89.神木の根を食らう悪魔
枯れた神木の根の方へ降りていくと、そこには一箇所だけさらに下へと続く抜け道が存在している。
パッと見ではわからないようになっており、さらに近づいても障害物をどかさなければ見つけられない。
単に攻略だけをしにきたユーザーでは見つけることは難しいだろう。
「こんなところに隠しルートがあったなんて」
「普通は障害物を壊そうだなんて思いませんからねー」
「そうか? 普通は隅々まで調べ尽くしてから次に移動するだろう」
……あ、あれ? なんで二人とも、このタイミングで黙るんだ?
「……さ、さすがはレヴォ様です!」
「そしてエリザさんは本当にレヴォさんが大好きですねー。リアルでもお付き合いを?」
「してないから! ってか、リアルでの関わりもないからな!」
「そうなんですか? 私はてっきりリアルで知り合いだと思っていましたー」
リアルを心配はしていたが、会ったことはないからな。
というか、ギルド対抗イベントでゴールド側についていなければずっと知り合う機会なんてなかっただろうし。
「あの、私はリアルでもお会いしてみたいですよ?」
「あー……やめておこう」
「どうしてですかー? もしかして、恥ずかしいとかー?」
「……なんでお前が楽しそうなんだよ、リン」
「人の恋路ほど、面白いコンテンツはありませんからねー」
こいつ、性格が捻くれてないか?
「……エリザが持っているイメージのままリアルの俺に会ったら、幻滅されるのが目に見えているからな」
「そんなこと、絶対に思いません!」
「いいや、思うね」
……過去にも似たようなことはあったからな。
「……まあまあ、お二人ともー。リアルを詮索するのはご法度ですし、とりあえずはクエストに集中しましょうよー」
「お前が言うな、お前が!」
話題を振っておいて、何様のつもりだよ。
「それじゃあ、ここから先に入った瞬間からクエストがスタートする。出てくるモンスターは一種類のみ」
「一種類ですか?」
「意外と簡単そうですねー」
「元ランカーなら問題はないだろう。だが、ドロップ率が低いレアアイテムを集めなきゃならないクエストだから、運の要素も大きく関わってくる。下手をすると何時間も同じモンスターを戦う羽目になるから、覚悟しておけよ」
俺が言い終わると、二人とも真剣な面持ちで大きく頷いた。
「……よし。出てくるモンスターはアースアント。硬い外殻を持っているが、関節に刃を滑り込ませることができれば容易に両断できる」
「なるほど! 簡単ですね!」
「あのー、私は元ランカーだとは一言も口にしていませんけどー?」
「あれだけ動ける奴がランカーじゃないわけがないからな」
「……まあ、否定はしませんけどー」
なら聞き流せよ。
まあ、これ以上のやり取りは面倒なので口にはせず、俺たちは武器を抜いた。
「フィーは全員にエアヴェールを頼む」
「はいなのー!」
「ご主人様、頑張るのにゃ!」
エアヴェールで敏捷を強化すると、その勢いでクエストがスタートするエリアへ侵入した。
【■サブクエスト:神木の根を食らう悪魔 ■クリア条件:『神木の根の欠片』を10個以上獲得 ■クリア難易度:F/10個 E/20個 D/40個 C/60個 B/80個 A/90個 S/99個 ■クリア報酬:F/伝承級装備ランダムBOX E/ランダムスキルブック(伝承級) D/伝説級装備ランダムBOX C/ランダムスキルブック(伝説級) B/伝説級装備選択BOX A/選択スキルブック(伝説級) S/神話級素材ランダムBOX ■※このクエストは強制参加です】
「一気に終わらせるぞ!」
「「はい!」」
「はいなのー!」
エリアに侵入すると同時に強制参加のクエストとなり、周りの壁からアースアントが大量に姿を現した。
三方向へと飛び出した俺たちは思うがままに武器を振るい、アースアントを大量に討伐していく。
「これ、結構、きついですね!」
「ぜんっぜん、ドロップしないんだけどー!」
「根気が大事だからな! 諦めるなよ!」
そう、このクエストは根気が大事だ。
諦めたら、そこでクエスト終了だからな!
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