73.終戦
俺は捨て身の特攻を発動する前にHPを全回復させていた。
あくまでも単純計算になってしまうが、筋力99にHPを÷10した数値99が足されて198。
そこに筋力上昇の10%と暗黒竜のオーラの25%の上昇が加わり筋力は273まで上昇。
さらに弱点への攻撃は暗殺剣で三倍、暗殺者の一撃で五倍に膨れ上がる。
相手の防御力を考慮しないのであれば――4095ものダメージを与えることができる。
これは上位ランカー、下手をすればトップランカー並みの攻撃力を誇っていた。
それにこれは一撃でのダメージの話だ。
俺の場合は二刀流による連撃で何度もダメージを与えることができるので、レベル40でも神話級モンスターのHPを削ることは可能となる。
ただし、これは反撃が一切ない状況でしか使えない、まさに切り札といえる戦法だ。
何せ、一撃でも食らってしまえば一瞬で死んでしまうんだからな。
「……はは、なんだよ、こいつは」
デスハンドがあり得ないと言いたげな声音でそう溢している。
だが、これは現実だ。
俺の経験と知識によって成し遂げられた、俺にしかできない技術を駆使した偉業となるだろう。
最後の一撃が叩き込まれた瞬間、シルバーフェンリルの巨体がぐらりと揺れる。
そして、俺は背中越しにその巨体が倒れた音を耳にして、ゆっくりと振り返った。
「……勝った……はは、やってやったぞ!」
俺は拳を突き上げて喜びを爆発させた。
「ご主人様! やったのー!」
「すごいのにゃ! ご主人様!」
「フィーもよくやったよ! そしてニャーチはどこにいたんだ?」
「ぼ、僕は戦いに参加できないから隠れていたのにゃー」
「はは、冗談だよ! ニャーチも応援ありがとうな!」
「にゃ、にゃにゃ~」
恥ずかしそうに照れたニャーチの頭を撫でながら、俺は死亡エフェクトを発しているシルバーフェンリルへ視線を向けた。
やれるとは思っていたが、正直紙一重なところは多かった。
この場にいる誰か一人でも欠けていたら倒せなかっただろうし、はっきり言って俺だけでは無理だっただろう。
……だが、気になるところはあった。
それはシルバーフェンリルとの終盤戦で感じたんだが……どうだろうか。
「はっははーっ! すげぇじゃねえか、レヴォ!」
「うおっと! ちょっと待て!」
「な、なんだぁ?」
「俺のHPは今1だからな! 何が攻撃判定になるかわからんから、ちょっと待て!」
肩を組もうとしてきたデスハンドを制しながら、俺は慌ててポーションを使いHPを回復させる。
……ふぅ、これで大丈夫だろう。
「HP1だぁ? ……まさかお前、捨て身の特攻を使ったのかぁ?」
「スタン状態になればと思ってさっき取ったんだよ」
「マジかよ。お前、度胸があるなぁ」
「そうでもしないとレベル40で神話級モンスターを倒すとか無理だからな」
俺がデスハンドに捨て身の特攻の意図を伝えると、感嘆の声を漏らしながらこんな事を聞いてきた。
「……なあ。お前って、ゴールドなのか?」
「……ん? なんだ、藪から棒に?」
俺が本物のゴールドだということをデスハンドたちはまだ知らないはずだ。
これから先こいつらが敵にならないという保障はないし、何より俺の乗っ取り野郎への復讐はまだ終わっていない。
乗っ取り野郎がワンアースをプレイしたくないと思うまでは執拗に狙っていく予定だから、できるだけ正体は隠しておきたいのだが、どうして気づいたんだ?
「いやいや、てめぇとフェゴールの会話を聞いていたら、大体の予想はできるだろうが」
「……そうか?」
「大方、ゴールドの中身が別人で、お前が本物のゴールドなんじゃねぇのか? んで、お前の様子からするとアカウントを乗っ取られたかなんかだろう?」
……全てが大正解ですよ。
「まあ、俺たちのことは気にすんな。てめぇがゴールドを作ったユーザーだとわかった時点で、敵対する様なバカじゃねぇからな」
「……それじゃあ、今後ゴールドに仕掛ける時は連絡するわ」
「なんでだよ! 敵対しないってだけで、協力するとは一言も言ってねぇだろうが!」
無駄話が長くなったが、そろそろ他のギルドメンバーもこっちに来るかもしれない。
というか、あれだけ派手に戦闘をしておいてどうして誰もこっちに来なかったのか。
正直、気になることが多過ぎるレイドボス戦だったが、今は考えないようにしよう。
一先ずはゴールドに仕返しができたことを、良しとするべきだからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます