16.新しいスキル

 さて、俺が獲得したスキルだが、それはマッピング、エコー、暗視の三つだ。

 最初に使ってみたのはマッピングスキル。

 こいつは通ってきた道をそのままマップのように表示されることができる。

 それと組み合わせて使うのが、エコースキルだ。

 エコースキルを使うと反響を利用した周囲の状況をある程度把握することが可能となる。

 今回の場合でいうとダンジョンの構造が主になるが、それ以上に役立つことといえば――


「おっと、あったな」

「何があったのかにゃ?」

「ダンジョンにはお決まりの――隠し部屋だ」


 多くのダンジョンに存在している隠し部屋だが、これは結構有名な話である。

 特にエコースキルが有効とわかった途端に隠し部屋はもう隠し部屋とは言えなくなってしまった。

 とはいえ、設計上はちゃんと存在しているので、そこで手に入るアイテムはレアなものが多い。

 ゴブリンの巣ダンジョンで見つけた隠し部屋にもレアアイテムがあることを願いながら、俺はそこへ続く壁に攻撃を加えた。


 ――ドドンッ! ガラガラ。


 何度か攻撃を加えると、壁が音を立てて崩れていき、その先に空洞が現れる。

 たまにモンスターが隠れているなんてこともあるが、今回はそうではないようだ。


「あったぞ、宝箱だ」


 しかし、ここで喜ぶのはまだ早い。

 宝箱にトラップが仕掛けられてあったり、宝箱に扮したモンスターだったりもするからだ。

 ……うん。とりあえず、モンスターではないか。

 あとはトラップがあるかどうかなんだけど……仕方がない。もう一つだけスキルを獲得しておこう。


【スキルポイント25→22】


「……よし、発動――アナライズ」


 アナライズは対象物を解析する効果を持っている。

 今回でいえば宝箱を解析して、トラップがないかどうかを確認しているのだ。

 ……うん。トラップもないな。


「というわけで、開けてみるとしますか!」

「楽しみだにゃ!」


 俺もニャーチもワクワクしながら、隠し部屋の宝箱を開けた。すると――


【上級ポーション×5を手に入れました】


 …………なんだ。


「外れかぁ」

「すごいのにゃ!」

「……ん?」

「……にゃ?」


 上級ポーションの何がすごいんだ? ダメージを食らわなければいいだけの話だろうに。

 ……あぁ、競売にかければいいって話か。


「確かに、競売にかければ一つ50ゴールドくらいにはなるか?」

「違うのにゃ! 上級ポーションだにゃ! ご主人様にとってはものすごく貴重なアイテムなのにゃ?」


 うーん、どうしてここまで話がズレているんだろうか。

 ……もしかして、俺がノービスでレベル10と弱いから、そういうユーザーとしてニャーチは会話しているってことなのかも。


「……いいだろう、ニャーチ」

「どうしたのにゃ?」

「お前にこの上級ポーションが外れアイテムだったってことを教えてやろう!」

「教えるって、どうするのにゃ?」

「いいから来い! これから一気に――最下層まで軽い散歩に行くぞ!」

「そ、それは散歩でもなんでもないのにゃ!」


 ここで一発かまして、俺へのニャーチの評価を覆してやらないとな。

 何度かエコーを使ってみたが、一階層にはここ以外の隠し部屋もなさそうだし、さっさと二階層へ進んでしまおう。

 階段の位置もエコーでわかっているし、マッピングもすでに完了しているしな。


「あった、あった。だがまあ、お約束というかなんというか、階段の前にはモンスターがうじゃうじゃいやがるな」


 それも、最初の群れとは違ってゴブリンウォーリアとゴブリンライダーまでいる。

 だが、こいつらは集落で倒している相手だ。この中で一番厄介なのは――一番奥にいるゴブリンナイトだな。


「ど、どうするのにゃ? いくのかにゃ?」

「当然だろう。さーて、一気に片付けてやるとするかな!」


 曲がり角を飛び出して突っ込んでいくと、手前に陣取っていたゴブリンとライダー二匹を仕留める。

 すぐに他のゴブリンたちが気づいたが、その時にはさらに五匹と三匹のゴブリンとライダーを仕留め、ウォーリアも二匹片付けてしまう。

 ここでようやく一斉に襲い掛かってきたのだが、敏捷に全振りしている俺からすると全く問題にはならなかった。


「遅い、遅いぜ!」


 ゴブリンたちの間をすり抜けながらワンキル判定を狙い撃ち、俺が通った場所には大量の死亡エフェクトが展開されては消えていく。

 残されるのはドロップアイテムだけで、生き残っているゴブリンは一匹も存在していない。

 そして、俺が向かう先にいたのはもちろん――


「ほいっと!」

「……にゃ?」


 ゴブリンナイトだが、結局のところこいつも一般級なんだよねー。

 身に付けている甲冑の関節に存在している唯一のワンキル判定を狙うのはなかなか難しいものの、俺に掛かれば造作もないことなわけで。

 敏捷に任せて突進からの一振りであっという間に討伐完了だ。


「どうだ、ニャーチ? 上級ポーション、すごくもなんともないだろう?」

「……ご、ご主人様がすご過ぎるのにゃ~!」


 どちらにしても、これで二階層へ進む道は開けた。

 俺は少しの休憩を挟み、そのまま階段を下りていった。

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