34.第二の街アリスベル

 始まりの村でギルドを作ることもできたのだが、イベントまでは五日の猶予がある。

 ならば、今ここで急いでギルドを作らなくても次の街に到着してからでも遅くはないと判断した。


「たぶん、ギルド対抗イベントのせいで停滞していたギルドの新規作成が一気に増えるはずだ。そして、イベントまでにライバルを弱体化させようとする動きもな」


 ギルドを作ると、多くの場合でギルドメンバーに募集を掛けることになる。

 それはギルドを強くするためなのはもちろん、ギルド専用の特典が受け取れるようになるからだ。

 何名加入でこの特典、ギルドポイントがいくら突破でこの特典、みたいなものだな。

 中にはギルド対抗イベントに参加したいからギルドを作るユーザーもいるだろうけど、せっかく作ったんだから特典を狙ってみようとする者が出てくるのは当然といえるかもしれない。

 そして、そういうギルドから弱体化の標的にされていくのだ。


「俺の場合はマジでギルドメンバーを俺だけになるんだが、それが相手からはわからないからな。面倒は避けるに越したことはない」


 道中でモンスターと何度か遭遇したものの、今のレベルだとまったく敵ではなく、ゴブリンと同じでワンキル判定を取らなくても一撃で仕留めることができてしまう。

 ならばとフィーに戦闘を任せてみたのだが、彼女も第二の街までに生息しているモンスター相手なら苦戦することもなく、道程を順調に消化することができた。

 そして――その日のうちで到着したのだ。


「ここも懐かしいなぁ。第二の街――アリスベル!」


 始まりの村が田舎にある集落のような場所だったのとは打って変わり、アリスベルは巨大な外壁が街を囲んでいる大都市だ。

 最大の特徴としては街の中央にある巨大アリーナである。

 アリーナランキングはこのアリーナでユーザーと対戦を行い、その勝敗や連勝記録で獲得したポイントで競っているものだった。


「しっかし、ユーザーの数も多いなぁ。始まるの村とは全然違うわ」


 アリスベルにはアリーナがあるという理由から、多くのギルドがギルドハウスを構えている。

 ギルドへの勧誘を積極的に行っているところもあるので、できればそういうところとは関わり合いたくないところだな。


「……時間ができたら、ゴールドの記録を塗り替えるチャレンジもしてみたいな」

「ご主人様! ギルドはどうするのにゃ?」

「ギルドなのー!」


 俺の気持ちとは裏腹に、ニャーチとフィーはギルドを作りたいと期待の眼差しを送っている。

 だが、作るのはイベント開始の前日くらいがちょうどいい気がするので、今はまだ作らない。


「今はまだだ。その代わり、アリスベルの近くにはレベリングに適した場所がいくつかあるんだ。そこでフィーを強くしようぜ」

「やったー! フィー、強くなるのー!」

「よかったのにゃ、フィー!」

「はいなのー!」


 満面の笑みを浮かべながら手を挙げたフィーを見て、俺は自然と笑みを浮かべてしまう。

 その後、すでに定位置になってしまった頭の上に乗っかると、俺たちは踵を返してレベリングをするために街から見えていた山脈の方向へと歩き出した。


 ――しかし、俺はまったく予想していなかった。

 この選択をきっかけに、目標へ大きく近づくことになろうとは。



※※※※

【更新ペース変更のお知らせ】

次回の更新より、【三日に一回の更新】へ変更させていただきます。

個人的に忙しくなり、毎日の更新が間に合わなくなってきたからです。

読者様には大変申し訳ございませんが、今後とも『トップランカーになったセカンドキャラ』をよろしくお願いいたします。

※※※※

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