39.レッドドラゴン
「レッドドラゴンが合流する前にこいつらの数を減らすぞ、フィー!」
「はいなのー!」
俺とフィーは攻撃の速度を上げてレッドリザードマンの数を減らしていく。
気づけばレベルも上がっていたが、確認している暇はない。
洞窟内ということだからか、レッドドラゴンは空を飛んで来るというわけではなく、ズンズンと音を立てながら近づいてきている。
足音で近づいてきているのはわかるが、あとどれくらいなのかまではわからない。
レッドリザードマンの数が少なくなり、集まる速度が徐々に落ちてきたところで――ついに本命が姿を現した。
『グルオオアアアアァァアアァァッ!!』
「来たぞ! フィー、全力で魔法をぶつけてやれ!」
「はいなのー! エアバレットー!」
今までの力を抑えた魔法とは異なり、大きさも速度も倍以上はあるエアバレットがレッドドラゴンに殺到していく。
――ドドドドドドッ!
『グルアアアアァァッ!』
顔を出したところで顔面に直撃したエアバレットに、レッドドラゴンは明らかな嫌悪感を抱いている。
そして、口内で揺れる赤い光が見えた途端に周囲へ視線を巡らせた。
「フィー! こっちだ!」
「はいなのー!」
絶対に回避不可能な状況を作るようなゲームでないことは理解している。
洞窟の中でのブレスは炎が行き場を失って袋小路を焼き尽くすと思っているユーザーが多いようだが、そうではない。
洞窟内であればどこか窪みであったり、隠し通路があったりと、探せば回避する方法が見つかるはずなのだ。
そして、ここの洞窟では一番奥に隠されている窪みに身を潜めること。
袋小路の入り口からは見えないが、奥へ行くことでようやくわかる窪みが隠されており、そこは空気の流れが特殊になっており炎を押し返してくれるのだ。
俺たちはレッドドラゴンがブレスを吐き出す前に窪みの中へ身を隠し、直後には真横を強烈な炎が熱波を放出しながら通り過ぎる。
『ギュギィギャララアアアアァァアアァァッ!?』
レッドリザードマンの悲鳴が洞窟内で反響し、俺の鼓膜を揺さぶってくる。
だが、こんなことに気持ちを持っていかれるわけにはいかない。
ブレスを吐き出したということは、直後に大きな隙が生まれるのだから。
「はあっ!」
窪みから飛び出した俺は一直線にレッドドラゴンへ迫っていく。
敏捷だけなら上級ユーザーに匹敵するため、1秒と掛からずにレッドドラゴンの懐に潜り込む。
「暗殺剣!」
『グルガアアアアッ!?』
弱点目掛けて隼の短剣と黒閃刀を連続で振り抜いていく。
暗殺剣スキルのおかげで弱点へのダメージが三倍になることから、レッドドラゴンのHPが一気に減少していく。
しかし、チュートリアル塔で戦ったドラゴンが伝承級であれば、目の前にいるレッドドラゴンは一つ等級が上の伝説級だ。
これで終われば簡単だったが、そうはならなかった。
『グルルゥゥ……グルオオアアアアァァアアァァッ!!』
間近で放たれた大咆哮は、俺のステータスを一気に減少させてしまう。
状態異常の恐慌状態だ。
全てのステータスが20%減少してしまうので、ここから多くのユーザーは劣勢に立たされてしまい、対処できなければあっさりと倒されてしまう。
「フィー!」
「エアドーム!」
『アアアア――ァァッ!?』
俺が大きく飛び退いたのと同時に、フィーが風の結界を展開してレッドドラゴンを包み込む。
大咆哮が結界内で反響し、自らの鼓膜にダメージを与えてしまう。
自らの大咆哮で恐慌状態に追いやられたレッドドラゴンのステータスが一気に減少したところで、エアドームが解除された。
「畳み掛けるぞ!」
「はいなのー!」
『グルルゥゥ……ガルアアアアッ!』
最初に見せた凶暴な雰囲気が今やどこにもなく、腕や足での攻撃は大振りとなり、竜尾攻撃は鈍重な動きで回避も簡単だ。
こちらもステータスは減少しているが、敏捷だけを見ればまだまだ中堅ユーザーと同等の数値を叩き出している。
ここから俺たちが負ける未来は、まったく考えられなかった。そして――
『アアアアァァッ! ……アアァァ……ァァ…………』
か細くなっていく鳴き声を聞きながら、ついにレッドドラゴンはその巨体を地面に横たえた。
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