第二十九話 地上に出て
キヨズミと『
「で、これからどうする?」
「とりあえず……この子達を親御さんの元に戻す」
五人の児童を担いで部屋を出て(拘束されていたはずのケイティとロランの姿はなかった。二人がいた場所の床が抜けていたため、恐らく、キヨズミが逃げる時に、二人の拘束を解いたのだろう)途中、『
「後始末はあたしがするわ」
「そうか――何か手伝うことは?」
「……あんたは何もしなくていい」
地上に出てすぐ近くにあった河川敷に結界を張って、その上に未だ眠っている子供達を寝かせた佐々木は、彼女達の寝顔を見て言った。
「ここまで大きな事件になったら、警察の相手もしないといけないし――何もしなくていいわ……あんたが絡んで、事態がややこしくなっても面倒だし。あたし一人でする」
「……そうか」
「うん」
力なく頷くと、佐々木は『変身術』を解いた。
彼女はいつも着ている、どこの学校かわからない制服姿になる。
と――そこで着信音がした。
俺のスマホの音じゃなかったため佐々木の方を見ると、彼女はスカートからスマホを出した。
画面に名前は登録されていない――しかし表記されている番号を確認すると、佐々木は通話ボタンを押してスピーカーにした。
『俺だ』
『
『お前ら今、どこにいる?』
「えっと……河川敷です。子供達を連れて外に出たところで」
『そうか』
淡々とそう言う『
『キヨズミは死んだ』
「そうか」
別に『
「キヨズミを殺したのか……じゃあ、これで一件落着か?」
『俺じゃねえ』
「は?」
『だから俺じゃねえんだ』
『
『逃げたキヨズミは発見した――だが俺が追い付いた時にはもう、やつは死体になっていた』
「………」
『バラバラの死体だ』
『
『お前らが外に出る時、『
「……どうって、別に」
「――まさか」
佐々木は何かに気付いたみたいだった。
その声と表情で――俺も気付いた。
『……今、その通路にいるんだがな』
『
『全員――バラバラにされている』
「…………」
『バラバラにされちゃあ、さすがの『
「一体……誰がそんなことを?」
『さあな――それはわからねえ』
佐々木の疑問に、『
『が……確実に並の魔術は使われてねえな――『
「…………」
「…………」
『まあいい』
俺達が黙っていると、『
『佐々木――お前、ガキ共を全員、家まで送り届けようとか……考えているだろ?』
「……え、そうですけど?」
『やっぱそうか――じゃあそれはやめろ』
「え?」
『やめろっつったんだ』
『
『ガキ共は掛けられた魔術を解いて、人気の多いところに放置しろ――公園や駅前……まあ場所は交番の前でも……どこでもいい。ガキ共を警察に保護させろ。あと、お前の姿は誰にも見られないようにしろ――確かお前、認識阻害の術式を持っていたよな? それを使え。いいか――お前の姿は、ガキ共にも見られないようにしろよ』
「な、なんでですか⁉ そんなまだるっこしいことしなくても、あたしが直接みんな家に届ける方が、確実に安全で――」
『だめだ』
反論する佐々木の声を、しかし『
その声に思わず、佐々木は黙る。
……スマートフォン越しに――無機質な声で。
『今回の件は……被害がでかい』
白い吸血鬼はこう言った。
『隠蔽に時間が掛かる』
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