33.ギルド対抗イベント
【8月1日の12時より、ギルド対抗のイベントを行います! ギルドに加入していないユーザーは急いでギルドへ加入いたしましょう! 詳細は後日DMいたしますのでご確認くださいませ!】
……はい? おいおい、まさかこれって?
「運営が、ゴールドに媚を売ってるんじゃないだろうなぁ?」
乗っ取り野郎が……いや、世間的にはゴールドがギルドを作ると宣言した数日後にギルド対抗イベントである。
まあ、運営としてはギルド未加入のユーザーが積極的に動けるよう促しただけなのかもしれないが、俺から見れば媚を売っているようにしか見えなかった。
たまたまイベントが重なったのか? いいや違う。
いつもなら開始の二週間前には告知が出されていたはずだが、今回は五日前の告知になっている。
明らかに慌ててイベントを組んだ臭いがぷんぷんしてくる。
……あわよくば、ゴールドにお金をたくさん使ってもらおうって魂胆じゃなかろうか。
「……くそっ! 魂胆が丸見えなんだよ!」
俺はさらなる苛立ちを覚えて壁を蹴ろうとしたのだが……待てよ? これは、チャンスじゃないだろうか。
「……イベント中は、間違いなくゴールドギルドの居場所がわかるはず。何せ、あれだけ目立つ見た目をしているんだからな。だったら、俺がそこへ行って乗っ取り野郎の邪魔をするのもありなんじゃないのか?」
……はは、そう考えると、今回のイベントは十分楽しいものになるそうじゃないか?
「……ご主人様、どうしちゃったのかなー?」
「……怒ったり、ニヤニヤしたり、忙しいのかにゃ?」
おっと、フィーとニャーチに心配を掛けてしまったようだ。
「大丈夫だよ、二人とも」
「本当かにゃ? 何かあれば、なんでも言ってほしいのにゃ!」
「私たちが話し相手になるのー!」
「助かるよ。……なあ、二人とも。五日後のギルドイベント、俺はそれに参加しようと思っている」
彼らはAIだ。
別に声を掛けて相談しなくても、俺の選択には従ってくれることだろう。
だけど、俺にとっての二人は単なるAIではない。
話し相手であり、仲間であり、相棒なのだ。
こうして伝えることでより絆が深まるのではないかと、俺が勝手に思っての行動だった。
「そうなると、ご主人様がギルドを作るのかにゃ?」
「ギルドメンバーを募集するのー!」
「いや、ギルドメンバーの募集はしない」
「それじゃあ、どうするのにゃ?」
首を傾げる二人の姿はとてもかわいらしく、ずっと見ていられそうだ。
「……おっと、見惚れてたわ。俺のギルドは、俺たちだけのギルドだ」
「僕はAIだからギルドメンバーにはなれないのにゃ」
「私もなのー」
「いいんだよ。ユーザーでいえば俺一人ってことになるけど、それでもギルドは成り立つんだからな」
ワンアースではギルドを立ち上げること自体は難しくない。
ただ、現時点ではあまりにギルドが乱立しており、また大型ギルドがすでに縄張りの線引きを引いてしまっていることもあって、最近では新規作成のギルドはほとんど見受けられなかったのだ。
マジでゴールドギルドくらいなもんだったけど……対抗して俺がギルドを作るのもありな気がしてきたは。
「それじゃあギルドを作成ために街へ移動するのにゃ!」
「私たちのギルドなのー!」
「あぁ、その通り。俺たちのギルドだな」
嬉しそうにしている二人を見て、俺は苛立ちが徐々になくなっていることに気がついた。
やはり、ソロで黙々とクエストを進めているよりも、こうして誰かと会話ができるというのは非常にありがたい。
嫌なことがあれば会話で発散できるし、楽しいことがあればソロの時よりも何倍も楽しく感じることができる。
「……ありがとうな、二人とも」
「ん? 何か言ったかにゃ?」
「ご主人様、どうしたのですー?」
「いや、なんでもないよ。もうゴブリンの巣ダンジョンの経験値1.2倍特典も終了するし、そうするかな」
こうして俺たちのレベル上げを一度切り上げ、ギルドを作成するために次の街へ移動することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます