第二十五話 屍者の軍勢
『今すぐ喫茶店にこい』
スマホの通知音で目を覚ますと、『
『死体使いが誰かわかった』
八月一四日、午前九時。
いつもの喫茶店に到着してドアを開くと、店内にはすでに佐々木と『
俺は二人に近付いて、席に座りながら言った。
「死体使いが誰かわかったって――本当か?」
「ああ」
ブラックコーヒーを飲んでいた『
「死体使いは
初日に見せた清純の写真を出しながら、『
「清純・J・コンダー――『ロンドン教会所属魔術学校』に属する魔術師で、岸が任務に連れて来た助手の一人。学校の成績は優秀でどんな魔術もそつなくこなすが、一番得意なのは人体の傷を癒す『回復魔術』……現代医学にも通じ、魔術を用いなくても傷を癒す技術を持つことと、普段から真面目な態度で勉学に励み、岸のお気に入りだったことから、今回、岸をサポートするヒーラーとして選ばれたみたいだ」
『
「学校外で任務を遂行するのは今回が初めてらしい……キヨズミ本人の経歴は平凡。目立った功績も実績もなかったが……家系を確認したところ――こいつの父親は現役の『粛正者』だということがわかった」
「……『粛正者』って――あの『粛正者』ですか⁉」
そんな驚くことなのか、佐々木は『
俺はわからなかったから訊いた。
「なんだよ――その『粛正者』って」
「『教会』の暗部の中の暗部。『異端殺しの異端』と言われる部署――それが『粛正者』だ」
訊くと、『
「奴らは『教会』の中でもかなり特殊でな。異端を殺すためなら『異端とされる魔術の研究、使用を許可されている』んだ……つまり、『教会』にとって最大の禁忌である死者――死体の操作も許可されている。
『
「術式名『
「……ん? 開発者は父親なんですよね?」
「ああそうだ」
「……なのに、息子のキヨズミが犯人なんですか? 父親が息子に化けているとかではなく?」
「違うな――息子のキヨズミで間違いない」
「……どうして断定できる?」
佐々木の疑問は俺も抱いたところだったため、質問すると、『
「キヨズミの父親であるキヨシは、『
「…………」
「……理由はわからねえが――キヨズミが父親から『
「じゃあ……岸がキヨズミに協力している理由はなんですか?」
佐々木は更なる疑問を訊いた。
確かにキヨズミが父親から術式を奪って事件を起こしているとしても、岸がキヨズミに協力する理由は一つもない。
それについて『
「それも簡単だ――『
「……それって、つまり――」
「ああ――十中八九、岸は殺されている」
淡々と、『
その顔から感情を読み取ることはできなかった。
何も思っていないわけではないだろう。
しかし抱いている感情を――『
「別に岸だけじゃねえ――ケイティ・ジェーンとロラン・バジュラール……岸に選ばれたほかの部下二人も……たぶん、キヨズミに殺されているな」
「そんな」
「……こっちで起こっている事件も、『教会』には知らせてある。結果――八月一四日、日本時間で午前七時一〇分。『教会』のトップであるローマ教皇は、清純・J・コンダーの破門を決定。……同時に、キヨズミの抹殺を俺に依頼して来た――だから俺はこれから、キヨズミを殺害するために動くが……お前らはどうする?」
「手伝う――手伝うに決まってます」
「そうか――お前は?」
「……俺は別に、キヨズミの命とかどうでもいいけど」
俺は言った。
「けど死体使い――キヨズミは俺の生活を侵害して来た……その落とし前は付けさせる必要があるな」
「……付いてくるってことでいいんだな?」
「ああ――キヨズミの居場所は?」
「捕捉済みだ」
まるで俺と佐々木がそう答えるとわかっていたように、『
「お前らが帰ったあと、俺も別に休んでたわけじゃねえ……死体使いが誰かは『教会』から報告がくるまでわからなかったが……誰でもいいよう、街に『目』を増やして、万が一でも逃げられねえよう『策』は打っておいた――佐々木、地図を出せ」
「どうぞ」
佐々木が出した地図を――『
そして眺めると――ある一点を指差す。
「ここだ」
『
「この地下に――キヨズミはいる」
そこは街の外れだが。
どこにでもある道路だった。
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