いぬ増殖

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 おかしいうちの犬が増えている。


 見間違いじゃない。


 どう見ても増えている。


 一匹が二匹になっている。


 うちの黒柴のこたろーが、現実をバグらせて増殖してる。


 ものがぶれて見えるとかそういう次元じゃない。


 だって、いびき声が二匹分あるし。


 どうして?


 うちの犬になにがあったというの?


 このあいだ、一匹じゃさびしかろうと思って「ゆくゆくはもう一匹飼えたらいいよね」なんて話しかけたから分裂してしまったとでもいうの?


 犬は、異常事態なんて起こっていないみたいな顔で、のんびりお昼寝している。


 二匹ともまったく同じ寝息のリズムを立てている。


 怖い。


 見た目的には、ほのぼのしたこの光景が怖い。


 うろたえていると、迷い犬を探しているらしき飼い犬の声が聞こえてきた。


 その男性らしき人は、通行人らしき誰かと話をしていた。


 犬が逃げ出して困っている。


 その犬の特徴は、黒の柴犬。


 お昼寝をするのが好き。


 混乱しているのか、この辺りに同じブリーダーからひきとられた兄弟がいるらしい事も喋っていた。


 私は二匹の犬を見た。


 当てはまってた。


 心なしか、一匹の犬の体格が小さく見えた。


 私は「そういう事か」と安堵して、その迷い犬探し中の男性へ話しかけにいった。


 そうだよね。


 まったく何もないところから突然生物が増えるわけがない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いぬ増殖 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ