。そんな叙述トリックは、読み手が十代じゃないと成立しない。俺には普通のことすぎるからだ。ほら、話を元に戻せ」
「あ、はい……【作品C】は、とりあえず異世界転生じゃないですよね?」
「そう見えるな」
「はい。ここ、『死んだ親父の教えてくれたハイキック』です。異世界で魔王に転生したのなら、死んだ親父というのは無いかなって……」
「魔王の父がハイキックを教えてたらシュールだな……」
「はい……それはそれで、読んでみたいけど……それに、主人公・死んだ親父・サウザーの関係性がわからないけど、『勇者たちにモテすぎて困る』ではないですよね……?」
俺はうなずく。
主人公『俺』とサウザーは、
「サウザーが、父親の
「えと……保谷くんは、単純に未提出なんだと思います。まだ書き始めてもないんじゃないかな。ずっと構想を練ってるって言ってたから」
書き手として、最も完成させられないパターン!
「……保谷が未提出なのはわかった。まあ『書いてる所まで出せ』だから、『0ページを提出した』ってことで、書いてなくても未提出にはならないみたいな叙述トリックは成立するがな……」
「えぇ……それはただの屁理屈では……」
「中学生を相手にしてると、屁理屈は無限に
「大変ですね……先生って……」
同情された……
「で、最後の謎だ。この激烈バトル【作品C】は何だ。だれがこっそり投稿した」
「……たぶんですけど……選択国語に、スポーツができる男子、いませんか」
「ん……それなら小説チームに一人いるが……一人で二作提出したってことか?」
「いや、そうじゃなくて……自己アピールチームに」
「それなら……一人いるな。帰宅部の
「やっぱり。伊東くんじゃないかなって思います。彼、帰宅部だけど、それは格闘技を習ってるからって、噂で聞いたことがあります」
「自己アピールチームの伊東が、小説を書きたくなって書いたってことか」
「あ、いや、だから……先生、よく見てください」
「んんん……?」
俺は目を細めて作品Cをじっくりと読む。
【作品C】
“稲妻が降り注いだ。「くそ……負けるもんか……!」俺は立っていた。どんな時でも、絶対に諦めない。勝てる可能性が1%でもあるなら、俺はそれに賭ける男だ。そうやって俺は、今日までまっすぐに進んできた。だから俺は、あの技を出す時だと思った。「くらえ、これが親父のハイキックだ!」死んだ親父から教わったハイキックを、サウザーはガード。そして言った。「笑わせるな。これがお前の親父のハイキックだと?」くそ、駄目か……そう思ったとき。「お前のハイキックは、お前の親父の何倍も強力だぜ……」なんと、そう言ってサウザーがふらついた。実況が言う。「ついにサウザーが倒れるのか!?」”
あ……
えっ……
“どんな時でも、絶対に諦めない。”
“勝てる可能性が1%でもあるなら、俺はそれに賭ける男だ。”
“そうやって俺は、今日までまっすぐに進んできた。”
もしや……これ……
ハッとして顔を上げた俺に、碇は、言いにくそうに言った。
「自己アピールだと思います……」
この文章
自 己 ア ピ ー ル だ っ た の か!
大尊は名前も書かず自己アピールを書いて……
左右の提出BOXを間違えて、小説の方に入れたのか!
俺は碇に待てと言って、提出BOXに向かう。
自己アピールの箱を開けると、ペラペラのA4用紙がずり落ちてきた。
1、2、3……9枚。
1枚足りない。
そして足りないのは……伊東大尊の名前が入ったものだった。
「あ、はは、ははは……」
俺は崩れ落ち、乾いた笑い声を上げることしかできなかった。
「なんていうか……申し訳ないです……伊東くんに」
「ま、まあ、な……でも、試験官や面接官に読まれるよりは……良かったんじゃないか……あはははは……」
「……伊東くん、サウザーに勝てたのかな」
「気になるよな」
「はい……かなり……」
習い事に精を出すような帰宅部の生徒たちは、その功績が
伊東が格闘技ですごい功績を残せていても、教師の目からすると「帰宅部」だ。
サウザーが伊東の父のハイキックを受けたことがあるというのなら、子供ではないだろう。大人と戦ってダウンを取ったのなら、大したものだ。というか、サウザーって本当に何者だ。
これにて、一件落着、か……
「……大したもんだな、文章だけから、書いた人間の性質を見抜いて当てるなんて」
「いや、まだ当たってるとは……」
「当たってるよ。教師としての中学生を見てきた俺の勘が、そう言ってる。言われてみれば、SFは千賀っぽいし、オフィスラブは実に原田らしい」
「あはは……当たってたら……いいなって思います」
碇は視線をそらして、頭をかく。
こいつの文章を読む力は……悔しいが、俺以上だ。厚みがちがう。
あと、俺は中学生たちが書く
やはり、本を読まねばならない。
目の前の、こいつみたいに。
「……やっぱり惜しいな。カップケーキを作るなとは言わんが、お前こそ小説を書くべきなんじゃないのか」
「読むのが好きなのと、書けるのは……ちがうと思います」
「なんでそう思う。
「……
「お、おい……知ってるのかよ……」
こいつ……
小説を書くための本を、読んでいるのか?
俺が学生の頃に読んだような、古いものまで。
碇、お前はやはり、小説を書く気が――
「先生、『デスバ島』って、知ってますか?」
「へ?」
デスバトウ?
「なんだそれ……デス罵倒って……純文学か?」
「いえ、ネット小説です。僕がよくしてもらってる、ネットの読書サークルみたいなので、最近話題で……」
ネットの読書サークル……
なるほど、碇はそういう居場所を持っているのか。
こいつのことだから年齢は隠しているだろうが、それでも碇が「同族」との交流があることに少し安心した。
……そのサークルの中でも、碇は長老役ではないかと思えてしまうのが、こいつの底知れないところだが……
「ネット小説って……お前が仲間と認める人たちだから、みんなそれなりの本読みなんだろ? そんな人たちが、ネット小説を話題にしてるのか?」
「そう。そうなんです。僕も最初は、正直、興味が薄くて。でもかなりすごい本読みの人……どんな作品も基本的に褒めない人が『よく読むと、こっそり褒めている』感想を書いていて……驚いたんです。それで読んでみたら……すごく面白くて……」
「そんな作品があるのか。ふーん……世に出るかもな」
「はい。完結したら、きっと」
「まだ完結してないのか?」
「はい。4月の半ばから、すごいペースで更新されてて……あと少しで完結だと思います」
碇はそう言うと、先ほどまで難題として存在していた小説の原稿に目をやった。
「……今、選択授業って5回目ぐらいですよね」
「ああ。四月半ばから始まって、ゴールデンウィークと中間テストを挟んで……5回目だな」
「5回目で……それぐらい……A4用紙5枚ぐらい。それが、普通ですよね」
「そうだ。読書感想文を思い出せ……って、お前はあてにならんか。読書感想文の原稿用紙1枚で、ちゃんとしたものにしようとすると、大抵の中学生は3日ぐらいかかるんだ。一週間頭を悩ませるのも普通だ。作業の重さとしては、自由研究と同等ぐらいに思われるのが、読み・書くという作業だ。大学生のレポートでも、慣れてないやつは数枚のレポートに二週間ぐらいかかる。人に見せる創作物語となったら、なおさらしんどい。世界とドラマの構築だからな」
「……デスバ島、正式なタイトルは『デスバトルアイランド~2名生存~』。これを書いているのは、中学生という噂があります」
「……なに?」
「毎日、A4用紙なら4枚……紙の小説なら8ページほどの文量が、更新されるんです」
それなら……
1ヶ月で240ページ。
1ヶ月で、薄めの小説一冊じゃないか。
そういう速筆自慢の作家も、いないことはない。
筆の速さにおいて、業界トップと目される作家たちだ。
だが、中学生……それも、碇や碇が一目置くような相手から面白いと言われるものを書いているとしたら……
「本当に中学生か? 正直、それって……中学生を
碇はうつむいて、首を振った。
「いや、毎日来てるんです。授業中は、よく寝てるけど……」
「来てる?」
「……先生、あとで、検索してみてください。面白い本が読めると思います」
碇は思い切った様子で、そう言った。
そして、ぺこりとお辞儀をして、両手で持っていた盆に頭をぶつけて「いたっ」とか言って、そそくさと職員室を出て行く。
あ、まて、まだカップケーキと名推理の礼を言っていない……
引き留める間もなく、碇は出ていった。
なんなんだあいつ……
全国には、あいつがびびるほどの中学生がいるっていうのか……?
俺はスマホを取り出す。
俺はやっと慣れてきたフリック入力で、『デスバトルアイランド』を検索する。
検索のトップに、タイトルと小説投稿サイトが出てきた。
俺はそのリンクをタップする。
そして出てきたページは――
【デスバトルアイランド~2名生存~】
ステータス:連載中
文字数:278,371字
<作品紹介>
中学3年生の1クラスが、無人島でデスゲームをさせられる。
一人一人に、当たり外れのある武器が渡される。
今回は、二人まで生き残っていい。
学級委員長・
あなたなら……自分の他に、誰を残しますか?
作者:
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