25.続・ボーンヘッドギルド
――ドンッ!
ボーンヘッドギルドのギルドハウスでは、今までにないくらいの怒声が響き渡っていた。
声の主はギルマスであり、怒鳴られている相手はコープスだ。
「てんめええええぇぇっ! 何をしてくれてんだこらああああぁぁっ!!」
「ほ、本当に申し訳ございませんでしたああああぁぁっ!」
「謝って済む問題じゃねぇんだよ!」
「ひいいいいぃぃいいぃぃっ!!」
ギルマスは短剣を引き抜くと、刀身をコープスの頬に当てる。
「しかもてめぇ、俺様の黒閃刀まで奪われたみたいじゃねぇか、あぁん?」
「ほ、本当に申し訳ございま――」
「言い訳はいいんだよおっ! そのレヴォって奴は、絶対に俺たちボーンヘッドギルドがぶっ殺す! ただじゃ殺さねぇ、今後ワンアースにログインしたくなくなるくらい、徹底的に叩き潰すんだ!」
そう口にしながらギルマスが短剣を引くと、コープスは大きく息を吐き出した。
「それで、そいつはどこにいきやがったんだ?」
「げ、現在、全力で捜索中です」
「見つけられていないのかぁ?」
「か、可能性としてはログアウトしているのではないかと! 瞬歩スキルを使っっていたので、ストックの回復を待っていると予想されます!」
「瞬歩だあ? ……それで、どこでログアウトしたかはわかってんのか?」
そこでコープスは自分の予想の範囲は出ないものの、いくつかの可能性を口にしていく。
そして、その中には正解の場所が含まれていた。
「始まりの村の入り口、道具屋、サブクエストを受けられるNPCの前、あとはノービスだったので転職の神殿の前とかが可能性としては高いです!」
「あぁ、確かこいつ、ノービスだったなぁ」
直接対峙していないギルマスだったが、動画からレヴォがノービスであることはわかっていた。
最初こそノービスを相手に負けたのかとコープスたちを怒鳴っていたが、動画の動きを見て考えが変わった。
このノービスは強く、コープスたちでは敵わないと。
(……動きから見て、敏捷に極振りしているのは明らかだ。ってことは、暗殺者系の職業に就くつもりか? ……いいだろう、面白いじゃねぇか!)
ググググと拳を強く握りしめながら、ギルマスは下卑た笑みを浮かべた。
実はボーンヘッドギルドのギルマスは、暗殺者系の職業に就いたユーザーでもある。
同じ暗殺者系の職業であれば、自分が負けるはずがないと考えていた。
「……だがなあ、コープス?」
「は、はい?」
「俺様の伝承級武器を失ったのはてめぇの失態だ! あれを競売にかければ100ゴールド1万円は固い武器だったんだぞ? どうしてくれるんだ!」
「ほ、ほほほほ、本当に申し訳ございません!!」
謝ることしかできないコープスは、額を何度も床に擦り付けていく。
「……もしも俺様がレヴォを倒しても、黒閃刀を回収できなかったら……わかっているんだろうなぁ?」
「は、はい! 弁償させていただきます!」
「そういうことだ。俺たちボーンヘッドギルドをバカにしたことを絶対に後悔させてや――」
「ギ、ギルマス〜!」
ギルマスが下卑た笑みを深めた直後、今回も部屋の扉が勢いよく開かれる。
まさかという思いがギルマスとコープスの脳裏を掠めたが、そのまさかの事態がギルドメンバーから口にされた。
「ま、また動画がアップされています! PK集団返り討ち動画です!」
「…………な、なななな、なんだとおおおおぉぉっ!」
「み、見せてくれ!」
怒りの声をあげるギルマスと、焦りにも似た声を漏らすコープス。
動画を見た二人は、今回もバッチリと顔が晒されていることに気づいて愕然としてしまった。
「……おい、コープス?」
「……は、はい、ギルマス?」
「……てめぇはこれ以上、こいつに手を出すんじゃねぇ」
「そ、そんな! でも、それじゃあ俺はどうしたら!」
「てめぇの顔は二回も晒されてんだ! レヴォだけじゃなく、他のユーザーにも狙われるぞ!」
「うっ! ……は、はい」
従うしかないと思い、コープスは力なく返事をしながら項垂れる。
そしてギルマスはというと――体が震えるほどに激昂し、目を見開いて動画に映るレヴォを睨みつけていた。
「……やってやろうじゃねぇか、レヴォ! てめぇは絶対に、ボーンヘッドギルドのギルマスである俺様――デスハンド様がぶっ殺してやる!」
レヴォとデスハンドがぶつかるのは、もうすぐである。
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