84.青髪のリン

「あっという間に二対二だな」

「あっという間なのー!」

「う、うるせえな! おい、てめえ! 絶対にこいつらをぶっ殺すぞ!」

「……は、はぁ」


 怒り狂っているレグゼとは異なり、青髪の女性ユーザーはため息にも似た声で返事をしている。

 おそらく、実力差を理解しているのだろう。

 こんな奴の下につけられるなんて、なんてかわいそうな奴なんだ。


「俺があの野郎をぶっ潰す! てめえは霊獣をやれ!」

「あ、はい。頑張ります」

(フィー、そいつはたぶん大丈夫だから、適当に相手してやれ)

(はいなのー!)

(だが、倒すなよ。まあ、倒されそうになったら倒してもいいけどな)

(そうなのー? わかったのー!)


 よし、青髪はフィーに任せて、俺はこいつをさっさと倒してしまうか。


「霊獣がいなかったらこっちのもんだ!」

「爆炎が俺に当たるとでも思っているのか?」

「さあ、どうかな?」


 何やら企んでいるようだが、こいつが企みそうなことならある程度予想がつく。


「いくぜえっ! 爆炎――二連撃!」


 まあ、ストックが三回しかないからな。使えてあと二回だろうよ。

 その爆炎だが、俺を直接狙うのではなく、逃げられないようにするためだろう、左右に逸れて放たれた。


「これで逃げられないだろう! 俺様自らがぶっ殺してやるぜ!」

「はぁ。だと思ったよ」


 こんな奴に使うのは勿体ないが、何のないと思われるのは癪なのでぶっ放しておくか。


「ダークエッジ」

「んなあっ!? て、てめ――ぐがあっ!!」

「遠距離攻撃がないだなんて、一言も口にしていないが?」


 間一髪、爆炎の戦斧でダークエッジを受け止めたようだが、それでもダメージはゼロではなかった。

 大きく後方へ吹き飛ばされると、そのまま背中から壁に激突して苦悶の表情を浮かべている。

 スキルもそうだが時間も勿体ない。俺は瞬歩を使い一気に間合いを詰めると、そのまま二刀流でレグゼへ連撃を見舞っていく。


「ぐがっ! げべっ! やっ! やべでっ! ぐばあっ!」

「ん? なんだって?」

「やべっ! でぐでっ! があっ!?」


 ……あ、死んだみたいだ。

 それにしても、HPだけは無駄に高かったなぁ。いや、体力の方か? まあ、どっちでもいいんだけどな。

 捨てセリフなどもなく、レグゼが死亡エフェクトを残して消えていく。

 残されたのは俺とフィーと隠れていたニャーチ、そして――青髪。


「それで? お前はどうするんだ?」

「えーっとー……降参でーす」

「だろうな」

「あは、あははー」


 頬をかきながら苦笑いを浮かべている青髪。

 さて、こいつをどうするべきか……ゴールドギルドの情報を得るために利用する手もあるが、うーん。


「……あ、あのー」

「なんだ?」

「……私を、リンをあなたのギルドに入れてもらえませんかー?」

「……ギルド?」

「はい。だってあなた、DRギルドの人ですよね?」


 ――!? ど、どうしてバレたんだ? いや、カマを掛けている可能性もあるか。


「……なんのことだ? 俺がDRギルド?」

「はい。仮面のユーザーがゴールドギルドを襲っているのを見たんです。その人がおそらくはDRギルドの人だろうなと思いまして」

「違うな」

「なら、リンをあなたのパーティに加えてくれませんか?」

「断る。というか、俺はソロだ」


 フィーは霊獣だし、今この場に他のユーザーなんていないだろうが。

 そんなことを考えていると、青髪……リンは何故か後ろの通路を指差してきた。


「いや、だって、あの人はパーティの人じゃないんですか?」

「ん? あの人っていったい――」

「レヴォ様ー! フェゴール改め――エリザがやってまいりましたよー!」

「あー、フェゴールさんでしたかー」


 …………タイミング最悪だなあ、あの野郎が!

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