91.発展クエスト

 俺たちはさらに三時間を費やし、ようやくサブクエスト【神木の根を食らう悪魔】をSランクの難易度でクリアした。

 俺自身は二時間後にクリア、遅れていたエリザとリンが追加の一時間で神木の欠片99個を達成したのだ。


「……つ、疲れたぁぁぁぁ」

「……さすがに応えましたねぇぇぇぇ」

「……そうか?」


 確かに時間が掛かるクエストだったが、これよりも大変なクエストを何度もクリアしてきたのでどうってことはない。

 むしろ、時間を掛ければクリアできるので楽な部類のクエストだと思っている。


「「……はああぁぁぁぁ」」


 それなのに二人はものすごく疲れている。

 うーん、俺以外のトップランカーはそこまで苦労していないのだろうか。

 まあ、ランキング1位になれた俺の苦労と同じことをしているわけがないので、そこはしっかりと理解してやらないとな。


「神話級装備の素材が手に入るんだから、苦労が報われるんじゃないか?」

「それはそうですが……」

「言われてみれば、そうですねー。時間があればクリアできるわけですし」

「だろう?」

「まあ、ほとんどの人が選択スキルブックで諦めそうですけど」

「それでも伝説級だろう?」

「「伝承級です!」」


 ……いやいや、それはないだろう。

 スキルの貴重性はランカーになればなるほどわかっているはずだ。

 伝説級のスキルを手に入れられるチャンスが目の前に転がっているのに、どうしてあえて伝承級を選ぶというのだろうか。


「このクエスト、私たちだから五時間で終わらせられたんです」

「他の人たちだと、さらに時間が掛かりそうですしねー」

「それは99個だからだろう? 90個ならそう難しくないじゃないか」

「「難しいですから!」」


 ……そ、そうか? まあ、二人がそう言うならそうなんだろう。

 何やら俺と感覚が違い過ぎるようだが、人それぞれなのだから仕方ないか。


「さて、それじゃあクエストを完了させて報酬を受け取ろう……あれ?」


 ……おかしい。どうしてクエスト達成のウインドウが出てこないんだ?

 本来であれば99個獲得した時点でクエストクリアの表示が出てくるはずだ。

 今回はパーティなので、パーティ全員がクリアして初めて出てくるものとばかり思っていたのだが、そうじゃなかったのか?


「どうしたのですか、レヴォ様?」

「あれー? レヴォさん、あれはなんでしょうかー?」


 俺が考え込んでいると、エリザとリンが声を掛けてきた。

 その中でリンの言葉が気になり顔を上げると、彼女が示している先に見たことのない空洞が出来上がっていた。


「……あれは、なんだ?」

「レヴォさんもわからないんですかー?」

「……まさか、発展クエストでしょうか?」

「「は、発展クエスト!?」」


 エリザの言うことが本当であれば、これはチャンスかもしれない。

 何せ神話級装備の素材が手に入るクエストから発展したクエストである。

 ワンチャン、神話級装備が一発で手に入る可能性だってあるんじゃないのか?


「でも、条件はなんだったのでしょうか?」

「レヴォさん、心当たりは?」

「……パーティ合計の神木の根の欠片、とかじゃないか?」


 俺はずっとソロでプレイしていた。ここに来た時も当然ながらソロだった。

 そして、この場所の情報を知っているユーザーはほとんどいないだろう。もしかすると、俺だけだったかもしれない。

 一度しか挑戦できないクエストなので俺たちで検証することはできないが、それでも可能性の一つとしては考えられるんじゃないだろうか。


「まあ、俺たちが見つけたんだから、俺たちがクリアしてしまえば済むだけの話さ」

「……確かにその通りですね」

「特別な報酬! 期待できますねー!」

「それじゃあ――行くか!」

「「はい!」」


 そして俺たちは新しく出来上がった空洞へ足を踏み入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る