112.宣言

 ――ずううぅぅぅぅん。


 シェイルフィードが倒れたことで、俺は余裕をもってコメ覧に視線を向けた。すると――


『――うおおおおおおおおぉぉおおぉぉっ!』

『――始祖竜シェイルフィードを圧倒かよ!』

『――ゴールドなんて目じゃねえな!』

『――俺、レヴォのチャンネルに乗り換えよっと!』

『――俺もだ、俺もー!』


 どうやらゴールドチャンネルを見ていた奴らがこっちに流れてきていたみたいだな。……よしよし、予想通り。


「皆さん、お疲れさまでした。というわけで、始祖竜シェイルフィード討伐のゲリラ配信は終了しま――っと、おい!」

「やっほー! みんなー、お疲れさまでしたー!」


 リンの野郎、いきなり出てくるんじゃねえよ!

 エリザは……まあ、出しゃばらないよな。


『――レヴォのパーティメンバーかー』

『――女の子ばっかりって、いいなー』

『――フィーちゃんというものがありながら!』

『――次の配信はいつですかー?』


 リンをカメラから遠ざけようとしたのだが、『次の配信』というコメントを見て、俺はふと考えてしまう。


「……よし、決めた。次の配信なんだが」

『――おっ! いつだ、いつだー?』

『――絶対見るから早くしてくれー!』

「……次の動画でアップしようかな」

『『『『――ええええぇぇええぇぇっ!?』』』』

「ええええぇぇええぇぇっ!?」


 まあ、そういう反応になるよな。……ってか、なんでリンまで同じ反応なんだよ。


「まあまあ、落ち着いてくれ。言っておくが、ものすごい暴露と合わせて発表するからな? 楽しみしておいてくれ」

『――その動画はいつアップするんですかー?』

『――それそれー! アップされる日を教えてくれよー!』

「そうだなぁ。……うん、明日だ。明日の12時にアップしよう。それまでは楽しみに待っていてくれ」

『『『『りょうかーい!』』』』

「リンには先に教えてねー!」


 ……こいつ、鋼のメンタルだな。


「……そ、それじゃあ、また明日」

「みんな! バイバーイ!」

『――もう一人のメンバーからも一言!』


 おっと、エリザのファンもいたみたいだ。


「エリザ」

「え? あの、その……えっと、それでは、また今度」

『『『『……か、かわいい!』』』』

「ちょっとー! リンはどうなのよー!」

『『『『かわいい!』』』』

「ありがとー!」

「……はぁ。それじゃあ本当に、また明日だ。配信終了」


 ……よし、終わりだ。


「おい、リン!」

「えへへー! かわいいんだってー! やったね、エリザさん!」

「えっと、その、私はレヴォ様にだけ見てもらえれば……」

「ん? 俺がどうした?」

「な、なななな、なんでもありません! 失礼しました!」


 いや、別に謝らなくてもいいんだが。

 とはいえ、リスナーに宣言してしまったのだから、これで終わりというわけにはいかないか。


「それはそうとレヴォさん。いったい何をするつもりなんですか?」

「暴露と申しておりましたが、まさか?」

「あぁ。リンにも伝えておくか」

「なんですかー? ものすごい暴露なんですよねー!」

「俺、ゴールドの本当のユーザーだ」

「ちょっとのことでは驚かない…………おどろ……かない……い?」


 ……あれ? リンの動きが、止まったなぁ。


「なあ、エリザ。リンの奴、どうしたんだ?」

「いきなりの暴露で驚かれたんじゃないでしょうか?」

「あー、かもな。セカンドキャラだが、それでも従っていた相手だもんなー」

「……はああああぁぁああぁぁっ!? うそ、本当なの! うっわー、感動だわー!」


 おっと、すぐに再起動したようだ。

 だが、なんだろう、これ。感動っていったい?


「ちょっと、リンさん! レヴォ様の隣にいるのは私なんですからね!」

「えぇー? でも、本物のゴールドがレヴォさんってことなら、私だって隣に並びたいですよー!」

「ダメです!」

「それならリンは左でいいですからー、エリザさんが右ですねー!」

「ちょっと!」

「はいはい! ストーップ! そんな意味のない問答や止めろ!」

「「意味はありますよ!」」

「……お、おう? そう、なのか?」


 どうやら俺には全くわからないところで、二人はヒートアップしているらしい。

 ……っていうか俺、明日の動画準備をしたいんだけどなぁ。

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