17.二階層へ
一階層は入り口からの光が不思議と洞窟全体へ広がっていたので視界は確保されていた。
だが、洞窟型のダンジョンではよくある話だ。
そして、光の確保は二階層から大きく様変わりしてしまう。
「やっぱり、真っ暗だなぁ」
「僕は夜目が利くから問題ないのにゃ」
でしょうね、猫だもの。
まあ、この状況を予想していたからこそ、最後の一つのスキルが役に立つんだけどな。
「スキル発動――暗視」
……おぉ、見えてきたな。
階段を下りてすぐにモンスターはいないみたいだけど、エコーを使うと曲がり角を二回曲がった先に反応がある。
サイズ的にウォーリアだろう。数も三匹と少ない。
うーん、なんというか、手ごたえがないなぁ。
まだ下りてきたばかりだしなんとも言えないが、ダンジョンに入って早々に群れで襲ってきた一階層の方が危険度でいえば高いんじゃないのか?
もしや真っ暗だから難易度が高くなっているといいたいのだろうか。
「暗視スキルを獲得すれば簡単に攻略できるんだがなぁ」
……まあ、考えていても仕方がないか。
というわけで、普通なら慎重な足取りになるだろう暗闇の中を駆け足で進み、二回曲がった先にいたウォーリア三匹をワンキルしていく。
隠し部屋も発見して宝箱を発見したが、今回はモンスターが姿を変えたミミックだったのでこいつもワンキルさせてもらう。
時間の無駄だったとため息をつきながら、俺は暗闇の中をさっさと進んでいき、階段前でたむろしていたモンスターたちもあっさりと片付けた。
「……ご主人様は、本当にすごいご主人様だにゃ~」
隣からはニャーチの呆れたような声が聞こえてくるが、見返せていると思い気にしないでおこう。
そのまま三階層へ下りてみると――階層の雰囲気が一気に張り詰めた。
肌がピリピリする感覚、近くにモンスターはいないはずなのに体が僅かに緊張している。
「……ここが、最下層だな」
ダンジョンボスが待つ階層か。意外と浅かったな。
まあ、始まりの森は新人が集まるフィールドだ。そこに深い階層のダンジョンがあったとしても人はなかなか集まらないだろう。
新人は攻略ができず、古参ユーザーはわざわざ始まりの森に戻ってきてまで攻略してみようとは思わないはず。
というか、古参はメインクエストの攻略に躍起になっているだろうし、自分で見つけた以外の新しいダンジョンとかあまり興味がなさそうだからな。
「そういう意味では、三階層ってのは新人が手を出すのもいい塩梅なのかもな」
そんな感想を抱きながら、俺は隼の短剣を手に足を進めていく。
モンスターはいない。どうやらダンジョンボスだけの階層のようだ。
この造りは正直、楽でありがたい。
無数のモンスターと戦ったあとにダンジョンボスと戦うなど、面倒この上ないのだ。
真っすぐ続く通路を進んで行くと、ダンジョンボスが待つボス部屋へ繋がる巨大な扉が見えてきた。
「うっし! それじゃあやるか!」
「が、頑張るのにゃ、ご主人様!」
やや緊張気味のニャーチに笑みを返し、俺は扉を押し開ける。
すると、真っ暗だった通路とは違い、左右の壁に等間隔で炎が灯りボス部屋を照らし出す。
100メートルはあるだろうボス部屋の一番奥には巨大で豪奢な椅子があり、そこで頬杖をつくダンジョンボスが待っていた。
「……ダ、ダンジョンボスだにゃ! 気をつけるのにゃ、ご主人様! あいつは――」
「なんだ、ゴブリンパラディンかぁ」
「……にゃにゃ?」
おっと、どうやらここでも俺とニャーチで考え方の相違が起きたようだ。
まあ、ノービスの俺がゴブリンパラディンを相手に勝てるとは思えないだろう。
今までのモンスターは一般級だったからワンキル判定が通用したが、パラディンは希少級のモンスターであり、ワンキル判定がないモンスターなのだ。
とはいえ、ニャーチには思い出してほしいことがある。
「なあ、ニャーチ。チュートリアル塔での出来事を思い出してくれよ」
「チュートリアル塔かにゃ?」
「あぁ。俺はそこで何を倒したんだった?」
「何をって……にゃ! そうだったにゃ! ご主人様は――伝承級ドラゴンを倒しているのにゃ!」
そういうこと。
それに俺は伝承級のドラゴンをチュートリアル塔のナイフだけで倒している。それもノーダメージでだ。
まあ、戦った感じだと強さは若干調整されている感じもあったが、だとしても希少級のパラディンよりも弱いなんてことはないだろう。
――ガチャン。
そんなことを考えていると、どうやらあちらさんの準備は整っていたみたいだ。
『……グルギャギャギャアアアアァァッ!』
「いいぜ、やってやろうじゃないか!」
レヴォになって初めてのダンジョンボス戦! こいつは――いい動画のネタになるぜ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます