46.一日目の中間発表

 レイドボスやゴールドギルドの居場所を探しながらモンスターを狩っていたが、それなりの数を狩ることができた。

 そう思えたのは、一日目の中間発表が行われたからだ。

 丸一日掛けてレイドボスもゴールドギルドも見つけられなかったのは問題だったが、ランキングを見て一先ずは留飲を下げることができた。


「意外だな。最下位だと思っていたのに」


 今回のイベントでは全体で10万以上のギルドが参加している。

 俺みたいな一人ギルドがどれだけあるのか……正直、二桁はないと思っている。

 その中でもレヴォは作ったばかりのアバターなのでずっとソロでプレイしていたユーザーと比べても間違いなくレベルは低いはずだ。

 ほぼ最下位だろうと予想していたのだが、その順位は意外にも8万9681位だった。

 下位ではあるが、それでもこの順位は俺の予想よりもはるかに高かった。


「……まあ、順位なんて俺には関係ないけどな」


 現在のランキング1位を見てみると、意外にもゴールドギルドではなく別のギルドだった。

 自分のギルド以外のランキングは上位1000位まで見ることができる。

 俺は少しずつランキングを下にずらしていくと――


「……はあ? なんだよ、こいつ。ゴールドギルド――833位じゃないか」


 10万以上のギルドが参加するイベントで見れば十分上位の位置なのだが、全世界ランキング1位のゴールドがいるギルドとしては恐ろしく低い順位であることは間違いない。

 仮に俺がゴールドを使って一人ギルドで参加したとしても、絶対にもっと上の順位にいられると自信を持って言える。


「……こいつ、ギルメンをしっかりとまとめられていないんじゃないのか? それに、ゴールドをちゃんと操れていないとか?」


 可能性は十分にある。

 ゴールドの動画では単に力押しだけでモンスターを倒しているように見えてしまうかもしれないが、実際はそうではない。

 超重量の大剣を精密にコントロールし、モンスターの弱点である部位へ的確に命中させて大ダメージを与えており、それを相手が倒れるまで繰り返している。

 集中力も必要で、多少腕が立つユーザーであっても一朝一夕で真似できるとは思えない。


「個人ランキングとかあればゴールドのポイントも見れたんだが、ギルド対抗イベントでは毎回ないんだよなぁ」


 運営の意図なのだろう。

 個人イベントとギルド対抗イベントではしっかりとランキングが分けられており、ギルド対抗イベントでは個人の活躍が目に映らないようランキングなどは設けられていない。

 これはこれで問題がないとは言わないが、ギルドの活躍を全面に押し出すというワンアース運営の答えということなのだろう。


「しかし……1位で12万ポイントくらいなのか。まあ、ギルド対抗イベントはこれからが本番だし、100万ポイントに迫るギルドも出てくるだろうな」


 それがゴールドギルドになるのか否かはわからないけどな。

 ……待てよ? どうせなら、こいつらが上位1000位に入れないよう暗躍するのもありなんじゃないのか?

 ゴールドギルドをいきなり失墜させるにはもってこいかもしれないぞ。

 幸いなことに、初日こそ見つけられなかったが二日目ともなればSNSでも今回のギルド対抗イベントで大盛り上がりだ。

 そのおかげもありゴールドギルドがどこを拠点にして活動しているのか、今の俺はしっかりと把握できている。

 レイドボスを倒すという偉業もやってみたいが、最大の目的を忘れてはいけない。


「……くくく、これはやりがいが出てきたなぁ」

「どうしたのにゃ、ご主人様?」

「面白い笑い方なのー!」

「……そ、そうか?」


 おっと、一人だけだと思っていたが、俺にはニャーチとフィーがいるんだったな。


「ここから移動するぞ、二人とも」

「どこへでもついていくのにゃー!」

「もっと戦うのー!」


 やる気に満ち溢れた二人を伴い、俺たちは強敵が跋扈しているだろう専用フィールドの端へ向けて走り出したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る