二刀流武器が実装されゲーム配信だけでは食えなくなった僕は二刀流を目指すことにしました
明石竜
第1話
二刀流武器実装決定!
とあるソシャゲの一周年記念直前生放送にて、そんな告知がパソコン画面上に流れ、
「うおおおおおーっ! 来た来た来たぁーっ! ぃやっほぉぉぉい! ヤバイヤバイヤバイ。攻撃力インフレやん」
とあるゲーム配信だけで生計を立てているおっさんがハイテンションで叫ぶ。
個性ある多数の女の子達が共に助け合い、じゃれ合い、時にはケンカもしたりして
魔物と戦うRPGで、キャラガチャと武器ガチャがあり(召喚に使う石は共通)、
イベントごとに期間限定で開放され討伐すると豪華報酬が貰える強敵ボスは、そのイベントで実装される最高レア、星5のキャラに星5の武器を装備させて戦うと有利になることがデフォな、課金圧のやたら強いソシャゲなのだ。
生放送に出演していた若手人気女性声優さんから二刀流武器の詳細が伝えられると、
「武器二本実装だけど、やっぱ武器ガチャ一本ごとに別々のガチャかよ。いやマジで財布が飛ぶやん」
配信者のおっさんは困惑しながらもめちゃくちゃ楽しそうに呟く。
他の生放送視聴者からも【搾取キターッ!】【財布が、財布がーっ!】
【課金圧ますます強くなったな】【無課金微課金はもうついていけないな】
などのコメントが添えられた。
そしてその一周年記念イベント当日。
開始時刻の正午、配信者のおっさんは新規実装星5キャラと二本の星5武器、
全部揃うまでガチャ回すライブと称して生放送配信開始。
お目当ての武器とキャラの提供割合ははピックアップ対象といえども1%。
今回はアニバーサリーイベントということで期間限定。
配信者のおっさんは普段のイベント以上にテンションが高まっていた。
初回10連!
星5武器、一本も出ず。最低保証の恒常星4武器一本だけ他9本全部低レアの星3。
「次回は頑張ります。また、いつでも来て下さいね」
召喚を司る女の子に嘲笑われるような言われ方をされ(実際そんなつもりはないだろうが配信者のおっさんはそう感じていた。)
「次回じゃなくて今回頑張ろうよ」
配信者のおっさんはちょっぴり嘆き気味に呟く。
その後もお目当ての武器が引けず、
「星5来たぁ。いやそれちゃうから。もう持ってるから」
星5は何回か出たものの、提供割合0.03%未満のピックアップ対象外恒常武器がすり抜け。
「250連目、天井いったぁ! いっちゃいましたーっ!」
配信者のおっさんは嘆きながらそう叫び、手持ちの石も尽きたので
50連ちょっと回せる一周年記念期間限定お得な割引有償石一万円分をクレカで課金してしまった。
そしてガチャ再開!
またしてもお目当てのピックアップ武器が一向に出ず。
割引石も尽きて、恒常で販売されている30連ちょっと回せる一万円分の有償石
にも何度か手を出してしまう。
「二連続天井いきましたぁ~。あぁ~!」
見事爆死である。
「せめてキャラの方は初回か2,30連で出てくれよ。頼むでマジで」
そっちも見放されるように出なかった。結局天井近くの244連かかってしまった。
さて、なんとかお目当てのキャラと武器が引けたのだが……
配信者のおっさんはガチ勢の手前、ここでは終われず。
【ここでやめちゃダメだ】【重ねろ】とかの視聴者からの応援というより煽りの
コメントも相まって、同じ武器、同じキャラを各々5回出して最大限界突破させ
最強スペックにするために、さらに武器ガチャとキャラガチャを回し続ける。
「今月の食費も家賃もマジヤバい」
配信者のおっさんは時間にして十数分で、金額にして数十万、国立大学の初年度納入金にも匹敵するような額がふっ飛んでしまったのだった。
「後悔はしてません。イベント頑張ります。皆さん、ご視聴ありがとうございました。良い子はこんなガチャの回し方、絶対真似しちゃダメですよ」
悲しさも嬉しさもまじったかのような笑い声でそう呟いて、配信を終えた。
配信者のおっさんはゲーム配信だけの収入ではこのソシャゲをガチでやるには全然
足りないとないと痛感させられたので、今回実装されたのと同じ薙刀とサーブルを職務上、ひょっとしたら部活指導で使うかもしれない高校教師との二刀流を目指すことにしたのだった。
☆
「高校教師なんて今さら簡単になれるもんじゃないよね。僕一応教員免許持ってんだけどね。やっぱ引き続きゲーム配信専業でやっていくことになりました。というわけで、これからもどんどん配信していきますので、皆さんぜひともチャンネル登録お願いします」
二刀流武器が実装されゲーム配信だけでは食えなくなった僕は二刀流を目指すことにしました 明石竜 @Akashiryu
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