26.絡まれるレヴォ

 翌朝となり、俺は早速ワンアースにログインした。

 すでに動画の再生数を確認済みだが、上々の滑り出しを見せている。

 特に【第二弾! PK集団返り討ち! この顔を見つけたらご用心!】が好調で、第一弾と合わせると5万回再生に到達していた。

 ゴブリンの巣ダンジョンの動画も朝の時点で1万回再生に迫っており、この調子でいけば今日の夜には2万回再生に届くかもしれない。

 合計で10万回再生に到達すれば、1万円から5万円くらいの収入を得ることができる。

 支払いにはまだまだ足りないが、この調子で動画をアップしていけばなんとかなるはずだ。


「さーて! 今日も何かネタになることがあればいいけど。特にPKギルドが仕掛けてきたらありがたい……って、なんだ?」

「ご、ご主人様! にゃにか、囲まれているのにゃ!!」


 うーん……これは、待ち伏せでもされていたか?

 だが、俺にとっては好都合! こいつらはきっと、PKギルドの奴らだな!


「てめぇ、レヴォだな?」

「はい! そうです!」

「……お、おう、そうか」


 おっと、あまりに都合がよくて元気よく返事をしてしまった。


「どうして俺たちが待ち伏せしていたか、わかっているな?」

「はい! ……じゃなくて、あぁ。動画の件だろう?」

「そ、そうだ。うちのギルマスが呼んでいる、無理矢理にでも連れて行かせてもらうぞ?」

「いいだろう! さっさと行こう! 連れて行ってくれ!」

「……お、おう」


 ……おっと、失礼。

 といわけで、俺はログイン早々にPKギルドのギルマスが待つ場所に連れて行かれることになった。


「ご、ご主人様? 本当に大丈夫なのかにゃ?」

「問題ないさ。相手の実力はわからないが、双剣の暗殺者の実力を試しいいチャンスだしな」

「なるほどにゃ! ピンチをチャンスに、だにゃ!」

「……どこで覚えたんだ、そんな言葉?」


 いやまあ、間違いではないんだけどな。

 だが、これが俺にとってのピンチかと言われると、そうではない気がする。

 何せ相手は始まりの村で新人ユーザーばかりを狙っているPKギルドのギルマスだ。

 本当の実力者であれば、こんなところではなく大きな街でPKをしていることだろう。

 言ってしまえば、新人ユーザーを相手に調子に乗っているだけのギルドということだ。

 だが、ギルドマスターになるには最低でもレベル20以上が必要だし、それなりの実力があることは想定しておこうかな。


「ここだ」

「……わーお、いきなりギルドハウスかよ」

「なんだ、怖気づいたのか?」

「いや、そうじゃないんだが……まあ、いいか」


 敵をいきなりギルドハウスに連れてくるとか、正気だろうか。

 それとも、絶対に勝てるという自信があるということか? まさか、この後に及んで数で押し切るつもりじゃないだろうか。

 ……まあ、どちらでもいいか。いつかはぶつかる相手だったわけだしな。


「来い」

「はいはーい」

「ご主人様、まったく緊張感がないのにゃ」


 ニャーチが呆れたようにそう口にしたのを見て、案内してきた男性ユーザーがふんっと鼻を鳴らした。


「AIの助けを借りているような奴に、コープスさんは負けちまったのか?」


 うーん、コープスの奴、さん付けされているってことはギルド幹部だったりするのか? だとしたら……ギルマスの実力も大したことがないかもしれないなぁ。

 そんなことを考えながらギルドハウスの中に入ると、エントランスの壁際に二〇人近いユーザーが並んでおり、一番奥には一際背の高い猫背の男性ユーザーが立っていた。


「てめぇがレヴォだなぁ?」

「人に名前を尋ねる時は、まず自分から名乗るものじゃないのか?」

「言うじゃねぇか! いいぜぇ、俺様はボーンヘッドギルドのギルドマスター、デスハンド様よ!」

「そうか。俺はお前が言った通り、レヴォだ」

「……いい度胸じゃねぇか!」


 名乗ってくれたので名乗り返したのだけなんだが、どうしてデスハンドの奴は怒っているのだろうか。


「それで、俺になんの用があるんだ?」

「なんの用がある、だと? てめぇ、本気で言っているんじゃねぇだろうなぁ?」

「いいや、本気だぞ? こっちは襲われたから追い返しただけで、別に悪いことをした覚えはない。そっちが謝罪するために呼んでくれたってことなら大歓迎だが?」

「……最近の新人ユーザーは、生意気らしいなぁ?」


 いや、当たり前の意見を口にしただけなんですが?


「てめぇはここに来た時点で、死んだも同然だ。何故なら――俺様が直々に相手をしてやるからな!」

「いいぜ、やろうか。これを今日の動画のネタにしてやるよ」


 さーて、デスハンドの実力がどれほどのものか、確かめてやろうじゃないか!

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