60.……ランカー?
「……ん? あの武器、どっかで見た覚えがあるような、ないような?」
「死ねやこらああああぁぁっ!」
「レヴォ様!」
突っ込んで来る赤髪の武器を見つめながら考え込んでいると、フェゴールが驚きの声をあげた。
「まずはお前からぶった切ってやるぜええええぇぇっ!」
「……はあ? フィー、エアバースト」
「はいなのー!」
「んなあっ!?」
いや、何もそこまで驚くことはないだろう。
ずっと俺の頭の上に……あれ? フィーの奴、頭の上にいないでどこにいたんだ?
「どわああああぁぁっ!?」
……まあ、いいか。
赤髪はエアバーストに吹き飛ばされて後方の地面を転がっていったし。
……ってか、あれで本当にランカーなのか?
思い出したんだが、あれはランカーが使うような武器じゃないんだよなぁ。
「くっ! こ、この野郎! マジでぶっ殺してやる!」
「なあ、フェゴール。こいつが本当に――」
「これでも食らいやがれ――爆炎!」
あ、やっぱり。
赤髪が使っている武器は、俺が競売に出した爆炎の戦斧を競り落としたんだろうが、あれは伝承級の武器であり、神話級や伝説級の武器ではない。
レベル30以上から100以下の中堅ユーザーが使う等級の武器なのだ。
「エアウォール」
「はいなのー!」
「お前なあ! 霊獣に戦わせるんじゃなくて、自分で戦いやがれ!」
いや、霊獣が戦ってもいないんだがな。単に攻撃を防いでいるだけなんだが。
それに、こいつが攻撃を仕掛けてきたり、バカでかい声で叫んでいるのでフェゴールに確認が取れないじゃないか!
「フェゴール、どうなんだ?」
「えっと、彼ではありません」
だろうな。
「彼は若手のホープとゴールドが期待しているユーザーです」
……これで期待されているのか。これ、俺が何もしなくても勝手にゴールドギルドって瓦解していく気がしてきたな。
いや、フェゴールがいなくなったのが一番大きいか。それなら俺も多少なりゴールドギルドの瓦解に貢献できている……そう思いたい。
「そんじゃまあ、ランカーでないならさっさと片付けて次に行くとするか」
「はっ! やれるもんならやってみやがれ! そんな変な仮面をつけている野郎なんかに俺様が負けるわけないからな!」
フィーのエアウォールを破壊できていない奴が、どうしてこうも強気なのかわからんな。
「あの、レヴォ様? 面倒であれば私がやりますが?」
「いいや、大丈夫だ」
俺はそう口にすると、爆炎の効果が消えたのを確認してエアウォールを解除する。
そして、隼の短剣のみを手にして赤髪に剣先を向けた。
「三回だ」
「……はあ?」
「三回の攻撃でお前を倒す。それができなかったら、俺をゴールドに突き出すなりなんなりしたらいいさ」
「……ははっ! お前、面白いな! いいぜ、やってやるよ!」
「レヴォ様!」
「あんたは引っ込んでな! こいつを片付けたら、すぐにゴールド様へ裏切りの報告をさせてもらうからよ!」
ん? こいつ、まだ報告をしていなかったのか。
なら、今の展開は好都合だな。
報告を入れる前にログアウトさせてしまえば、リアルで連絡先を知っていない限りはフェゴールの裏切りを伝えることができなくなる。
それに、リアルの連絡先を知っていたとしても、乗っ取り野郎がログアウトしなければ確認することができないからな。
「それじゃあ、やるか?」
「真っ二つにしてやるよ! だがなあ、霊獣に攻撃させるんじゃねぇぞ!」
「……はいはい、わかったよ」
こいつ、自信満々かと思えば小心者なんだな。
だがまあ、攻撃はさせなくても、バフは使ってもいいってことだよな?
「はは! 言質は取ったぜ!」
「俺も言質は取ったから安心しろ」
赤髪がバカでよかったわ。いや、バカじゃなくても勝てたけどな。
「それじゃあ、いくぜー!」
「まずは――一回」
「んなあっ!?」
俺は上級ユーザー並みの敏捷を活かして一気に赤髪の懐に飛び込むと、左腕を斬り飛ばす。
予想外だったんだろう、声に焦りが滲み出ている。
「二回」
「ふざけんな――ぐがあっ!?」
次に左足を斬りつけると、その場に膝をつけてしまう。
「こいつ――爆炎! 爆炎!」
焦りからか、残り二回しか残っていない爆炎スキルを全て使ってしまったのか。
(フィー、エアヴェールを頼む)
(はいなのー!)
俺はここでフィーにエアヴェールを使ってもらい敏捷を上昇させると爆炎を回避、爆炎スキルで倒したと思い込んでいる赤髪の後方へと回り込んだ。
「これで、三回だ」
「こいつ、いつの間に――!?」
鋭く横薙いだ隼の短剣が赤髪の首を刎ねると、宙を舞った。
「……ち、ちくしょうがぁ!」
そして、地面に落下したと共に死亡エフェクトが発生し、赤髪の姿は消えていった。
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新作を投稿しています!(宣伝忘れてました。。)
『逆行聖女は剣を取る』
1話あたり1500~2000字と少ないので、隙間時間にでも是非ご覧ください!
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