92.神木の根を食らい進化した悪魔

【■発展クエスト:神木の根を食らい進化した悪魔 ■クリア条件:ボスモンスターの討伐 ■クリア難易度:S ■クリア報酬:神話級装備ランダムBOX ■※このクエストは強制参加です】


 足を踏み入れた途端、クエスト発生のウインドウが表示された。

 そこで俺の目を一番引いたのが――


「……き……キタアアアアァァアアァァッ! 神話級装備ランダムBOX!!」

「うそ、ですよね? これ、本当ですか?」

「ヒャッホー! 神話級装備がそのまま手に入るだなんて、今日までワンアースをプレイしていて見たことないですよー!」


 俺だけではなく、エリザやリンも驚きの声をあげている。

 リンが言ったように、神話級装備は基本的に素材を集めて作ることで手に入れるとされている。

 しかし極稀に、今回のように完成した神話級装備を手に入れられるクエストもないわけではない。

 だが、俺もゴールド時代に一度だけしか出会えておらず、それ以外の神話級装備は全て素材から作ったものだった。


「まさか、まだまだ序盤の都市の近くで神話級装備を手に入れられるクエストに出会えるとはなぁ」

「この情報、私たちが初めてなのでしょうか?」

「ゴールドさんは何も言っていませんでしたよー?」

「たぶん初めてじゃないかな。俺も知らなかったし」


 そもそも【神木の根を食らう悪魔】のサブクエストの情報も俺くらいしか知らなかったはず。

 その俺が知らないのだから、ゴールドの過去データで情報を仕入れている御曹司野郎が知っているはずもない。

 それにこれは発展クエストだ。おそらくは攻略されれば消滅する類のクエストに違いない。

 誰かが遭遇して失敗し、情報を秘匿していたという可能性もあるにはあるが……その場合、これまでずっとクエストが残っていたということが気に掛かる。

 あり得ないくらい強いボスモンスターがいるという可能性もあるが……いいや、ないだろう。

 発展クエストの条件を満たすのは結構難しいものだ。

 そして、それを達成できるだけの実力を持ったユーザーであれば、最初は失敗しても後に強くなって戻ってくるに違いない。

 だからこそ、このクエストは正真正銘、まだ誰にも見つかっていないクエストで間違いないはずだ。


「サブクエストについてはゴールドも情報を持っている。発展クエストに繋がる条件がはっきりしていない状況では、失敗するわけにはいかないな」

「そうですね。デスペナルティは24時間のログイン不可」

「その間にかすめ取られたらやっていられませんもんねー」

「その通り。だからこのクエスト――一発で成功させるぞ!」

「「はい!」」


 俺の言葉にエリザとリンも気合いのこもった返事をしてくれた。

 ……あれ? なんか俺、リーダーっぽくなってないか? それにパーティを組んだ覚えもないのに、なぜか勝手にパーティになっていないか?


「……なあ、俺たちっていつの間にパーティになったんだ?」

「何をおっしゃって……え? どうして?」

「あれー? パーティになっちゃってますねー?」

「……発展クエストを受けるにあたり、強制的にパーティになったのか?」


 ……ダメだ、理解できん。

 パーティ限定のクエストというのは聞いたことがあるが、どこの誰とも知らないユーザーと勝手にパーティを組まされるクエストはさすがに初耳だ。


「……やっぱり、神木の欠片の合計個数が発展クエストへのカギっぽいな」

「三人でその数を満たすから、発展クエストを受けるために勝手にパーティになった、ということですか?」

「暴論だけど、ありそうだねー」

「神話級装備を手に入れられるクエストだからな、結構なごり押し感はあってもおかしくはない」

「……レヴォさんの言い方だと、過去にそういうクエストを受けたことがあるみたいですねー」


 うっ!? ……こいつ、なんか鋭いじゃないな。


「……今はそんなことどうでもいいだろう?」

「そうですか?」

「あぁ。何せ相手は――待ってくれないんだからな!」


 ――ギャルララガガララゲゲゴゴガガガガアアアアァァッ!!


 俺がそう言い終わると、通路の奥からやかましい雄叫びが響き渡った。

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